【他人事ではない乳がん】減らない乳がんと日本の検診受診率の現状#乳房と向き合う

 【他人事ではない乳がん】減らない乳がんと日本の検診受診率の現状#乳房と向き合う
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がんと聞くと高齢の病気という印象がありますが、乳がんは若い年代でも発症する、そして女性のがんで最も多い、身近な病気です。BC Tube 編集部を運営する乳がんの専門家にお話を伺う連載企画「乳房と向き合う」では、今回、乳がんの今や検診の受診率について紹介します。

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ライフスタイルの変化などにより日本女性の乳がんが増加!

「日本人女性の9人に1人が一生のうちに乳がんになる」。20年前は30人に1人、10年前は16人に1人だったと聞くと増加のスピードを実感でき、乳がんを身近な関心事として捉えやすいと思います。海外はどうかというと、欧米では8人に1人が生涯の間に乳がんを発症しています。

乳がん
部位別予測がん罹患数(2019年) 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」より 提供:BC Tube編集部

少し前まで乳がんは欧米人に多いがんという認識でしたが、現在の日本での発症状況を見ると、もはやその構図はあてはまらなくなっています。乳がんになる女性が増えた背景にはどんな要因があるのでしょうか。

「女性のライフスタイルの変化は乳がんの増加と深く関係しています。乳がんはエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの影響を受けて増殖するタイプが、全体の約7割を占めています。女性の社会進出によるライフスタイルの多様化で初産年齢が上昇し、出産回数は減少。また初潮が早く閉経が遅い人が増え、乳房がエストロゲンにさらされる期間が長くなったことが乳がんの増加に関係すると考えられています。また食生活の欧米化により高脂肪の食事が増えたことも乳がんの発生と関係があり、特に閉経後は肥満に注意が必要です。なぜなら閉経前ではエストロゲンは卵巣で産生されますが、閉経後は脂肪細胞で産生され、肥満の人は脂肪細胞が多くエストロゲンの影響を受けやすいためです」(田原梨絵先生)

さまざまな要因によって乳がんの発症リスクに個人差があるものの、乳がんのリスクがゼロの人はいません。つまり乳がんは誰にとっても無関係ではないのです。特に40代~60代は発症のピーク期にあたり、40代と言えば仕事、子育て、家庭のことに一番忙しい時期。つい自分のことは後回しになりますが、あなたとあなたの大切な人のために検診の機会を逃さないようにして、普段から自分の乳房に意識を向けるブレストアウェアネスも習慣にしましょう! 次は、乳がんから命を守る「検診」について見ていきます。

欧米に比べて低い日本の検診受診率 。乳がんで亡くなる人が減らない現状

日本では、乳がんで亡くなる方を減らすことができる唯一の検診方法として、検診マンモグラフィが40歳以上の女性に推奨されています。しかし検診という命を守る手段がありながら、受診率は伸びていません。

「日本では、ピンクリボン運動や、乳がんを経験した著名人による情報発信の影響で徐々に検診への意識は高まっていますが、それでも受診率は40%前後に留まっています。海外と比較すると、アメリカの受診率は最も高く80.8%、次いでイギリスは75.9%、オランダ・ニュージランドは72.2%と報告されており※1、世界と比べても日本の受診率は低いことがわかります。また、諸外国の乳がんによる死亡数を見ると、アメリカとイギリスはマンモグラフィによる検診が普及した1990年を機に死亡数が減少しているのに対し、日本は増加傾向が続いており、近年ようやく横ばいになったところです。※2。ライフスタイルや人種、体格などがあるため、各国を単純に比較することはできませんが、乳がんによる死亡率の推移の国による違いを考える上で、検診マンモグラフィを受けている日本人が少ないという事実は、日本での乳がん死亡率が下がらない原因の一つである可能性が考えられます」(家里明日美先生)

※1:OECD Health at a Glance 2015
※2:WHO mortality health database,2020年6月検索

BC
OECD Health at a Glance 2015  提供:BC Tube 編集部
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WHO mortality health database,2020年6月閲覧 提供:BC Tube 編集部

アメリカの高い受診率には、どのような背景があるのでしょうか。現地で乳がんの臨床研究をしている田原梨絵先生によると、そもそも医療システムに違いがあるようです。

「日本では症状に応じて内科や皮膚科など専門医を直接受診しますが、アメリカではまずプライマリードクター(かかりつけ医)を受診し、そこで紹介状をもらい専門医を受診するのが一般的です。検診もプライマリードクターがその人のリスクをもとに検査内容を判断し、受診者はその指示に従って必然的に健康診断を受けるしくみになっている」と言います。このようなシステムの違いが、検診受診率にも影響していると考えられます。

検診に行かない理由はさまざま

乳がん検診の対象年齢である40歳を過ぎても「検診に行ったことがない」「以前の検診から間隔があいている」という人はいるのでは。乳がん検診から遠ざかってしまう理由はさまざまですが、がん検診を受けない理由を調べる世論調査を行ったところ次のような声が聞こえてきました。

がん検診に行かない理由

①「健康に自信があるので不要」「検診の効果を感じない」(検診の意義・目的に対する誤解)

②「検診機関が自宅や職場の近くにない」「検診に行く時間がない」(検診の実施体制の問題)

③「検診のための費用が負担」(経済的な問題)

④「検査に伴う苦痛が嫌」(身体的な痛み、がんかもしれないという精神的不安)

この結果を見て、「例えば検診機関までのアクセスが悪い人は、近場で受診できるようになれば行動が変わるかというと一概にそうとは言えない。検診に行かない理由は複合的に絡みあっているのでは」と伏見淳先生。一番大切なのは、乳がんが増えている現状などを理解し、「乳がんを自分事として考えられるかどうか」。定期的な検診は必要です。

また、乳房を2枚の板で挟んで圧迫し薄く伸ばして撮影するマンモグラフィ検査では、痛みを感じる場合があります。乳房を圧迫して薄く伸ばすことにより、少ない放射線量で、乳房内の変化をよりはっきりとみることが出来ます。痛みをがまんできないときは、遠慮せず撮影する放射線技師に伝えましょう。乳房の張りが強くなる生理前や生理中は痛みを感じやすいので、自分で受診日を選べる場合は生理後に予約を入れるのがおすすめです。ただし、生理前だから検査できなかったり、マンモグラフィの精度が落ちたりすることはありません。(家里明日美先生)

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BC Tube編集部

BC Tube編集部

一般社団法人BC Tubeとして2020年11月に設立。メンバーは代表理事の伏見淳氏(ダナ・ファーバー癌研究所)はじめとする7名の乳腺外科医を中心に構成し、YouTubeチャンネル「乳がん大事典 BC Tube編集部」を運営。乳腺外科医が作成した動画を第三者の乳がん診療・研究に携わる医師と非医療者のレビューを経て定期的に公開し、客観的で科学的根拠のある乳がん情報の発信を行っている。



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