〈横浜⇄茨城県鹿嶋市〉最初から完全移住ではなく、二拠点生活からはじめて良かったと思う理由 #暮らしの選択肢
近年、テレワークの普及やライフスタイルの多様化により、都市と地方の二拠点で生活する人々が増加傾向にあるということをご存知でしょうか。国土交通省の調査によれば、二地域居住等を実践する人は約6.7%に達し、約701万人と推計されているんだとか。また、複数拠点生活を行っている人は全体の5.1%に上るとの報告も。自らの価値観に基づき「暮らしを選ぶ」二拠点生活者たちから、その魅力や課題、リアルな日常を深掘り。理想と現実の狭間で見えてくる「暮らしの選択肢」の今を伝えます。
今回お話を伺ったのは、横浜と茨城県鹿嶋市(以下、鹿嶋)で二拠点生活をしているさおりさん。自然豊かな場所で暮らすことに憧れのあった夫の意向ではじまった二拠点生活は、いずれかは完全移住をするという計画のもとスタート。はじまりから3年経った現在、さおりさんは、最初から地方移住ではなく、二拠点生活からはじめたことを「良かった」と話します。なぜでしょうか?さおりさんの #暮らしの選択肢に迫ります。
〈二拠点生活者 プロフィール〉廣木さおり
横浜でリラクゼーションサロンラクシュミーを経営。2023年より、夫と共に、横浜と茨城県鹿嶋市で二拠点生活を送っている。
Instagram: @lakshmisalon58
地方暮らしには関心は薄い...それでもはじまった横浜と鹿嶋の二拠点生活
Jリーグ「鹿島アントラーズ」のホームタウンとしても有名な街、茨城県・鹿嶋市(以下、鹿嶋)。市内にある「鹿島神宮」は、日本建国・武道の神「武甕槌大神(タケミカヅチノカミ)」を祀る全国の総本社であり、関東最強クラスのパワースポットとして知られている。勝負運や新たなスタートを切る際のご利益が特に強力で、全国から参拝者が訪れるスポットだ。太平洋と北浦に囲まれた自然豊かな環境でありながら、都内から約2時間とアクセスも良好。そんな鹿嶋と横浜とで二拠点生活を送っているのが、さおりさんだ。
彼女が、自営業の夫と共に横浜と鹿嶋の二拠点生活をはじめたのは2023年だった。鹿嶋の自宅は、元々は夫の祖母の家。釣りが趣味の夫が年に数回、さおりさんを連れて釣りをするために利用していたが、彼が「ゆくゆくは鹿嶋へ移住したい」と言い出したことで、夫が家を継いで、夫婦で定期的な行き来がはじまった。
一方で、当のさおりさんはと言うと、「鹿嶋で暮らしたい」「自然豊かな場所で暮らしたい」という願望は特に持っていなかったそう。
「私の祖母の家は長野県だったので、小さい頃から自然豊かな場所で時間を過ごすという機会もあり、良い思い出もたくさんありました。けれど、東京近郊で生まれ育ち、都心での生活にも満足していたので、地方に住むということを具体的にイメージしたことはありませんでした」
ただ、鹿嶋が良いところだということは、これまでに何度も訪れた中で理解していたこと。そのため、異議を唱えることもなく、今のところあくまでもベースは横浜でという条件のもと、二拠点生活がはじまった。
移住ではなく、二拠点生活というクッションがあったことは、さおりさんにとってはとても具合の良いことだった。なぜなら、ちょうど二拠点生活がはじまった頃に、さおりさんは、長らく勤めていたサロンを退職し、独立。横浜市内で、リラクゼーションサロンを開業したから。また、ゆくゆくは本拠地になるであろう鹿嶋での具体的な暮らしを体験できることも、心の準備をするという意味でとても良かったことの一つ。特に、年齢を重ねてからの地方暮らしというのはメリットだけでなく、デメリットも増えてくる。例えば、交通の便だったり、買い物のしやすさだったり。そういった不安も含めて、俯瞰して地方暮らしを見ることは、移住に対しての解像度を上げるのに役立つ。二拠点生活をはじめてから3年経つ現時点で、さおりさんは、鹿嶋に移住することについて、どう感じているのだろうか。
「リアルに住める感じはあると思っています。鹿嶋は、ちょうどいい感じの場所だということがよく分かりました。というのも、自宅があるエリアは、周りには民家もなく田んぼに囲まれた自然豊かな場所。一方で、少し車を走らせれば市街地に出ることができます。実は、私、免許を持っていなくて。これからも自分で車を運転するということは考えていないのですが、徒歩30分圏内にスーパーマーケットもあるので、許容範囲内だと思っています」
「想定外!」地方暮らしでのんびりは暮らせない?
夫婦揃って自営業ということもあって、休みは比較的フレキシブルに取ることができる。そのため、さおりさん夫婦は月初に「今月は、◯日〜◯日まで、鹿嶋に行こう」とあらかじめ決めて、仕事の予定を立てるようにしている。それでも、まとまった休みが取れるのは、せいぜい月に2-4日程度。忙しい月は、1泊しかしないということも。そうなると、鹿嶋にいない期間の方が長くなるわけだが、メンテナンスもかなり大変なのではないだろうか。
「めちゃめちゃ大変ですよ(笑)かなり広大な庭があるのですが、1ヶ月も家を空けると、手に負えないぐらいの状態になってしまうんです」
実はさおりさん、鹿嶋で暮らすまで、地方暮らしをすれば、時間にもっと余裕ができるだろうとイメージしていたそう。確かに、自然豊かな場所で暮らすと聞くと、のんびりした暮らしの情景を連想することも多い。ただ実際には、今のところ、庭のメンテナンス等に時間を費やすことが非常に多いと話す。特に、二拠点生活で、多くても月4日程度しか滞在しないとなると、メンテナンス回りのTo doリストも増えてくるのかもしれない。一方で、地方暮らしに憧れのあったさおりさんの夫は、そういった庭仕事もなんなくこなしてしまう。むしろ、楽しんでいるんだとか。そういった大変なことも醍醐味と感じられる心の余裕は、二拠点生活には必要なのかもしれない。
庭の手入れに加えて、さおりさん夫婦の鹿嶋滞在の過ごし方は、庭でバーベキューすることだそう。鹿嶋に行く途中に立ち寄る「道の駅」やスーパーマーケットで食材を買い込んでから辿る自宅への道のりは、都会の喧騒から離れて、徐々に心がほぐれていくのを感じられる。
「2人とも、外でお酒を飲むのが大好きなんです。鹿嶋に着いたら昼間から夜までずっと外でバーベキューをして過ごします。これから気温もさらに上がってくると思うので、少し大きめのプールを買いました。鹿嶋に行く楽しみが増えましたね」
実は、さおりさん夫婦はもともとキャンプに行くのが趣味。これまで、津々浦々のキャンプ場を訪れてきた。一方で、鹿嶋で二拠点生活をはじめてからは、キャンプにはほとんど行っていない。
「鹿嶋の家があればキャンプと同じように楽しめるよね、と夫と言い合っています。今の暮らしの選択に、とても満足しています」
>> 後編へ続く
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