見てわかる場合もある?しこり以外にも知っておきたい【乳房の変化】とは #乳房と向き合う
ホルモンバランスによって変化する女性の乳房は、その変化が乳がんのサインと紛らわしい場合があります。変化を確認したときに慌てずに、でも見逃したり放置したりすることがないように、デリケートな女性の乳房の変化についてBC Tube編集部の乳がんの専門家が解説します。
自分の乳房の状態に日頃から関心を持ち、乳房を意識する「ブレストアウェアネス」については連載第一回目の記事にまとめています。今回は、しこり以外にも知っておきたい乳房の変化についてです。
乳がんのサインかも!?しこり以外にも知っておきたい乳房の変化
乳がんに気づく症状としては、乳房のしこりをはじめさまざまです。見て・触って・感じるセルフチェックで乳がんのサインを見逃さないためには、乳房と乳頭の変化を知っておくことが大切。しこり以外の変化も注意深く観察しましょう。
乳房の変化
しこり、ひきつれ、えくぼのようなくぼみ、赤みやただれなどの皮膚の変化、左右のサイズの違い
乳頭の変化
分泌物、赤み、ただれ、へこみ、ひきつれ
このような症状以外に加えて、乳房が張るような「痛み」を感じたときに乳がんを疑うことがありますが、痛みがあると乳がんの可能性は高いのでしょうか。
「痛みを訴えて乳腺外科を受診する方もいますが、乳がんと診断される方は1%未満です。乳がんではない場合は、月経に伴う女性ホルモンのアップダウンによるものや、乳腺症や乳腺炎の可能性が考えられます。ただ乳がんである確率は低いと言っても、しこりが大きくなって乳腺を圧迫していたり、稀に炎症性乳がんの場合があるので、痛みを感じたら受診のきっかけとして捉えて診察を受けることをおすすめします」(山下奈真先生)
また乳頭の変化で注意したいのが、乳頭を軽くつまんだときに出る「分泌物」です。妊娠中、授乳中も分泌物を確認できますが、乳がんとそれ以外のケースについて見ていきます。
「乳頭には乳汁(母乳)の通り道である乳管が約20本あり、この乳管を通って分泌物が出ることを乳頭分泌と言います。乳頭分泌には妊娠期・授乳期に見られる正常なものと、それ以外の異常乳頭分泌がありますが、その大半は乳管内乳頭腫や乳腺症などの良性の症状で、乳がんと診断されるのは5%~10%です。分泌物の色は、乳白色、透明、血液が混ざった赤色、茶色、黒色とさまざま。また分泌物が乳頭の一点からと、複数点から出る場合があり、一点からの分泌は乳がんの可能性が高いと言われていますが断定はできません。良性の場合と乳がんの乳頭分泌は特徴が似ていて色や量で判断するのは難しいため、分泌が続く場合には、かならず乳腺科のある医療機関で診てもらいましょう」(家里明日美先生)
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乳房の変化に慌てないために。月経周期、妊娠・授乳期の乳房の状態を確認!
乳房は月経、妊娠、授乳に伴う女性ホルモンの影響を受けて、張り感や痛み、触ってみるとしこりのような硬さを感じることがあります。これらの変化は乳がんのサインと似ているため「もしかして乳がんでは?」と不安になってしまうもの。乳房と向き合ううえで月経や妊娠で変化する女性の体のしくみを知っておきましょう
「最初に月経に伴う乳房の変化を見ていきましょう。女性ホルモンには卵巣から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンがあり、女性の体は月経のたびにこのふたつのホルモンの影響を受けています。月経終わりから排卵期にかけてエストロゲンの分泌が多くなり、排卵後は妊娠の準備期間である黄体期にかけてプロゲステロンの分泌が活発化します。このとき母乳を作る小葉とその周りの間質が膨らむため、乳房の張りや痛み、触るとしこりのようなゴツゴツした感触が確認できます。黄体期が過ぎて次の月経が始まると症状は治まるため、月経周期に伴う胸の変化はあまり心配いりません」(山下奈真先生)
月経周期に伴う乳房の変化は体質的なものと知っておくと、慌てずに済みそうです。次に乳房に変化が現れやすいのが妊娠中と授乳中です。
「妊娠をすると授乳に向けて乳管が発達し、乳房のサイズが大きくなり、乳房や腋の下のリンパ節に張りや痛みが出ることがあります。また、母乳が作られ続けている授乳中も同様の変化が感じられます。乳房が張った状態だとセルフチェックをしても変化に気づきにくいものですが、妊娠中・授乳中も乳がんを発症する可能性があるので毎月のセルフチェックは続けるようにしてください。また妊娠中は放射線被ばくの関係で原則としてマンモグラフィ検診を受けられず、授乳中のマンモグラフィは母乳の影響で判定が難しくなります。40歳以降で妊娠を計画している人は妊活前に医療機関であらかじめ乳がん検診を受けるようにしましょう」(田原梨絵先生)
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BC Tube編集部
一般社団法人BC Tubeとして2020年11月に設立。メンバーは代表理事の伏見淳氏(ダナ・ファーバー癌研究所)はじめとする7名の乳腺外科医を中心に構成し、YouTubeチャンネル「乳がん大事典 BC Tube編集部」を運営。乳腺外科医が作成した動画を第三者の乳がん診療・研究に携わる医師と非医療者のレビューを経て定期的に公開し、客観的で科学的根拠のある乳がん情報の発信を行っている。
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