血圧の「上と下の差」が大きい人は要注意?血管の状態を知る手がかり〈脈圧〉とは|医師が解説
血圧は高い状態だけでなく、その上下差がどのように変化しているかも重要です。血管の状態を知る手がかりとされる脈圧について、医師が解説します。
「上の血圧」だけでなく「上と下の差」にも注目
健康診断や家庭血圧を測るとき、多くの人が気にするのは「上の血圧が何mmHgだったか」ではないでしょうか。
例えば「上が150だから高い」「今日は130だったから大丈夫」というように、上の数字だけを見てしまいがちです。
しかし、血圧にはもう一つ、知っておいてほしい数字があります。
それが「上の血圧と下の血圧の差」です。
例えば血圧が150/70mmHgなら、その差は80mmHgになります。
この「上と下の差」を「脈圧」と呼びます。
脈圧は、それだけで病気を診断できる数字ではありませんが、特に年齢とともに大きくなってきた場合には、血管の状態を考える一つの手がかりになります。
そもそも「脈圧」とは何でしょうか
血圧の「上」は収縮期血圧、「下」は拡張期血圧です。
心臓が収縮して血液を送り出すときに高くなるのが収縮期血圧で、心臓が拡張しているときの血圧が拡張期血圧です。
そして、「脈圧=収縮期血圧-拡張期血圧」で計算します。
例えば、
120/80mmHgなら脈圧は40mmHg。
140/80mmHgなら60mmHg。
160/70mmHgなら90mmHgです。
同じ「上が140」という血圧でも、下の血圧によって脈圧は変わります。
だからこそ、血圧を見るときには「上はいくつだったか」だけでなく、「上と下の差はどのくらいか」という視点も持っておくとよいでしょう。
なぜ年齢とともに脈圧が大きくなりやすいのでしょうか
若い頃の血管は、ある程度しなやかです。
心臓から血液が勢いよく送り出されたときも、血管が適度に広がることで、その衝撃を受け止めることができます。
ところが、加齢や動脈硬化などによって血管の弾力性が低下すると、血液が送り出されたときの圧力が収縮期血圧に反映されやすくなります。
その結果、「上の血圧が高くなる一方で、下の血圧はそれほど高くない」という状態が起こり、脈圧が大きくなることがあります。
特に高齢者に多い「上は高いけれど、下はそれほど高くない」という血圧には、こうした血管の変化が関係している場合があります。
「脈圧が大きい=動脈硬化」と決めつけてはいけません
ここは非常に重要です。
脈圧が大きかったからといって、それだけで「動脈硬化がある」と診断できるわけではありません。
血圧は、測定する時間、姿勢、運動、緊張、睡眠、気温などによって変動します。
また、一度だけ測った血圧から血管の状態を正確に判断することもできません。
例えば、160/70mmHgだったからといって、すぐに「血管がかなり悪くなっている」と考える必要はありません。
一方で、家庭血圧を測っていて、普段から「上の血圧が高く、下との差も大きい」という状態が続いているのであれば、血圧そのものについて医師に相談する価値があります。
40代、50代からは「血圧の変化」を見ておく
40代、50代になると、以前は120mmHg前後だった上の血圧が、130、140、150mmHgと少しずつ上がってくる人がいます。
「年齢とともに血圧が上がるのは普通」と考えて、そのまま放置してしまうことがあります。
しかし、高血圧を長期間放置すると、心臓や脳、腎臓などの血管に負担がかかります。
そこで大切なのが、一回の数字だけで判断するのではなく、普段の血圧を継続的に確認することです。
例えば朝と夜に家庭血圧を測り、「上の血圧」「下の血圧」の両方を記録しておく。
すると、「最近、上の血圧が以前より高くなってきた」「上と下の差が以前より広がってきた」といった変化にも気づきやすくなります。
脈圧が大きいときに気をつけたいこと
脈圧が大きい状態が続いている場合には、まず血圧そのものが適切な範囲にあるかを確認することが重要です。
特に、
- 家庭血圧で上の血圧が高い状態が続く
- 以前より血圧が上がってきた
- 上と下の差がかなり大きい状態が続く
- 糖尿病や脂質異常症がある
- 喫煙習慣がある
- 腎臓の病気がある
- 家族に心筋梗塞や脳卒中の人がいる
といった場合には、一度医療機関で相談するとよいでしょう。
必要に応じて血液検査や心電図、心エコーなどを行い、血管や心臓の状態を総合的に評価します。
実は「差が小さければ安心」というわけでもありません
ここも誤解しやすいところです。
「脈圧が大きいのが問題なら、上と下の差が小さければ健康なのか」と思うかもしれません。
そう単純ではありません。
例えば血圧が90/70mmHgなら脈圧は20mmHgですが、血圧そのものが低く、立ちくらみやふらつきなどの症状がある場合には別の問題を考える必要があります。
つまり、脈圧はあくまで血圧を見るための一つの指標です。
「大きければ危険、小さければ安全」という単純な基準ではありません。
血圧は「数字の一部分」ではなく全体を見る
健康診断で血圧を指摘されると、「上が何mmHgだった」ということだけを気にしがちです。
しかし、血圧は上と下の両方を見ることが大切です。
さらに、脈圧を見ることで、「以前と比べて血圧のパターンがどう変化してきたか」という視点も持つことができます。
例えば、40代では120/75mmHgだった人が、50代になって145/70mmHgになってきた。
このような変化があれば、単純に「上が少し高くなった」だけでなく、「上と下の差が広がってきた」という点にも気づくことができます。
もちろん、それだけで血管の状態を判断することはできません。
それでも、自分の体の変化に気づくためのきっかけにはなります。
血圧は、一度の測定結果だけで一喜一憂する必要はありません。
朝晩の血圧を継続して測り、「上はいくつか」「下はいくつか」「その差はどう変化しているか」を見ていく。
そして、血圧が高い状態や大きな変化が続く場合には、医師に相談する。
こうした習慣が、将来の脳卒中や心臓病などを防ぐための第一歩になります。
「上の血圧」だけではなく、「上と下の差」にも少し目を向けてみてください。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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