ファッションを生きる力に。おしゃれなターバンで「服飾医療」を目指すrippmonsterの取組み

 ファッションを生きる力に。おしゃれなターバンで「服飾医療」を目指すrippmonsterの取組み

病気やその治療によって見た目が大きく変わることに、戸惑いや落ち込みを感じる人は多いです。自分らしくファッションを楽しむことでネガティブからポジティブへ─。そんな願いを込めたオリジナルターバンを制作・販売する「rippmonster」のプロデューサー兼デザイナーのmicaさんに、ターバン誕生のいきさつと背景にある思い、そしてこれからを伺いました。

広告

見た目の変化に戸惑う人に寄り添うおしゃれアイテムを作りたい

ターバンはかぶるだけでこなれ感が出るヘッドアクセサリーですが、rippmonsterのターバンは「がん治療により見た目に変化を生じた方々にもおしゃれを楽しんでほしい」という思いから生まれました。

「脱毛など見た目に大きな変化があると、鏡に映る自分の姿を受け入れることが困難になり、心も体もとても落ち込みます。窓ガラスに映る自分の姿が悲しくて、カーテンを開けなくなった方もいる。でも、例えばメイクがうまくいったとかお気に入りの服を見つけたとか、そんなささいなことで私たちの気持ちって大きく変わりますよね。それは病気であってもなくても同じで、おしゃれにはそんな力があるとずっと思っていました」とmicaさん。ターバンが生まれたのは、自身のある経験からでした。

「5年ほど前、健診ですい臓にがんの疑いが出て、そこから結果が出るまでの1週間は生きた心地がしなくて…。命の期限があるかもしれない、と思ったときにそれまでとまったく世界が違って見えるようになったんです。私の母は36歳のときすい臓がんで亡くなったのですが、治療で変わり果てた母の姿を見て、幼かった私は『おばけ、こわい』と。それを聞いた母はどんなに辛かったことか。自分が同じ病気かもしれない、となって改めてその時の母の気持ちに思い至り、今自分がすべきことはなんだろう、と本気で考えました」

ターバンだからこそかなえられるポジティブなおしゃれ感と快適なつけ心地

20代は美容師、その後にアクセサリーデザイナー・作家になったmicaさんは、もともとおしゃれが大好き。ターバンもファッションアイテムとしてなじみがあるものでした。

「おしゃれな人だった母はスカーフをたくさん残してくれていて、私は10代の頃からそれをターバンとして頭に巻いていました。それもあって自分が病気になったときに使うなら、という方向へ自然と向かっていったのですが、ちょうど同じころ大切な友人が乳がんになり『大好きな彼の前では、寝る直前までかわいくいたい』という気持ちを打ち明けてくれたのです。それをきっかけに、かわいい部屋着を着るような感覚でずっと着けていても心地よくて、心が浮き立つターバンを作ろうと始動しました。

 

帽子もいいけれど家にいるときは被らない方も多い。ウィッグだと頭皮がムレやすいという声もある。スカーフをターバンとして代用するには、ズレてしまったり巻き直す手間もかかる…。見た目を補うアイテムはいろいろありますが、私がターバンを選んだのは、ターバンならストレスなくつけられておしゃれ心も満たせる、と思ったからです」

 

つけ心や使い勝手やデザインに試行錯誤を重ねて商品として進化

micaさんは試作品を実際にモニターさんに使ってもらいながら、つけ心地や通気性、ズレにくさ、着脱のしやすさ、そしておしゃれに見えるバランスや配色などたくさんの試行錯誤を重ねていきました。その結果、着想から2年という短期間で商品化にこぎつけたのです。

「今では商品ラインナップも増え、表地はお洗濯しやすいようにシルクライク、裏側は最高峰のシルク、アウトドアや運動時には綿やポリエステル素材など、使うシーンで選んでいただけます。治療の影響で顔色がすぐれなかったりしても、つけることで顔まわりがパッと明るくなるような色や柄を考えて、今はオリジナルで生地を作っています。縫い目が肌に直接当たらないように、縫製の仕方にも工夫を凝らしました。実際に愛用してくださっている方からは『これがあるから病気と向き合える』という言葉をいただいたりして、それが大きな糧になっています」

「素敵ですね」のひとことが心を元気に!おしゃれで癒す「服飾医療」を目指して

でも、micaさんが見ているのは実はもっと先。本当に目指しているのは「その時だけのケア用品」ではなく「人生に寄り添うターバン」です。

「治療が終わっても、着こなしのスパイスとして、髪の摩擦を防ぐナイトキャップ代わりに、また高齢になって髪のボリュームが気になり始めたときも心強い味方になります。病気である/なしに関わらず、その時々、自分で自分の機嫌を取りながら、おしゃれに優しく包み込んであげられる存在として、ずっとそばに置いていただきたいと思っています」

ファッションが人を元気にするたくさんの例を目の当たりにしてきたmicaさん、ターバンづくりは「自分の天職」だと語ります。そして現在、服で人の心を癒すという意味を込めて「服飾医療」という言葉の商標登録を取得(*)しました。

*商願2023-022289「服飾医療」(第25,41類)

「病気になると『大丈夫?』など心配はしてもらえるけれど、『素敵ですね』と言ってもらえる機会は減ります。でもそのひと言って、もらった人はとても嬉しいし、生きる力になるんですよね。このターバンが、周りの人からその言葉を自然に引き出せる存在になれたら嬉しいです」

広告

インタビュー・文/遊佐信子

AUTHOR

ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

ファッションを生きる力に。おしゃれなターバンで「服飾医療」を目指すrippmonsterの取組み
ファッションを生きる力に。おしゃれなターバンで「服飾医療」を目指すrippmonsterの取組み
ファッションを生きる力に。おしゃれなターバンで「服飾医療」を目指すrippmonsterの取組み