階段をのぼるだけで息切れ…加齢じゃない意外な原因とは?医師が解説
「少し階段を上がっただけで息切れする」というと、年齢や運動不足が原因と思いがちですが、実は病気が隠れている可能性もあります。医師が解説します。
階段をのぼるだけで息切れ…加齢が原因じゃない?
特に、甲状腺機能異常(バセドウ病など)では、甲状腺ホルモンが過剰(バセドウ病)になって、心拍数が増え、少し動くだけで息切れがします。
息切れ以外にも、動悸・手の震え・体重減少・疲労感も伴う場合があります。
甲状腺疾患に対する対処法は、内分泌内科・甲状腺外来を受診して、血液検査(甲状腺ホルモン・TSH)や超音波検査などで判定します。
階段をのぼるだけで息切れするほかの原因疾患としては、更年期障害があります。
多くの女性は40代頃から更年期と呼ばれるフェーズに入り、この時期には体が火照って疲労を感じやすいなど辛い期間であると考えられていますが、実は更年期には動悸症状の発症とも関連があります。
更年期においては、周囲環境などで過剰なストレスを抱えているなど以外にも、女性特有の要因として更年期前後におけるエストロゲンの分泌量低下が挙げられます。
女性ホルモンのひとつであるエストロゲンには様々な健康リスクから女性の身体を守る働きがあることが知られていて、エストロゲンの分泌量は女性の場合にはおよそ40代頃から更年期の訪れとともに減少し始めて50代の閉経期になれば急激に落ち込みます。
特に更年期を過ぎるとエストロゲンの分泌量が低下して、動悸の症状が出現する危険性が増します。
また、自律神経は、心臓や胃腸の働きを含む体の多くの機能を自動的に制御しています。
不規則な生活習慣や運動不足は自律神経のバランスを乱して、動悸や息切れを引き起こす原因となります。
自律神経を整える為には、生活習慣の改善が重要であり、日常的に適度な運動を実施して健康的な生活習慣を維持することで、自律神経のバランスを保つことができます。
「脈が速い、脈が強い、脈が飛ぶ」をまとめて動悸と呼んでいて、過度の緊張やストレスで心臓の鼓動が速くなり、「ドキドキ」と動悸を感じた人も少なくないと思います。
緊張やストレスなど、外部から受けた刺激により交感神経が活発に働くことで、動悸や息切れの症状が出ることがあります。
これには自律神経が関わっていて、自律神経は、興奮した状態のときに働く交感神経と、リラックスしているときに働く副交感神経の2種類があります。
ストレスに伴って強い刺激を感じると、防御反応として交感神経が優位になり動悸が一時的に起こることがあります。
ストレスは、自律神経のバランスを乱す大きな要因ですので、過大なストレスを感じている場合は、心拍数を高める交感神経の働きが強い状態になり易いので、常日頃からストレス管理はとても重要になります。
不安を伴うストレスが原因の動悸や息切れは、症状のコントロールが難しい場合がありますし、不安が動悸の原因となり、動悸がさらに不安を生むという悪循環に陥ることもありますので、場合によっては不安や動悸症状を緩和するための薬を処方することがあります。
甲状腺疾患とは何か
甲状腺疾患とは、首の付け根(のどぼとけの下あたり)にある甲状腺という臓器に異常が起こる病気の総称です。
甲状腺は体の代謝やエネルギー消費をコントロールする甲状腺ホルモンを分泌しており、このホルモンが多すぎても少なすぎても全身に影響を及ぼします。
甲状腺の働きは、代謝の調整であり、主に体温・脈拍・エネルギー消費をコントロールしています。
また、甲状腺の役割は、成長・発達の促進に関与して、子どもの成長や発達に必要であり、精神機能の安定、気分・集中力などにも影響します。
主な甲状腺疾患として、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)があります。
典型的な症状は、動悸・息切れ・手の震え・体重減少・暑がり・イライラなどが挙げられます。
代謝が活発になりすぎる状態であり、目が飛び出す(眼球突出)こともあります。
発症原因は、自己免疫異常(抗体が甲状腺を過剰に刺激)であり、治療方法は、薬物療法(抗甲状腺薬)、放射線治療(アイソトープ)、手術療法などが考えられます。
一方で、甲状腺機能低下症(橋本病など)の症状は、疲れやすい・体重増加・寒がり・むくみ・便秘・抑うつなどがあり、全般的に代謝が落ちて、体全体がスローになります。
発症原因は、自己免疫異常(甲状腺が攻撃され機能低下)であり、治療策は、甲状腺ホルモン補充薬(チラーヂン)になります。
まとめ
甲状腺疾患は、体全体の代謝や心臓・呼吸に大きく影響を与えるため、「息切れ」が症状として現れることがあります。
特に、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)の場合、甲状腺ホルモンが過剰になり、代謝が過剰に活発化して、心拍数・呼吸数が上昇して、少しの運動でも息が切れるようになります。
また、甲状腺機能低下症(橋本病など)の場合には、甲状腺ホルモン不足から代謝低下に陥り、筋力・心肺機能低下に伴って、心臓のポンプ力が弱まり、少しの動作で疲れ・息切れを感じやすくなります。
さらに、むくみや貧血も起こりやすく、息苦しさを助長することになります。
心配であれば、甲状腺専門外来や代謝内分泌内科など、専門医療機関を受診しましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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