甲状腺内に炎症がおき、甲状腺組織が壊れる「亜急性甲状腺炎」なりやすい人の特徴は?医師が解説

 甲状腺内に炎症がおき、甲状腺組織が壊れる「亜急性甲状腺炎」なりやすい人の特徴は?医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2024-09-24

風邪を引いたら要注意?甲状腺に強い炎症を引き起こす亜急性甲状腺炎について、医師が解説します。

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亜急性甲状腺炎とはどのような病気か

亜急性甲状腺炎は、甲状腺に炎症が生じる病気であり、ウイルスの感染が原因と考えられていますが、明らかにはなっていません。

典型的な症状としては、甲状腺の痛み・発熱・血液中の甲状腺ホルモンの上昇があり、男性に比べて女性の発症率が高く、特に30〜40代の女性に発症しやすいといわれています。

亜急性甲状腺炎は、上気道感染症に引き続き発症することがあり、その初発症状は甲状腺周辺の首の痛みで、徐々に増強することもあれば急激な痛みとして発症することもあります。

亜急性甲状腺炎に関連した痛みは激烈なことが多く、例えば首をのけぞる、咳をするなどの動作がきっかけとなって症状が増悪することもありますし、発熱や食欲不振、筋肉痛もよく認められる症状です。

亜急性甲状腺炎のおよそ半数の患者さんに、甲状腺機能亢進に関連した症状が出現します。

亜急性甲状腺炎
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亜急性甲状腺炎になりやすい人とは

甲状腺は首の前方に位置する小さな臓器で、甲状腺ホルモンと呼ばれるホルモンを分泌し、甲状腺ホルモンは代謝を促進させることで、体を活発にする働きがあります。

正常の場合であれば、甲状腺ホルモンの分泌量は厳密に調整されますが、亜急性甲状腺炎では、炎症により調節機能とは無関係に、大量の甲状腺ホルモンが血液中に放出される結果、甲状腺ホルモンに関連した症状が過剰に現れてしまいます。

風邪の後、ウイルスが甲状腺に入ることで炎症を起こすのではないかと考えられています。

また、甲状腺ホルモンは脈を速めるなど交感神経を刺激し、体の活動状態を調整しますが、甲状腺ホルモンが出すぎている状態であれば(バセドウ病)、自然と代謝が高まるため体温が上昇し、多くの汗をかきます。

特に、バセドウ病は甲状腺機能亢進症の代表的な病気であり、特徴的な症状は甲状腺の腫大、眼球突出、頻脈、喉が詰まる感じ、息苦しさなどがあります。

バセドウ病は、女性に多くみられる病気であり、亜急性甲状腺炎になりやすい傾向があり、遺伝性があるために、家族や親せきにバセドウ病を罹患されている方がいる場合は注意が必要です。

 亜急性甲状腺炎の治療予防策は?

亜急性甲状腺炎に対する治療の基本は、痛みに対する疼痛管理と甲状腺機能亢進に関連した症状に対する対症療法が中心となります。

亜急性甲状腺炎の痛みは激烈であることが多く、その場合は解熱鎮痛薬が適宜使用されますし、痛みの症状が強い場合には、炎症の沈静化を期待してステロイドが処方されることもあります。

甲状腺機能亢進症状は、基本的には一過性であり、また許容できる範疇であることも多いため、無治療で経過をみることもありますが、動悸や手足の震えなどが強い場合は、β遮断薬と呼ばれる薬剤を使用することがあります。

 まとめ

これまで、亜急性甲状腺炎とはどのような病気か、亜急性甲状腺炎になりやすい人の特徴や治療予防策などを中心に解説してきました。

亜急性甲状腺炎は甲状腺の痛みや発熱を伴い、甲状腺に炎症が起こる病気であり、主に男性より女性に多く、30~40歳代の女性に多く発症します。

亜急性甲状腺炎の原因はまだ明らかになっていませんが、風邪のような症状に続いて起こることが多く、発症にウイルスが関与しているのではないかと考えられています。

特に、バセドウ病の人が亜急性甲状腺炎を発症しやすい傾向があると考えられていますが、明確な結論はでていません。

亜急性甲状腺炎の代表的な症状は、炎症が強いときに一時的に現れますが、基本的には自然に改善します。

心配であれば、甲状腺専門の医療機関を受診しましょう。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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