「なんとなく疲れが抜けない」が続いたら…橋本病(甲状腺機能低下症)の可能性も?医師が解説


「なんとなく疲れが抜けない」という症状が続いている場合には、橋本病かもしれません。医師が解説します。
「なんとなく疲れが抜けない」が続いたら…橋本病(甲状腺機能低下症)の可能性も
最近、朝起きても疲れがとれない、眠気が強くてやる気が出ない、髪の毛が抜けやすくなった、肌が乾燥しがち、体重が増えたのに食べる量は変わらない、寒がりになった、月経が不順になったなどのサインはありませんか?
これらの症状は、「加齢」、「更年期」、「多忙」が原因と思われがちですが、実際には、橋本病(慢性甲状腺炎)による甲状腺ホルモンの不足が原因のこともあります。
甲状腺は首にある臓器で、蝶が羽を広げたような形をしている臓器です。

甲状腺の働きは甲状腺ホルモンを分泌し、身体の新陳代謝を調節することであり、体温や心拍数の調節、精神や自律神経の働き、骨の代謝など多くの臓器の働きに関与しています。
脳の直下にある下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌され、甲状腺を刺激することにより甲状腺ホルモンは分泌されています。
甲状腺機能低下症は、のど付近にある甲状腺のはたらきが低下して、甲状腺で生成・分泌される甲状腺ホルモンの分泌量が通常よりも少なくなる病気のことです。
甲状腺ホルモンは、全身の新陳代謝を活発にする作用があるため、甲状腺機能低下症では、疲労感、身体のむくみ、眠気、寒がり、便秘、脱毛などの症状が引き起こされる場合があります。
この病気を、治療せずに、放置すると、心不全や意識障害を引き起こす可能性も懸念されます。
甲状腺機能が低下する原因のひとつとして、慢性的な炎症が生じることで徐々に甲状腺が破壊されていく慢性甲状腺炎(橋本病)が挙げられます。
甲状腺機能低下症の原因の多くは、自己抗体(例えば、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体、抗サイログロブリン抗体)が出現する慢性甲状腺炎(橋本病)です。
橋本病は、免疫の異常によって自分の甲状腺を攻撃してしまう自己免疫疾患であり、進行すると甲状腺ホルモンが足りなくなる(=甲状腺機能低下症)状態になります。
甲状腺ホルモンは体の代謝をコントロールしているため、不足するとさまざまな機能が低下し、その結果として、全身の「なんとなく調子が悪い」状態が続きます。
橋本病は、血液検査(甲状腺ホルモンと自己抗体)で診断できます。
症状があっても見逃されやすいので、気になる場合は早めの受診をおすすめします
甲状腺ホルモンが低下していれば、ホルモンを補う薬(チラージンなど)でコントロール可能であり、多くの人が、適切な治療によって以前の元気を取り戻しています。
冷え・疲労・むくみの陰に潜むホルモン異常
以下の症状はありませんか?
- 手足が冷えてつらい
- 朝からだるくて元気が出ない
- 夕方になると足がパンパンにむくむ
- 髪の毛がパサついてすぐ抜ける
- 肌がカサカサして乾燥気味
- 便秘が続いている
- 気分が落ち込みやすくなった など
実は、これらの症状は、単なる「疲れ」や「加齢」ではなく、ホルモンバランスの乱れが関係している可能性があります。
キーワードは、「甲状腺ホルモン」になります。
甲状腺ホルモンが低下する一つの病気として、橋本病があります。
甲状腺ホルモンは、体の代謝をコントロールする大切なホルモンであり、その分泌量が不足すると代謝が落ちて、冷え・むくみ・疲れやすさが目立つようになります。
「橋本病」という自己免疫疾患は、血液検査で発見でき、適切な治療で状態が改善します。
ホルモン異常の症状は「なんとなく不調」と感じるものが多く、長く放置されやすいのが特徴ですが、明確な原因が分かれば治療法があります。
ホルモンバランスを整える生活習慣や医療的サポートが有効であり、自覚しづらいホルモン異常のサインを見逃さないためにも、心配であれば、内分泌科など専門医療機関で相談してみましょう。
まとめ
なんとなく疲れが抜けない状態のときには、「年のせいかな」、「仕事が忙しいだけ」と放置してはいけません。
その疲れの症状は、もしかするとホルモン異常のせいかもしれません。
「冷え・疲れ・むくみ」など、体が出す小さなSOSを見逃さずに、甲状腺機能低下症(橋本病)などが隠れている可能性があるので、適切に内分泌内科や甲状腺専門外来など専門医療機関を受診しましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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