「今はブスだけど将来は絶対美人になる」美容外科医の父を信じ14歳で二重整形した私のその後|体験談
ルッキズムの呪いに囚われた親子を描くセミフィクション作品『娘に整形したいと言われたら』(KADOKAWA)。作者のうみの韻花さん自身も、美容外科医の父の言葉を信じて14歳で二重整形を経験しています。幼少期から浴びせられた外見批判、モラハラ彼氏からの否定。長年ルッキズムに苦しみながらも、やがて自分自身を受け入れられるようになった歩みについて、うみのさんにお話を伺いました。
14歳で二重整形をした背景
——今回はルッキズムの呪いに囚われる親子のセミフィクション作品を描いていますが、うみのさん自身もルッキズムに苦しめられ整形したご経験があるのですよね。幼い頃から父親に「今はブスだが将来はもの凄く美人になる」と言われて育ったそうですが、どのように受け止めていましたか。
父が美容外科医であって、芸能人など有名な方の整形を担当していることを知っていたので、父が言うなら間違いないと思っていました。ただ、この言葉は途中から「二重になったら美人になる」という言い方に変わっていきました。当時の私は奥二重だったのですが、父に二重にしてもらえば私は美人になれるのだと、当時は完全に信じきっていたと思います。それで14歳の春、二重の整形をしました。ダウンタイム(術後の回復期間)のこともわかっていないくらい、何も知らなくて父に言われるがままでした。
——ご家族に反対する方はいなかったのでしょうか。
母も父に整形してもらっていたので、父が私のことを二重にすると言ったときも、そこまで反対はしませんでした。容姿を変えることが割と当たり前の環境で育ったので、そこに疑いを持たなかった、というのが正直なところです。
——二重にした後、ご自身の気持ちに変化はありましたか?
小学6年生のときに転校して受験にも失敗してしまって、元は明るかった性格が沈んで、かなり暗い性格になっていたんです。それで可愛くなれば少しは人生が楽しくなるんじゃないかという期待はありました。父の手にかかれば綺麗になれると思っていたのですが、実際に二重になってから人生が好転したかというと、そうでもありませんでした。
多少可愛くはなったものの、二重になっただけでは自分に価値があるとは思えず、周りからも相変わらず「ブス」など外見を貶めるような言葉を言われ続けていて、根本的な改善にはなりませんでした。痛い思いをして二重にしたのに、あまりうまくいかなくて、もどかしさが残りましたね。
綺麗でいなければ扱いが変わるという恐怖心
——外見批判を受けてきたのですか。
小さい頃はボーイッシュな外見で、髪も短くて、スカートを履くのが嫌いで、男の子みたいな見た目で「おとこおんな」と言われることもありました。学校では日常的に「ブス」といった言葉をぶつけられていましたが、まだ小さかったこともあってふざけ半分のように受け止めていました。ただ、毎日のように積み重なっていくと、大人になったときにコンプレックスとして残っていくんですよね。
——大人になってから言われる言葉と、子ども時代の悪口とでは、受け止め方は違いましたか。
子どもの頃の悪口は、からかいや語彙力不足によるものなので、まだ許せる内容だと思います。ただ、大人になってからの外見に対する言葉は、社会における女性としての価値に直結していく感じがあって。綺麗じゃないと社会から居場所がなくなってしまうのではないか、孤立するんじゃないかという恐怖感がつきまとっていました。
見知らぬ人からすれ違いざまに「ブス」と言われたり、バイトの飲み会で他の女の子だけが褒められている場面に居合わせたり。そういう積み重ねの中で、綺麗にならなければ扱いが変わってしまうのだと痛感するようになりました。
元々自己肯定感が低かった中、容姿を批判してくる彼氏と付き合っていた
——モラハラ彼氏と付き合っていた時期もあったそうですね。当時、離れるまでに時間がかかった理由はどんなことだったと思いますか。
根本にあったのは、自己肯定感の低さだったと思います。当時の彼は会社では顔も広く、社交性も高くて、いわゆる人気者みたいな存在でした。「そんな彼に付き合ってもらえるだけありがたい」「人気者なのに私を選んでくれているんだ」と感じていたんです。
でも毎日のように自分を否定される中で、低かった自己肯定感がさらに削られていって。「この人から離れたら、私なんかを選んでくれる人は誰もいない」というところまで考えが追い詰められていました。それで、なかなか離れられなかったんです。
——どんなことがきっかけで離れられたのでしょうか。
彼は私の外見をバカにするのですが、整形には反対する人でした。でも日常的に彼が見下してくるので見返したくて、こっそり整形をしていたのですが、あるとき気づかれてしまって。ものすごく否定されたのですが、そもそも彼が私の容姿をバカにしてきたことを彼は覚えていなかった。私がダメなんじゃなくて、何をしても否定してくる彼と付き合ってるから、私は自分をダメだと思ってしまうんだと気づいて、別れを決意しました。
——その後、どうやって自己肯定感を回復していったのでしょうか。
オンラインゲームを通じて仲良くなった男性の存在は大きかったです。顔を知らないまま好きになって、その後直接会って付き合うことになったのですが、整形を打ち明けても「好きな気持ちは変わらないよ」と言ってくれて。それまではひたすら完璧な美しさを求めていました。でも、別に完璧じゃなくても今のままでいいじゃない、と自分を許せるようになったんです。
ただ、他者の言葉が傷の回復に不可欠かというと、私はそうは思っていません。きっかけとしては大事だと思います。でも、他者の評価に依存してしまうと、その人がいなくなったときに、また自分がなくなってしまう可能性が出てくる。だから、最終的には自分で自分を受け入れられることが大事で、立ち直るために一番必要なのは自分自身の力なのだと思っています。
——今振り返って、モラハラ彼氏に言われ続けていた言葉については、どう感じますか。
全部聞く必要がなかった言葉だと思います。当時は好きという気持ちもありましたし、「私よりも仕事ができて友達も多い彼の言うことは正しい」という感覚になっていたんです。一種のマインドコントロールのようなものがあったから抜け出せなかったのだと思います。
※後編に続きます
【プロフィール】
うみの韻花(うみの・おとか)
漫画家。SNSやブログで著者自身の整形した体験やフォロワーから募集した整形・ルッキズムに関する話などを公開している。著作に『14歳で整形した私 「ブス」の呪いから解けて自分を好きになる日まで』、『人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ』(ともにKADOKAWA)がある。
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