【医師が解説】老化や病気を防ぐ最強のアンチエイジング「50歳からの食べ方」と「生活習慣」
体や心に、少しずつ変化が現れ始める50歳からをイキイキと元気に過ごすためには、食事や生活習慣にちょっとした工夫が必要です。病気を防ぎ、老化のスピードをゆるめる方法を、アンチエイジングや機能性医学に詳しい医師、斎藤糧三先生に教えていただきました。
体づくりの基礎となる「食事」を見直そう
50歳以降を健康に若々しく過ごすために大切なのは「食事」。どんな栄養素を積極的にとるといいでしょう?
「積極的にとりたい栄養素は、たんぱく質、ビタミンB6を中心としたビタミンB群、亜鉛ですね。たんぱく質は、骨や筋肉、内臓、そして肌、髪、爪など、人間の体をつくり、維持していく上でとても重要な栄養素です。ただ、たんぱく質だけをとっても、ビタミンB群が不足している状態では、体内の代謝がスムーズに行われません。特に、たんぱく質の代謝には、ビタミンB6が関係しているため、たんぱく質と合わせて、ビタミンB6を中心としたビタミンB群をとりたいですね。また、亜鉛には細胞分裂を活発にし、免疫機能の維持やホルモンの分泌を促すほか、美しい髪や肌づくりをサポートする働きがあります。」と斎藤先生。
年齢を重ねると、食事量が全体的に少なくなり、気づかないうちに必要な栄養がとれていないことも。また、女性は赤身肉の摂取量が少なく、それに伴い、赤身肉に多く含まれる亜鉛も不足しがちに。爪に白い点が現れたら、亜鉛が不足しているサインです。
何をどれくらい食べたらいいの?
「健康維持のために厚生労働省が推奨する1日あたりの摂取量は、たんぱく質の場合、成人男性で60g、成人女性で50g。肉や魚の20%がタンパク質なので、食材の重さで考えると成人男性は300g、女性は250gを摂取するのが理想です。ビタミンB6の場合は、成人男性で1.4mg、女性で1.2mg。亜鉛は成人男性で11mg、女性で8mgですが、ビタミンB6や亜鉛が不足している人は、それぞれ30mg以上の摂取が望ましいですね。」(斎藤先生)
ビタミンB6を多く含む食品
かつお・まぐろ・牛レバー・さんま・バナナ など
ビタミンB6を多く含む食品の使用量と含有量
バナナに1本(90g)に0.34mg
マグロ赤身刺身100gに1.08mg
牛レバー100g(生)に0.89mg
さんま100g(刺身)に0.51mg
亜鉛を多く含む食品
牡蠣、赤身肉、甲殻類、うなぎ、煮干し、卵黄 など
亜鉛を多く含む食品の使用量と含有量
牡蠣100g(5粒)に13.2mg
牛肉もも(赤身)100gに4.4mg
牛ヒレ肉100gに4.2mg
豚レバー50gに3.5mg
近年注目!60歳を過ぎる頃から生成できなくなる?!不足しがちなビタミンとは?
また、太陽の光を浴びることによって皮膚で作られるビタミンD が、60歳を過ぎる頃から生成できなくなるため、ビタミンDも意識的に摂取したい栄養素と言えます。
「ビタミンDには、骨を強くする働きがあり、不足すると“骨粗鬆症”のリスクが高まります。また、近年の研究で、ビタミンDには体内で作られる抗生物質=抗菌ペプチドの分泌を調節する働きがあり、インフルエンザや新型コロナウィルス、結核などの感染症の予防や重篤化の回避に役立つことがわかりました。そのほか、過剰な免疫反応を抑制し、必要な免疫反応を促す、免疫機能の調整作用もあるため、花粉症やぜんそくなどのアレルギー、自己免疫疾患の予防にも有効。さらに、発ガンの抑制、高血圧の抑制、糖尿病・心不全・脳卒中の予防なども期待できるため、生活習慣病が気になり始める50歳以降は意識してとりたい栄養素のひとつですね。ただ、毎日の食事から必要量を摂取するのが難しいため、ビタミンD補充を目的としたサプリメントを活用するのが効率的です。最近は自宅で簡単に検査できるキットなどもあるので、ビタミンDが体内に欠乏していないかチェックしてみることもおすすめです。」(斎藤先生)
ビタミンD検査簡単検査キット
健康と若さの秘訣「睡眠」を見直そう
健康や若さを保つために、食事と共に重要なのが「睡眠」です。
「“睡眠負債”という言葉を、ご存知でしょうか? 10分、20分という、毎日の少しずつの睡眠不足が借金のように貯まっていく状態を表す言葉ですが、睡眠負債が蓄積されると、疲れがとれにくくなり、体や心に様々な悪影響を及ぼします」と斎藤先生。
