【東京⇄千葉】「せっかく二拠点生活をするなら早い方がいい」40代デザイナーが、計画を早めた理由とは #暮らしの選択肢
近年、テレワークの普及やライフスタイルの多様化により、都市と地方の二拠点で生活する人々が増加傾向にあるということをご存知でしょうか。国土交通省の調査によれば、二地域居住等を実践する人は約6.7%に達し、約701万人と推計されているんだとか。また、複数拠点生活を行っている人は全体の5.1%に上るとの報告も。自らの価値観に基づき「暮らしを選ぶ」二拠点生活者たちから、その魅力や課題、リアルな日常を深掘り。理想と現実の狭間で見えてくる「暮らしの選択肢」の今を伝えます。
今回お話を伺ったのは、東京と千葉県・外房で二拠点生活を送っているmioさん。20代からデザイナーとしてのキャリアを築くために東京で暮らしていたmioさんですが、心の片隅では常に自然を求めていたと言います。そんな中で、震災が発生し、後にmioさんの病気が発覚します。体調のことを考慮し、二拠点生活を視野に入れるようになりますが、実は当初の計画では、40代後半に別荘を持つことでした。しかし、実現したのは40代前半。計画が早まったのはなぜでしょうか。mioさんの #暮らしの選択肢に迫ります。
〈二拠点生活者 プロフィール〉mio
Sapo+c. / Creative Director デザイン歴22年。2026年1月より東京と千葉県で二拠点生活
Instagram: @codvoid
当初の人生設計は40代後半で別荘を持つこと。計画が早まったのは、なぜ?
房総半島の東側、太平洋に面した沿岸地域、千葉県の外房。荒々しくも美しい黒潮の海と、白い砂浜が広がり、 勝浦や大原の伊勢海老・魚介類など、海の幸が有名。また、山間にはリゾートエリアが広がり、別荘地も多くある。そんな外房と東京を行き来しているのが、デザイナーのmioさんだ。
mioさんは、石川県出身。20代のころに仕事のために上京した。デザイナーという職業柄、クリエイティブの最先端が集まる東京は、mioさんにとって、今も昔も魅力的な街。展示会が頻繁にあったり、大きな仕事のチャンスも多い。特にデザイナーとして走り出した20代のうちは、キャリア構築のために東京にいることがとても重要だと考えた。しかし、仕事は充実している一方で、どこか心にポッカリと穴が空いた感覚に気づかずにはいられなかったそう。常にどこか安心できる環境がごっそり抜け落ちていると感じていたという。
mioさんの地元は、海と山に囲まれた街。昔から、自然の中で過ごすのが大好きだったのだ。そのため、摩天楼ひしめく東京という場所に長く身を置いていると、どこか満たされない、空虚感に苛まれる思いがあったのかもしれない。それでも、キャリアを積むことを最優先に、走り続けてきた。
そんな中で起こったのが、東日本大震災だった。長い期間、余震が続いたことでめまいが止まらなくなってしまい、体調不良に悩むように。そして、地元の石川県に戻ることにした。そこで、改めて「やっぱり緑のある田舎は、いいな」と深く感じたという。そして、同時期にmioさんの身に起こったのが、病気の発覚だった。
「突発的に起こった病気というよりも、それまでの生活の蓄積が原因ではないか、という話でした。私の仕事は、昼夜問わず修正が入ったり、入稿まで缶詰になったりすることもあります。そういう生活が10年ちょっと続いていたから、その結果として病気になったのかな、と。そこで初めて、東京で仕事を続けながらも、私にとって安心できる居場所を探すことも大事なのではないかと思ったんです」
その後しばらくして病気も落ち着き、結婚を機に東京へ戻ることになった。1年ほどは何食わぬ顔で暮らしていたものの、徐々に「東京だけだと、ちょっときつい」と、再び息が詰まるような思いが込み上げてくるようになった。そこで夫婦で考えるようになったのが、「二拠点生活も、いいんじゃないか」ということだった。
とはいえ、当時はそれほど急いでいたわけではない。mioさんが思い描いていたのは、40代後半から50代くらいの間に、どこかに別荘を持てたらいい、というくらいのものだった。
