娘に「整形したい」と言われたら親はどう答えるべき?900万円を整形に投じた漫画家の答え
SNSの普及によって加速する現代のルッキズム。そんな社会で「整形したい」と娘に打ち明けられたら、親はどう向き合えばいいのでしょうか。セミフィクション作品『娘に整形したいと言われたら』(KADOKAWA)作者のうみの韻花さんは、これまで約900万円を整形に投じてきた当事者でもあります。作中で描かれる「娘の整形にのめり込む母親」に込めた思い、そして自身の経験から見えてきた美容整形との向き合い方について、うみのさんに伺いました。
整形を始めると別のパーツも気になり始める
——本作の主人公・ひかりのコンプレックスは、うみのさんご自身の経験とどのような点が重なっているのでしょうか。
「自分の顔が人生の障壁になっている」という切迫感は、過去の自分と一致しています。そこから整形にハマって止まらなくなっていく展開も、私自身が通ってきた感覚をなぞっている部分が大きいです。
一つのパーツが完璧になると、隣のパーツの粗が目立ってきてしまうんです。たとえば最初に二重整形をすると、目だけ綺麗になっていて、鼻も口も輪郭も、二重のレベルに合っていないと感じるようになる。それで「他のパーツも二重のレベルに合わせなければ」と、どんどんのめり込んでいってしまうんです。
根本的に自信がなくて、自己肯定感が低いままなので、その状態で整形に踏み込んでしまうと、顔にどんどん「エラー」が起きているような感覚になる。明確な答えがないゴールを、手探りでずっと求め続けていくような状態だと思います。
——うみのさんは二重整形から始めていますが、ある程度自分に自信がある状態で「ダメな自分を変える」ではなく「もっとかわいくなりたい」という気持ちで二重整形をしていたら、他のパーツが気になる度合いも変わっていたと思いますか。
変わっていたかもしれません。もちろん、Eライン(横顔の口元のライン)や人中(鼻の中央から上唇にある縦の溝)の長さといったSNSで広がった概念もあるので、SNSを見続けている限り「流行の顔に近づけたい」という気持ちにはなりがちだと思います。ただ、自分の今の顔を好きだと思える人は、SNSを見てもそこまで影響を受けないんじゃないかとも感じるんです。自分に自信がなかったり、何か気にしている部位があったりする人が、「こういう顔が美しい」という情報に触れると、ハマりやすくなるんじゃないかと思います。
娘の整形にのめり込んでいく母親
——本作では、娘の整形にのめり込んでいく母親が描かれています。この描写はどのように生まれたのですか。
体験談としてこのケースが寄せられたわけではないのですが、本作を作るにあたって、整形に関するSNS上の発信をたくさん見ていました。その中で印象的だったのが、小学校高学年の女の子の動画です。もともと一重の子で、お母さんが「二重になったら可愛くなるよ」と言って、美容クリニックの先生に「二重にしてください」と依頼している。処置後には「二重になって可愛くなったね」と子どもに声をかけているという動画でした。見ていると、子どもの意思というよりは、親の希望で二重にさせられている印象を受けたんです。本作では整形は娘の希望により始まりましたが、始まり方にかかわらず親の方が熱量が高いケースも一定数あるのだろうと感じました。
——母親の描写で特に大切にした点を教えていただけますか。
母親がだんだん「整形させなければ」という強迫観念のようなものにとらわれて、モンスター化していく描き方をしています。ただ、あくまで「娘を幸せにしたい」という思いから始まっていて、いきすぎてしまった親の愛情の末路として描きたかったんです。娘への愛情はあるけれども、度を越してしまうと、子どもにとってはただの恐怖でしかないという点が伝わるような描写を大事にしました。
——ご自身の学生時代と、現代のルッキズムの空気には違いを感じますか。
現代のルッキズムは、SNSの普及によって年々加速している印象があります。私が中高生だった頃は、SNSはまだそこまで普及していませんでした。もしSNSをみんなが日常的に使っている中で私が学生時代を送っていたとしたら、どうなっていたんだろう……と不安に思います。
多様性を尊重するような風潮も見られるようにはなってきましたが、SNSの影響を差し引くのは難しい。今の10代は日々ルッキズムにさらされている状況で、生きづらいだろうなと感じます。
——現在、ご自身はSNSとどう付き合っていますか。
意識しているのは、なるべく感情を動かさないことです。美容系の情報にしても、あくまで一人の意見であって、鵜呑みにする必要はない。SNSで美に関する議論が行われていても、これだけの人数がSNSをしていれば意見が合わないこともあるはずなので、流し見でいいという距離感でいます。付き合い方を決めておかないと、SNSは毒にもなると思っています。
娘に「整形したい」と言われたら
——もし娘さんに「整形したい」と相談されたら、どう答えますか。
私に娘はいないのですが、もしいたとしたら、頭ごなしに否定はしないと思います。そこまで思い詰めているという事実を、まずは受け止めることが大事だと思うからです。ただ、整形したい動機が「誰かに好かれたい」「SNSで評価されたい」といった他者の基準にあるなら、「もう少し大きくなってからでもいいんじゃない」と伝えると思います。話を聞いたうえで、本当に自分軸で整形したいということなら、そのときの子どもの年齢にもよりますが、リスクをきちんと伝えたうえで、一緒に美容クリニックを探すなどサポートする選択肢もあると思っています。
——「可愛くなりたい」という気持ちと、「こんな自分じゃダメだ」という感情は、どこに境界線があると思いますか。
「可愛くなりたい」というのは、今の自分にプラスアルファして楽しむようなポジティブな動機だと思います。それに対して「こんな自分じゃダメだ」というのは、マイナスの状態から標準に戻さなければといった、強迫観念によるものではないかと。自分のために鏡を見るのか、他人の評価を恐れて鏡を見るのかが、私にとっての境界線ですね。
他人の評価を恐れないことも難しいとは思うのですが、もし失礼なことを言ってくる人がいたら、その言葉には価値がないと思うようにしています。人が傷つくような言葉を投げてくる人の言葉には、そもそも意味がないから聞く価値もないという強気の姿勢でいます。
——うみのさんはご自身の整形の経験をどう振り返っていますか。
これまでおよそ900万円を整形に使ってきました。もちろん失敗した部分もあれば、痛い思いをしたこともあります。ただ、私にとっては、自分が自分として生きていくために必要な投資だったと思っているんです。
整形が魔法のようにすべてを解決してくれたわけではないですし、今でも鏡を見て落ち込む日はあります。それでも一連の経験を通じて「完璧な外見」を目指さなくてもいいのだと思えるようになったんです。今の自分の顔が100点だとは思っていませんが、昔よりも今の方が充実していますし幸せです。生きづらさを抱えていた過去に比べれば、今は自分のことを好きだと言えます。整形したことも、失敗した経験があることも、後悔していなくて、意味のある経験だったと思っています。
【プロフィール】
うみの韻花(うみの・おとか)
漫画家。SNSやブログで著者自身の整形した体験やフォロワーから募集した整形・ルッキズムに関する話などを公開している。著作に『14歳で整形した私 「ブス」の呪いから解けて自分を好きになる日まで』、『人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ』(ともにKADOKAWA)がある。
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