睡眠負債をチェックする方法は、翌朝に予定がない休前日の夜などに、目覚ましのアラームをリセットし、朝、自然と目が覚めるまで寝て、睡眠時間を確認します。普段の睡眠時間より90分以上長く寝ていた場合は、睡眠負債が貯まっている証拠。睡眠時間を十分に確保する必要があります。
「理想的な睡眠時間は8時間です。睡眠不足は、がんのリスクを高め、乳がんに関しては、平均睡眠時間が6時間未満の人と7時間以上では、6時間未満の人のほうが1.6倍、発症率が高いという報告があります。ただ、高齢者の場合、睡眠時間が長くなりすぎると、認知症の心配が出てくるため、長くても8時間程度に留めておくのが健康の秘訣と言えます。」(斎藤先生)
実は、睡眠は、前出の栄養とも密接に関係しています。深い眠りを得るには、脳内ホルモンの“メラトニン”の分泌が必要ですが、メラトニンの原料となるのが“セロトニン”です。そして、そのセロトニンを作り出す栄養素が、たんぱく質、ビタミンB6、亜鉛なのです。
「たんぱく質、ビタミンB6、亜鉛が不足すると、セロトニンを十分に作ることができず、セロトニンの分泌量が低下します。セロトニンの分泌量とメラトニンの分泌量は関係があるので、セロトニンが不足するとメラトニンも不足し、熟睡感を得られないなどの睡眠トラブルを招きやすくなるのです。また、セロトニン自体にも、心や思考を切り替える働きがあり、ベッドに入ってから、なかなか眠れない……という人は、セロトニンが不足し、心の切り替えがスムーズにできていない可能性があります。セロトニンの分泌を高めるには栄養を見直すほか、朝、太陽の光を浴びることも有効ですよ。」(斎藤先生)
良質な眠りを得るには、就寝前の過ごし方も大事だそう。
「夕食は就寝の3時間前までに終わらせましょう。食事によって、自律神経の交感神経が活発に働き、眠りを促す副交感神経が優位になるまでに時間がかかり、眠りにくくなります。夕食以降は、覚醒作用のあるカフェインを控えることも快眠のコツ。また、睡眠は体温が下がることで促されるため、就寝前の入浴が効果的。お風呂のお湯に浸かり、体が温まると入浴後、自然と体温が下がり、眠りにつきやすくなります」(斎藤先生)
寝室の環境は、照明の灯りを文字が読めない程度に抑え、寝る前にスマホを見るのはNG。スマホの画面の光が脳に刺激を与え、眠りを妨げるので気をつけましょう。
定期的な「セルフチェック」で科学的に健康管理を!
50歳を過ぎたら「定期的なセルフチェックを行うことも、健康な体を維持し続けるためには大事」と斎藤先生。
「これまでお話してきたことを実践し、健康への意識を高めていただくことはとても大切ですが、『健康になったつもり……』でいる人も多いかもしれません。50歳からは、自分が認識している体の状態と、血液の状態に差異が生じやすくなります。生活習慣病や慢性病を予防するには、一般的な健康診断で行う血液検査よりも、もう少し詳細な検査ができる専門クリニックなどで、定期的に血液検査を行い、今の栄養状態や自律神経のバランスなどを“セルフチェック”することが重要。現状の自分の健康課題を知り、不足している栄養素を補うサプリメントを取り入れたり、食事や生活習慣を改善するなど、検査結果をもとに科学的なアプローチを行うことで、薬に頼ることのない健やかな人生を送ることができます。」
教えてくれたのは…斎藤糧三先生
日本機能性医学研究所所長。日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008年、日本機能性医学研究所を設立、副理事長に。2017年、スーパーフードとしての牧草牛の普及を目指し、日本初の牧草牛専門精肉店「Saito Farm」をオープン。著書に『サーファーに花粉症はいない』(小学舘)など。花粉症とビタミンD欠乏を関係性にいち早く注目し、ビタミンDの重要性を発信していている。ガッテン!(NHK)、林先生の初耳学!(TBS)など、テレビ出演多数。日本機能性医学研究所 www.ifmj.jp。ビタミンDのサプリメント「VD1000」の開発・販売にも携わる。
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