階段で息切れ、胸が苦しい、ふらっとする…「年齢のせい」と見逃されやすい大動脈弁狭窄症とは|医師が解説

階段で息切れ、胸が苦しい、ふらっとする…「年齢のせい」と見逃されやすい大動脈弁狭窄症とは|医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2026-09-15

「最近、階段を上ると息が切れるようになった」「少し歩いただけで胸が苦しい」「立ち上がったときに、ふらっとする」――40代、50代を過ぎると、こうした症状を「体力が落ちたから」「年齢のせい」と考えてしまう人は少なくありません。もちろん、加齢や運動不足によって息切れが起こることはあります。しかし、特に高齢者で注意したい病気の一つが「大動脈弁狭窄症」です。医師が解説します。

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大動脈弁は「心臓の出口」にある扉

大動脈弁狭窄症とは、心臓から全身へ血液を送り出す出口にある「大動脈弁」が硬くなり、十分に開かなくなる病気です。
症状が進行すると、息切れ、胸痛、ふらつきや失神などが現れることがあります。

そして怖いのは、症状が出ていても「年齢のせい」と思って受診が遅れてしまうことです。

心臓は、全身に血液を送り出すポンプです。
左心室という部屋から血液を送り出すとき、その出口にあるのが大動脈弁です。

大動脈弁
イラスト/Adobe Stock

正常な大動脈弁は、血液が出ていくときに大きく開き、心臓から大動脈へ血液を流します。
ところが、加齢などによって弁が硬くなり、石灰化すると、弁が十分に開かなくなることがあります。

これが大動脈弁狭窄症です。

出口が狭くなると、心臓は狭い弁を通して血液を送り出すため、より強い力で働かなければなりません。

最初のうちは心臓が頑張って補います。そのため、本人はほとんど症状を感じないこともあります。

最初に気づきやすいのは「階段での息切れ」

大動脈弁狭窄症では、運動したときの息切れが代表的な症状の一つです。

例えば、これまで普通に上れた駅の階段で、最近は途中で立ち止まるようになった。
以前なら買い物に歩いて行けたのに、最近は途中で休みたくなる。

こうした変化が出てくることがあります。

本人は「もう60代だから仕方ない」と思っているかもしれません。

しかし、以前できていたことができなくなってきたという変化は、年齢だけで説明せず、一度原因を調べることが大切です。

「胸が苦しい」も重要なサイン

大動脈弁狭窄症では、運動時に胸の痛みや圧迫感が出ることがあります。

胸が苦しい
photo/Adobe Stock

「胸が締めつけられるような感じがする」
「階段を上ると胸が重くなる」
「少し休むと楽になる」

このような症状がある場合には、単純な運動不足と考えないほうがよいでしょう。

もちろん、胸の症状は狭心症や心筋梗塞など、ほかの心臓病でも起こります。
だからこそ、胸の苦しさを「年齢のせい」にせず、原因を確認することが重要なのです。

「ふらっとする」「失神する」は特に注意

大動脈弁狭窄症で特に注意したい症状の一つが、運動中のふらつきや失神です。

例えば、駅の階段を上っている途中で急に目の前が暗くなった。
少し走った後に、意識が遠のくような感じがした。
実際に倒れてしまった。

こうした場合には、心臓から十分な血液を送り出せなくなっている可能性があります。
「立ちくらみだろう」と自己判断せず、医療機関で調べてもらうことが大切です。

特に運動中に失神した場合は、心臓が原因となっている可能性も考える必要があります。

「動かなければ症状がない」から安心とは限らない

大動脈弁狭窄症の初期には、安静にしているとほとんど症状がないことがあります。

そのため、
「家では普通に生活できています」
「テレビを見ているときは何ともありません」
という人でも、階段や坂道を歩いたときだけ症状が出ることがあります。

ここが見逃されやすいポイントです。
心臓にかかる負担が大きくなったときに、初めて症状が表面化するからです。

「最近、歩くのが遅くなった」も見逃さない

高齢の家族の場合、本人が「息苦しい」と訴えないこともあります。

その代わりに、
「最近、外に出なくなった」
「買い物に行かなくなった」
「階段を使わなくなった」
「歩く速度が遅くなった」
といった変化として現れることがあります。