結婚1年目は、今後さらに東京の物価が上がることも見据え、まずは車を購入し、東京で家を持つなど、都内での暮らしに必要な基盤を整えることを優先した。そんな東京での生活がひと段落した頃、夫から「そろそろ家を探し始めないか」と提案された。
その理由の一つには、mioさんの体調への配慮があった。だが、それだけではない。どうせ二拠点生活をするのであれば、少しでも早く始めた方がいい。元気なうちに、1日でも長く楽しみたい、夫はそう考えていたのだ。
こうして、当初はもう少し先のことだと思っていた二拠点生活を、30代後半で始めるための土地探しが始まった。
mioさん夫婦が選んだのは、千葉県外房にある別荘地だった。外房というと、まず海を思い浮かべる人も多いかもしれない。けれど実は、緑豊かなリゾート地も点在している。その一つ、山間の森の中に、mioさん夫婦が二拠点目として選んだ自宅がある。
二拠点先として、もともと理想に描いていたのは、軽井沢の森の中だった。ところが、東京の自宅から軽井沢までは片道3時間ほどかかる。現在も持病のため通院を続けているmioさんにとって、東京から片道2時間以内で行き来できることは絶対条件だった。そこで「森の中」という理想を残しつつ、移動時間という条件も加えて候補地を絞っていった。
そして、3年もの歳月をかけて巡り合ったのが、現在の土地だった。
こうして2026年1月、mioさんの二拠点生活が始まった。
二拠点生活をはじめる前に不安だったこと
現在は、月の半分ずつを東京と千葉で過ごす二拠点生活を送っているという。その際は、愛犬と愛猫も一緒に連れて移動しているそうだ。
「猫は縄張り意識を持つ動物なので、あまり頻繁に環境が変わるのはストレスになります。そのため、10日から2週間は滞在するようにしています」
動物を連れての移動には、さまざまな配慮が必要になる。mioさんも、二拠点生活を始めたばかりの頃は、愛犬と愛猫が少しでも安心して過ごせるよう、かなり気を遣ったという。東京で使っているものとまったく同じケージやトイレ、ハンモックなどを千葉にも用意し、ペット専用の部屋も作った。また、環境が変わった直後は、むやみに触れたりせず、ケージの中でそっと過ごさせるようにしていた。そうして少しずつ環境に慣らしていくうちに、犬も猫も移動や新しい環境にすっかり慣れ、今では東京と千葉、それぞれの暮らしを楽しんでいるという。二拠点生活を始める前は、ペットを連れての移動に不安を感じていたmioさん。しかし、ペットの習性に合わせて環境を整え、無理をさせないようにすることで、その不安を乗り越えることができた。
そして、もう一つ二拠点生活を始める前に抱えていたのが、地方ならではのご近所付き合いへの不安だった。しかし、こちらも実際に暮らし始めてみると、心配していたほどではなかったという。
「もともと田舎育ちなので、田舎特有の付き合いには不安がありました。というのも、東京に住んでいる方々はドライな方が多いと思うんですが、皆さん、いい意味で距離感を保って、心地いい距離を保ってくれる方が多い印象だったから。一方で、私の知っている田舎は、それに比べるとグイグイと入り込んでくる感じ。それが好きな方もいると思うのですが、私はどちらかというと、一定の距離を保ちたいタイプなんです。けれど、そんな心配は必要ありませんでしたね。別荘地だからなのか、そういった付き合いはまったくなくて、快適に暮らせています」
そう笑顔で語るmioさん。ちなみに、二拠点生活ではなく完全移住を選べば、mioさんもペットたちも、より快適に暮らせるのではないだろうか。そう思って尋ねてみると、返ってきたのはこんな答えだった。
「東京の楽しさは諦めたくないんですよね」
自然豊かな千葉での暮らしを楽しみながらも、東京で過ごす時間も手放したくない。そんな二拠点生活ならではの魅力について、後半ではさらに詳しく伺った。
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