〈鎌倉↔︎箱根 二拠点生活〉忙しいからこそ、二拠点生活が支えになっている #暮らしの選択肢
近年、テレワークの普及やライフスタイルの多様化により、都市と地方の二拠点で生活する人々が増加傾向にあるということをご存知でしょうか。国土交通省の調査によれば、二地域居住等を実践する人は約6.7%に達し、約701万人と推計されているんだとか。また、複数拠点生活を行っている人は全体の5.1%に上るとの報告も。自らの価値観に基づき「暮らしを選ぶ」二拠点生活者たちから、その魅力や課題、リアルな日常を深掘り。理想と現実の狭間で見えてくる「暮らしの選択肢」の今を伝えます。
今回お話を伺ったのは、鎌倉と箱根で二拠点生活をしている狩野真実さん。狩野さんは、大学卒業後、アパレル業界の第一線で活躍し、現在は鎌倉で地域密着型 鮮魚店「サカナヤマルカマ」を経営している。鮮魚店での仕事は、肉体的消耗も激しく、かなり激務。忙しい中で、さらに二拠点生活を送るというライフスタイルはさらにエネルギーを消耗するのでは?一方で、狩野さんは「二拠点生活をしていないと、しんどい」「拠点はいくつあってもよい」と話します。その理由は?狩野さんの #暮らしの選択肢に迫ります。
〈移住者プロフィール〉狩野 真実
アパレル業界から水産業へと転身し、神奈川県鎌倉市で新しいスタイルの鮮魚店「サカナヤマルカマ」を多様なメンバーと共に運営。地域の課題解決やコミュニティづくり、さらには箱根と鎌倉の二拠点生活を送る多彩なライフスタイルでも知られている。
Instagram: @kanomami
忙しいからこそ、二拠点生活をしていないと、しんどい
鎌倉と箱根の二拠点生活をはじめた当初、狩野さんは週1回は週末を利用して箱根に足を運んでいた。一方で、二拠点生活をはじめて5年たった今は、狩野さん自身が箱根に向かうのは、月1-2回ほど。
「3年前に、鎌倉で魚屋「サカナヤマルカマ」をはじめたんです。お店の営業があるので、土日も鎌倉にいることが増えましたね。そんな時は、夫と娘だけで箱根へ出かけることもあります。鎌倉から箱根までは車で最短1時間15分ほどなので、「明日は暑くなりそうだから」「疲れたから温泉に入りたいな」と思い立って、急に出かけることもあるんです。今は、「行ける時に行く」という感じですね。逆に、ゴールデンウィークのように鎌倉が混雑する時期は、箱根へ避難するように出かけることもあります。」
また、過ごし方にも変化が。二拠点生活開始当初は、友達を招いて、ワイワイ過ごすことも多かった。今は、10歳になる娘と一緒に料理をして、食事を楽しむ。ハンモックに揺られながら、ワインを楽しんだり、読書をしたり、温泉に浸かったり………静かにゆっくりした時間を過ごすようになった。
「魚屋があまりに忙しいので、箱根では自然とゆっくり過ごすようになりました。魚屋は肉体労働ですし、経営面などバックオフィスの仕事もあるので毎日ヘトヘトです。だから、箱根に行くことで自分を『保てる』感じなんです。定期的に行かないと、仕事モードのまま切り替えられず、いつも何かに追われているようになってしまう。鎌倉から箱根へ向かう1時間ちょっとの移動時間も、私にとっては大事なんです。車を走らせているうちに自然と仕事のことが頭から離れていって、気持ちが少しずつリセットされていく。拠点を移動すること自体が、オンとオフを切り替えるスイッチになっているんだと思います。」
箱根は暮らすには不便、だからこそ暮らしが更に楽しめる?
二拠点生活の楽しさの一つは、生活圏が広がることだと、狩野さんは話す。
「箱根は、日常の買い物ができる場所が意外と限られています。人口が少なく、観光が中心の町なんです。だから、食材は隣の小田原で買ってから行くことが多いですね。御殿場も近いので、馬肉や卵などはそちらまで足を延ばすこともあります。
鎌倉でも小田原でも、できるだけ直売所や個人のお店で買い物をするようにしています。そういうお店では、店主さんとの会話や品揃えから、その土地ならではの食材や文化に触れられたり、新しい発見があったりするんです。どこへ行ってもチェーン店だけで買い物をしていたら、そういう楽しさはなかなか味わえません。
そうやって地域との関わりが増えることで、自然と生活圏も広がっていく。鎌倉と箱根だけでなく、小田原や御殿場まで含めて暮らしを楽しめるのは、二拠点生活ならではの面白さだと思っています。」
街をまたいで生活する。狩野さんのように、さまざまな場所へ出かけることが好きな人にとっては、観光地で暮らすこと自体が楽しみにもなる。一方で、箱根は地域に深く入り込んで暮らすという点では、少し難しい場所かもしれない。
別荘地には、狩野さん一家のように二拠点生活や別荘として利用している人が多く、近所付き合いはほとんどないという。だからこそ、鎌倉でさまざまなコミュニティに参加し、人と会い、日常的にコミュニケーションを取る時間が、自分にとっていかに大切かを改めて実感した。
「箱根は自然の中で静かに過ごす場所。一方で、人とのつながりや地域との関わりは鎌倉にあります。そのバランスがあるからこそ、今の二拠点生活は心地いいんだと思います。」
拠点はいくつあっても良い。チャンスやタイミングを逃さないためのコツ
これからも、二拠点生活は続ける予定だという。むしろ、「拠点は、いくつあってもいいかもしれない」と考えているそうだ。
「やはり川沿いもいいなと思っていて。どこであっても、自分にとって心地よい要素がある場所に拠点を持っておくことが大切だと思うんです。だから、これからも今までどおり、自分の感覚を大切に選んでいきたいですね」
「直感に従う」というのは、東京から鎌倉へ移住した時も、箱根との二拠点生活を始めた時も、狩野さんが大切にしてきたことだ。
移住や二拠点生活は、人生の大きな決断だ。だからこそ、将来を見据えて綿密に計画を立てる人も少なくないだろう。
一方で、狩野さんは、その時々のタイミングや「なんとなく、こっちがいい」という直感に素直に従ってきた。その積み重ねの先に、鎌倉で魚屋を営み、箱根との二拠点生活を楽しむ今の暮らしがある。
「全部、計画してこうなったわけではないんです。振り返ると、たまたま流れに乗ってきたという感じですね」
直感を大切にするために、狩野さんが意識しているのは、自分で可能性を狭めないことだという。
「自分が見ている世界や興味のあることだけを追いかけていると、世界はどんどん狭くなってしまう。本当はもっといろいろな可能性があるのに、自分で条件や枠を決めてしまうと、それ以外のものが目に入らなくなるんです。だから、偶然起きたことや、誰かから提案されたことにも、一度乗ってみるようにしています。自分が思いつくことや想像できることには限界があると思うので、その外側にあるものにも出会える余白を残しておきたいんです」
もし理想の条件だけを追い求めていたら、今の暮らしには出会えていなかったかもしれない。人生には、自分が想像できることよりも、もっと面白い選択肢がある。だからこそ、直感を信じ、偶然や人との出会いに身を委ねてみる。その積み重ねが、狩野さんらしい心地よい暮らしをつくってきたのだろう。
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