「乳がんと向き合う。そう決めたあなたは強く美しい」乳がんサバイバー淳子さんが伝えたい言葉

 「乳がんと向き合う。そう決めたあなたは強く美しい」乳がんサバイバー淳子さんが伝えたい言葉
乳がん経験者のためのウェルネスヨガコミュニティ

ヨガジャーナルオンライン では、乳がん月間に「PINK OCTOBER」企画として、乳がん経験者のためのウェルネスヨガコミュニティメンバーから「乳がんを経験する前の自分に伝えたい言葉」というお題で言葉を募り、その中から5つをピックアップしステッカーにデザインする、という企画を行いました。その中の言葉のひとつ「乳がんと向き合う。そう決めたあなたは強く美しい」という言葉を寄せてくれたコミュニティメンバーの淳子さんに、言葉の真意を伺いました。

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―――乳がんが発覚した当時の様子を教えてください。 

淳子さん:お恥ずかしい話なのですが、定期的に乳がん検診を受けていたにも関わらず、当時、最新の検査結果が入った封を開けずに半年近く放置していました。それくらい乳がんを他人事のように思っていたし、ありきたりですが「自分は大丈夫だろう」という気持ちも大きかったのだと思います。 

その後、自分で胸を触ったときにしこりがあるように感じ、夫の強い勧めで検査に行くことにしました。検査結果は、乳がんのステージ2手前の状態。改めて検診結果の書類を開封してみたら、案の定「要再検査」との内容が書かれていました。 

―――検査結果の封を開けるのを忘れてしまう……忙しい現代では決して他人事ではないように感じます。淳子さんが選択したのは右胸全摘と同時再建、そして抗がん剤での治療だったそうですね。治療中で強く印象に残っていること、乳がんに関するこれまでの知識とのギャップなどはありましたか? 

淳子さん:まず、想像以上の辛さが、摘出と同時に行なった再建手術の後にきました。自分のお腹の脂肪を切除して胸に移植したのですが、この手術を受けた後は12時間一切動いてはいけないと医者から言われます。寝たまま動くことができず、血流が滞って全身が痛くなるんです。とにかく「しんどい」の一言でした。それはもう、死んでしまいたいと思うほどでしたね。  

さらに手術の2ヶ月後、強めの抗がん剤の点滴を3週間に一回、合計4回打ちました。現在は投薬に加え、半年に一回のホルモン剤注射による治療を継続しています。 

一般的に知られている抗がん剤の副作用については、事前に念入りに調べました。また、乳がん経験者の方の感想を聞く機会もあり、吐き気や脱毛といった症状に対する覚悟はしていたつもりです。しかし、現実は想像以上の苦しさで……もうほんとに辛かったですね。 

「ベランダに出たら、フッと飛び降りてしまうのではないか」というような、自分の思考をコントロール出来ない恐怖も感じました。半面、しっかりとした理性も残っていたので、そういった事態を起こさないためにも「ベランダや高いところには登らないようにしておこう」と、自分なりに対策していました。 

実際に抗がん剤治療を受けてみて、広く知られている副作用以外に感じたのが、「自分の細胞が壊れていく音がする」という体感です。言葉で正確な音を表現するのは難しいのですが、初めて抗がん剤を打った後、時間経過とともに体がゾワゾワするような、自分が自分ではなくなっていくような感覚を経験しました。精神的にも肉体的にも壊れていく感じ、といったら伝わるでしょうか。 

乳がんによって何かを失ったとしても

―――今回、乳がん経験者としてヨガジャーナルオンラインの企画に寄せてくださった「乳がんと向き合う。そう決めたあなたは強く美しい。」という言葉に込められた想いをお伺いしたいです。 

淳子さん:たとえ乳がんによって胸や髪の毛、他の何かを失っても、この先「女性として自信を持って生きていきたい」という意欲が掻き立てられた経験が、今回のメッセージに影響しています。 

私の場合は、乳がんだと分かった時点で子供も大きくなっていましたし、胸を再建する理由はないと一度は考えました。ですが、今となっては自分に胸の存在があることで満たされる瞬間もあり、「やってよかった」と感じています。 

乳がんになると、診察や治療方針を決める場面で、急な選択を迫られる場面も少なくありません。でも、乳がんになった方々は、迷いながらも選択を続けて治療に立ち向かいます。 

その中で、胸や髪の毛を失うことがあって気持ちが折れても、時にウィッグやメイクの力を借りて「人生を楽しもう!」と進んでいくんです。そういったん姿勢を見ていると、乳がんと向き合っている人は、強くて美しいなと思います。 

あとがき 

乳がんを克服するための治療法や、その後の人生をどう過ごすかは人によって全く異なります。ですが、闘病した一人ひとりに目を向けると、自分の選択に迷いや恐怖を持ちつつも、決断する強い意志と確かな自信を持つ姿は共通しているように感じました。そして、その体験を誰かの役に立てたいと思っている前向きな姿には、魅力を感じざるを得ません。

お話を伺ったのは…淳子さん
東海地方で暮らす乳がんサバイバー。病をきっかけに独学でピアノをスタートし、大好きな曲で念願のストリートピアノデビューを果たした。

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インタビュー・文/岩本彩

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ヨガジャーナルオンライン編集部

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ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。