頻度は?どう触る?意外と知らない「乳房セルフチェック」乳腺科医が勧める正しいやり方

 頻度は?どう触る?意外と知らない「乳房セルフチェック」乳腺科医が勧める正しいやり方
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啓発運動を行う乳腺科医たちで結成された「BC Tube編集部」に話を伺うインタビュー連載「乳房と向き合う」。意外と知らない「乳房のこと」そして「乳がんについての正しい知識」を学びます。 今回は、乳がんを見逃さないために今日からできることについて。痛みもなくできて、生活の中に簡単に取り入れられる乳房のチェック法と、乳房に変化を確認したときの注意点を乳がんの啓発活動を行うBC Tube編集部の乳がんの専門家がレクチャーします。

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自分の乳房の状態に日頃から関心を持ち、乳房を意識する「ブレストアウェアネス」については前回の記事にまとめています。今回は、ブレストアウェアネスの中のひとつ、月に一度実施したい「乳房セルフチェック」のやり方についてご紹介します。

見て・触って・感じる、習慣にしたい月に一度の乳房のセルフチェック

乳がんから命を守るために必要な早期発見は、日頃から乳房に意識を向けることが鍵になります。40歳以上の人は2年に一度のマンモグラフィ検診を受けることを前提に、検診にプラスして乳房のセルフチェックを習慣にしましょう。

「乳房のセルフチェックで大切なのは一回きりではなく、月に一度を目安に習慣的に行うことです。乳腺はそれ自体がゴツゴツしていてしこりと間違いやすいため、異常がないと言われた検診後に触って健康な状態の感覚を覚えておき、その状態を基準に先月と違いがないかを確認します。行う時期は、乳房の張り感が収まり一番やわらかい状態になる月経が終わった数日後が適しています。閉経後の方は自分がやりやすい日を決めて毎月行ってください。セルフチェックは生活習慣にすることが望ましいので、入浴時、着替えのついで、寝る前にベッドに仰向けになってなど、自分がやりやすいタイミングで行うようにしましょう。またマンモグラフィ検診は40歳からですが、検診年齢の前からセルフチェックを始めて、自分の乳房の変化に意識を向ける習慣を身につけておくことも大切です。特に家族の中に乳がんや卵巣がんを発症した人がいる場合は、早くからそのような習慣を身につけておくことがおすすめです」(寺田満雄先生)

乳房のセルフチェックのやり方

目で見てチェック

鏡の前に立って両腕を上げて乳房のひきつれ、くぼみ、乳頭の変化、乳房の左右差がないかを確認する。

手で触ってチェック

1.チェックする乳房側の腕を上げて、反対側の手の指で触るようにする。

2.人差し指、中指、薬指の3本の指の腹で小さな円を描きながら、乳房の右外側・右内側・左外側・左内側をまんべんなく触り違和感がないかチェックする。

3.乳頭は指の腹で触るだけでなく、乳頭を指でつまんで分泌物が出ないかチェック。

4.乳がんは進行すると脇の下のリンパ節に転移しやすいため、脇の下に腫れやしこりがないか触ってチェック。

触ってチェックするときのポイント

・皮膚をサラサラなでるだけでは変化に気づきにくいため、指の腹で皮膚を少し押し込むようにしっかり触る。

・入浴時は石鹸をつけて行うと乳房の凹凸がわかりやすい。

「セルフチェックでいつもと違う変化に気づいたら、その後の行動が大切です。忙しいから、怖いからといってそのままにしないで、すみやかに乳腺外科を受診しましょう。多分大丈夫だろうという自己判断も禁物です」(寺田満雄先生)

BC Tube編集部の動画でもチェックしてみましょう

図や動きを使って分かりやすく説明しているので、ぜひ動画でもご覧ください。

しこりがあったら乳がん!?慌てずに行動するために知っておきたいこと

セルフチェックで見つかることもあり、乳がんのサインのひとつとされる「しこり」は、1~2cm程の大きさになると指で触って自覚できると言われています。セルフチェック中に指に石のような硬い感触があったら「もしかして……」と不安になりますが、すべてのしこりが乳がんの症状なのでしょうか。

「セルフチェックで見つけたしこりのすべてが乳がんというわけではありません。しかし、しこりには良性と悪性(がん)があり、触っただけで区別するのは医師でも難しいものです。マンモグラフィなどの画像検査を行い、さらに細胞や組織を採って調べてみて初めて確定できます。年齢によって、セルフチェックで見つけたしこりが悪性である確率も変わってきます。自分で見つけたしこりが乳がんと診断される確率は、60歳以下だと10%以下と低く、多くの場合は良性です」(山下奈真先生)

年齢によって変わるのはなぜなのでしょうか。

「若い程、悪性の確率が低い理由は、しこりは乳腺にできますが、年齢が若い人ほど乳腺が発達していて触ったときに硬く感じるため、しこりだと思って検査をしたら乳線そのものの硬さだったということが多いからです」(山下奈真先生)

「また、20~40歳代では乳腺線維腺腫など等の良性のしこりもよく見られるのも一因と考えられます。乳がん以外の良性のしこりには、乳腺線維腺腫、葉状腫瘍、乳腺炎、乳腺症などが挙げられ、乳腺とは関係のない脂肪や皮膚の腫瘍をしこりと感じることもあります」(寺田満雄先生)

また「一方で乳がんと診断された人の約半数がしこりなどに自分で気づいて受診してします。しこりがあっても不安になり過ぎる必要はありませんが、自己判断で良性と決めつけてしまうのも危険です。良性のしこりでも治療が必要な場合があります。かならず医療機関で詳しい検査を受けるようにしましょう」(山下奈真先生)

動画でもチェック!

 

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Text by Ai Kitabayashi

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BC Tube編集部

BC Tube編集部

一般社団法人BC Tubeとして2020年11月に設立。メンバーは代表理事の伏見淳氏(ダナ・ファーバー癌研究所)はじめとする7名の乳腺外科医を中心に構成し、YouTubeチャンネル「乳がん大事典 BC Tube編集部」を運営。乳腺外科医が作成した動画を第三者の乳がん診療・研究に携わる医師と非医療者のレビューを経て定期的に公開し、客観的で科学的根拠のある乳がん情報の発信を行っている。



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