例えば、以前は家族と一緒に30分歩いていた人が、「今日は疲れたから」と途中で何度も休むようになった。
本人は年齢のせいだと思っていても、実は心臓に負担がかかっている可能性があります。

休憩
photo/Adobe Stock

家族が「以前と比べてどうか」を見ておくことは非常に重要です。

大動脈弁狭窄症は「聴診」で見つかることもある

大動脈弁狭窄症では、心臓の弁を血液が通過するときに特徴的な心雑音が聞こえることがあります。

健康診断や診察の際に医師から、
「心雑音がありますね」
「一度、心臓の超音波検査を受けてみましょう」
と言われることがあります。

本人には症状がなくても、こうした指摘をきっかけに大動脈弁狭窄症が見つかることがあります。

検査の中心になるのが心エコーです。

心エコー
photo/Adobe Stock

心エコーでは、弁がどの程度狭くなっているのか、心臓がどのように血液を送り出しているのかなどを確認できます。

高齢者では「年齢のせい」にされやすい

大動脈弁狭窄症は、特に高齢になるほど注意したい病気です。
ところが、高齢者の息切れや疲れやすさは、「年齢だから仕方がない」と受け止められやすい傾向があります。

例えば、
「最近、歩くのが遅くなった」
「階段を上れなくなった」
「外出しなくなった」
という変化を、単なる体力低下だと思ってしまう。

しかし、そこに心臓の病気が隠れていることがあります。

以前できていた運動が、明らかにできなくなった。これは年齢だけで片づけず、一度医師に相談してよい変化です。

症状が出てきたら「我慢して運動」はしない

健康のためにウォーキングをしている人も多いでしょう。

しかし、歩いていて胸が苦しくなる、息切れが強い、ふらつくといった症状がある場合には、「体力をつけなければ」と無理に運動を続けるのは避けてください。

まず原因を確認することが優先です。

特に胸痛、強い息苦しさ、失神などがある場合には、早めの医療機関への相談が必要です。

治療できる病気であることも知っておきたい

大動脈弁狭窄症と診断されても、すぐに手術になるとは限りません。

症状や狭窄の程度、心臓の状態、年齢、全身状態などを総合的に判断しながら、定期的に経過を見る場合もあります。

一方で、重症化して症状がある場合には、弁を治療することが重要になります。

外科的に人工弁へ置き換える方法のほか、カテーテルを使って人工弁を留置するTAVIという治療もあります。

治療方法は患者さんの状態によって異なるため、循環器専門医に相談することが大切です。

こんな症状があれば一度、心臓を調べてみる

特に次のような変化がある人は、一度医療機関に相談してみてください。

  • 以前より階段や坂道で息切れする
  • 歩くと胸が苦しくなる
  • 運動すると胸が痛む
  • 運動中にふらつく
  • 意識が遠のく、失神したことがある
  • 以前できていた運動ができなくなった
  • 家族から「最近、動きが悪くなった」と言われる
  • 健診や診察で心雑音を指摘された

もちろん、これらの症状があれば必ず大動脈弁狭窄症というわけではありません。
肺の病気や貧血、狭心症、不整脈など、ほかの原因も考えられます。

だからこそ、症状だけで判断せず、必要に応じて心電図や血液検査、心エコーなどで原因を調べることが重要です。

「年齢だから仕方ない」の前に、一度立ち止まる

年齢を重ねれば、若い頃と同じように動けなくなるのは自然なことです。
しかし、「年齢のせい」と思っていた息切れやふらつきの中に、治療できる病気が隠れていることがあります。

特に大動脈弁狭窄症では、息切れ、胸の苦しさ、ふらつき・失神が重要なサインになります。

「最近、階段がつらくなったけれど、年齢のせいかな」
そう思ったときこそ、一度自分の体を振り返ってみてください。

以前はできていたことができなくなった。
歩くと胸が苦しい。
運動するとふらつく。

そんな変化があるなら、「年だから」で終わらせず、医師に相談する。
それだけでも、心臓の病気を早く見つけるきっかけになるかもしれません。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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