〈横浜→北海道 長沼町〉移住者がその土地に定着できるかどうかを左右すること #暮らしの選択肢

〈横浜→北海道 長沼町〉移住者がその土地に定着できるかどうかを左右すること #暮らしの選択肢
写真提供: 江藤誠洋

近年、テレワークの普及やライフスタイルの多様化により、都市から地方へ完全移住をする人々が増加傾向にあるのはご存知でしょうか。自然豊かな環境でのびのびと生活ができる、住宅費などの物価の安さ、あるいは子育てのメリットなども魅力の地方移住。一方で、実際に移住した人たちのリアルな本音はどうなのでしょうか。自らの価値観に基づき「暮らしを選ぶ」たちから、その魅力や課題、リアルな日常を深掘り。理想と現実の狭間で見えてくる移住者たちの「暮らしの選択肢」の今を伝えます。

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今回お話を伺ったのは、2023年に横浜から北海道 長沼町へ移住された江藤誠洋さん。移住当初から、地域おこし協力隊のメンバーとして移住コーディネーターを任されてきた江藤さん。2026年10月いっぱいで、その任務は終了となり、2027年には、長沼町に宿を開業予定。「まさか自分が開業するなんて思ってもみませんでした。自分にはできないと思っていたので」と目をほころばせながら話す江藤さんですが、一体どのような心境の変化があったのでしょうか。江藤さんの #暮らしの選択肢 に迫ります。

〈移住者プロフィール〉江藤誠洋
神奈川県出身。2023年結婚を機に、北海道長沼町へ移住。地域おこし協力隊メンバーとして、北海道長沼町の移住コーディネーターを務める。地域おこし協力隊任期終了後、宿を開業予定。Instagram : @maoi_eto

移住前の自分が想像していなかったこと

江藤さんは、13歳から25歳まで東京都内や神奈川県内に暮らした。関東での生活が長くなるわけだが、都心暮らしと地方暮らしの違うところは、どのようなところだろうか。

「時間の使い方が違いますね。都心は何時になっても明るいじゃないですか。けれど、長沼町では、日が沈んだら誰も外を歩かなくなる。農業が盛んな地域なので、日の出とともに働きはじめ、日が落ちる頃には仕事を終える方が多いんです。私もその暮らしに影響されて、以前よりも規則正しい生活になりました」

写真提供: 江藤 誠洋
写真提供: 江藤 誠洋

加えて、交友関係にも嬉しい変化が。都心に住んでいると、地域に密接に関わる機会というのはそこまで豊富にない。さらには、隣に誰が住んでるかも知らないというのも決して珍しいことではないはず。目立った交友関係と言えば、会社の同僚や学生時代からの友達など、何かしらの共通点がある人のみだった。一方で、江藤さんは長沼町に移住してから、人間関係の輪が広がったと実感している。

 

「町自体が大きくないので、いろんな方にお会いして、お話することができます。例えば、農業をやっている方、カフェや雑貨店を営む方など、色々なことをやっている方が周りにいて、そういう方たちと関わる機会があるのはとても興味深いです。自分自身の今後の働き方だったり暮らし方なんかにも、すごく刺激を受けています。移住前だったら、自分が起業するなんてことを考えつきもしなかったと思います。周りの方々の話を聞く中で、「やってみたい」「自分にもできるかも?」と少しずつ思うようになりました」

地方暮らしに期待してはいけないこと

移住前、たくさんの心配事を抱えていた江藤さんだったが、蓋を開けてみれば、案ずるより産むが易しだった長沼町への移住生活。

現在は、「苦労していることは、ありません」と胸を張れるほど、充実した毎日を送っている。ただ、強いていうならば、光熱費がやや高いこと。

例えば、長沼町全域でガスはプロパンガスになり、毎月1.5万円ほどかかっているという。また、水道代も横浜に住んでいた頃よりも、倍程度になっているのだそう。それは、少ない人口の中で、配管を維持する必要があるためだ。

 

 

 地方暮らしというと、生活費が抑えられるイメージを持つ人も多いかもしれない。江藤さんいわく、全体の生活費で言ったら多少は抑えられているかもしれない、とのこと。例えば、農業が盛んな土地柄、夏場は直売所で新鮮な食材がリーズナブルに手に入ること以外に、農家さんから野菜をいただく事も。一方で、少し苦笑しながら、こうも話す。

「生活費が抑えられるから地方に移住しようっていう考え方はやめた方がいい気がします」

加えて、地方暮らし、特に北海道での暮らしで覚悟しておくべきことも聞いてみた。その答えは、「冬場は、遠出はできない」ということ。やはり雪国ならでは。途中で吹雪いて帰れなくなってしまうという可能性も決してゼロではないため、出かけるという心理にはなりにくいんだとか。

 

「冬は、できていなかったことに時間を当てようみたいな過ごし方が多いです。例えば、読めていなかった本を読んだり。逆に、夏は毎週末出かけています。夏祭りだったりとか、イベントがどこかしらで開催されているので。私だけではなく、長沼町で暮らす人たちは、冬は穏やかに暮らしている分、その反動で夏をみんな思いっきり楽しんでいるような気がしますね」

人が人を呼ぶ街・長沼町

江藤さんが長沼町での暮らしに最も楽しさを感じるのは、地域が少しずつ賑わっていく過程を見られることだ。

例えば、元プロ野球選手の斎藤佑樹投手が、北海道長沼町で子どもたちが楽しく野球ができる場所を作りたいとはじめたプロジェクト「はらっぱスタジアム」が2025年オープンした。また、手紙社主催の『北海道蚤の市』も、今年で2回目が長沼町で開催された。

写真提供: 江藤 誠洋
写真提供: 江藤誠洋

また興味深いのが、人が人を呼ぶ力で、街が賑わってきているということ。例えば、長沼町にある個人店のファンが、他県から移住しているというような。

「補助金がもらえるから移住するのではなくて、その町に住んでるこの人の作るものに憧れて、その街を好きになって移住して。また、そこを起点に新しい人がまた集まるという連鎖をずっと見てきているような気がします。私自身が移住の担当をしているからこそ、そうした動きが目に入りやすい面もあると思いますが、これは長沼ならではの流れだと感じています」

人と人との関わりが希薄になっている今、人との繋がりで地域の輪が広がっていくことは、現代社会にとって必要なのかもしれない。江藤さんは、最終的に地域に根付くか根付かないかは、きっとその「そこにいる人と人のつながり」によるものではないか、と考えている。

そんな長沼町に暮らして3年になる江藤さん。2026年いっぱいで地域おこし協力隊の任期が終了する。それに伴い、2027年6月を目標に、宿を開業予定だ。

 

 

「観光を通して、長沼町を、より多くの方に知ってもらうきっかけになればいいなと思っています。また、長沼に移住する関係なしに、地方で過ごす時間の豊かさみたいなものを感じてもらえる体験が提供できたらと思っています。地域の方にも協力してもらいながら長沼町ならではの体験できるようなコンテンツを提案する予定です」

前職では、住宅設計をしていたため、宿の基本設計は自分で行っているという。会社員時代から、いつか、自分の好きな町で、自分の好きな景色を引き立てる空間の提案がしたいと思っていた。20代最後の挑戦。これからも、江藤さんの活躍から目が離せない。

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