月経カップと月経ディスクって怖くない?台湾生理のパイオニアに聞く「生理用品の誤解と正しい使い方」

 取材場所の「性平不小室」にて
photo by Takeda Ayumi
竹田歩未
竹田歩未
2025-05-25

生理用品を選ぶ、それはわたしの身体に主権を取り戻すことーーー。そんな信念を基に台湾で”生理のパイオニア”と呼ばれ、20年以上に渡って正しい性の知識を発信し多様な生理用品を世に送り出してきたヴァネッサさんにインタビュー。様々なタイプの生理用品を試すのが好きなライターが、最近話題の月経カップ・月経ディスクについての疑問をぶつけてみました。

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月経カップ・月経ディスクはどのような仕組み?

ーーー以前、百貨店で月経カップを販売したことがあるんですが、私が出会ったお客様の中には本当に漏れないのか心配だったり、体内に入れるのに抵抗があったりという方が多くいらっしゃいました。ヴァネッサさんなら、製品の構造についてどのように説明しますか?

ヴァネッサさん:月経カップは、体内に挿入すると腟全体をぴったり塞ぎ、そこに経血がゆっくり吸い込まれる仕組みになっています。真空状態になるイメージ。なので、取り出すときには手で少し押して空気を入れ込み、真空状態を解除して取り出します。

ーーーでは、月経ディスクの構造はそれとは異なるのでしょうか?

ヴァネッサさん:はい。月経ディスクは、腟の奥の高い位置に置いて経血を受け止める仕組みです。月経カップのように真空状態になるわけではありません。私たちが販売している月経カップと月経ディスクは、どちらも医療用のシリコンを使っています。シリコンにもいろいろな種類があって、スマホケースやピアス用のものもありますが、製品に使用しているのは身体の中に入れてOKなもの。豊胸手術などにも使われるタイプの安全な医療用シリコンなんです。しかも定期的に消毒をすれば約10年使えて経済的なんですよ。

ーーーなるほど。月経ディスクを取り出すときは痛くないんですか?

ヴァネッサ:痛くないです。真空状態で引っ張られる感じもありませんよ。欠点としては、経血の量が多くて中身がいっぱいになると漏れてしまうことですね。でも実は、身体から取り出さずに溜まった経血を排出できるんです。便座に座って力むことで月経ディスクが傾いて経血が流れ出てくるように設計されていて、立ち上がるとまた元の位置に戻る。不思議でしょ? すごく面白い機能なんですよ。

これができると、女性が自分の身体をコントロールできている感覚が得られる。最近はお客様に「月経カップか月経ディスク、どっちを選べばいいの?」と聞かれたら、迷わず月経ディスクを薦めています。

※月経カップ、月経ディスクの使用方法や連続使用時間は製品によって異なる可能性があります。使用時は十分にご確認ください。

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photo by 凱娜 月経カップ(左)・月経ディスク(右)

月経ディスクを取り替えるタイミング

ーーー 一般的な月経ディスクは最長で何時間入れておけますか?

ヴァネッサさん:最長12時間連続で使えます。

ーーーそうなんですね。では、例えば朝8時に入れて、夜8時に取り出すイメージですね。

ヴァネッサさん:そうです。よく「残業で遅くなるので、夜8時になってもまだ帰宅していない」という話を耳にしますけど「それは働きすぎ!」と答えます(笑)。

ーーーあはは!では、12時間使った後、一度取り出して経血を捨てて、また入れてもいいんですか?

ヴァネッサさん:もちろん、洗ってから再度入れてOKです。

ーーー今まで12時間使った後はしばらく入れてはいけないと勘違いしていました。

ヴァネッサさん:いいえ、問題ないですよ。私は昔はタンポンユーザーでしたが、ディスクを使い始めてからは一度もタンポンを使っていません。もしお客様全員が月経ディスクを使い始めたら、他の製品が売れなくなって会社も潰れるかもしれません(笑)。

あとはこんな使い方もできます。生理が始まりそうなタイミングでディスクを入れておけば、突然生理が来てショーツが汚れるのを防止できます。

ーーー実際に生理が来ていなくても、先に入れておいても問題ないんですね。

ヴァネッサさん:はい。女性は身体の変化に敏感だからそろそろ生理が始まりそうなタイミングがわかるんですよね。肌が荒れたり、胸が張ったりとか、身体にサインが現れるので、事前に準備しやすいんです。

※月経カップ、月経ディスクの使用方法や連続使用時間は製品によって異なる可能性があります。使用時は十分にご確認ください。

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ライター私物のフルムーンディスク(フルムーンガールより発売)/photo by Takeda Ayumi

アジア女性向けの月経カップを開発

ーーーヴァネッサさんは台湾のブランドとして初めて月経カップを開発されましたが、アジア人向けに設計する上でどのようなアイデアを盛り込みましたか?

ヴァネッサさん:まず第一に、見た目を美しく作ることを意識しました。私たちの月経カップは、折りたたむとスズランの花のように見えるように設計されています。洗って、折り畳んで、入れる。そして身体の中で花が咲くようなイメージ。

さらに身体に入れるのが怖くない見た目が文化的に重要だと考えました。実際に柔らかくなかったとしても、柔らかそうに見えることがとても大事。以前、海外製の月経カップを輸入しようとしたことがあるんですが、硬かったり縁がゴツゴツしていたり、全体的にサイズが大きい。でも現地のユーザーはタンポンに慣れているから硬くても気にならないんです。

ーーー確かにゴツゴツした月経カップって少し怖い印象があります。

ヴァネッサさん:そうですよね。日本も台湾でも同じなのですが、欧米製品をそのまま持ってきてもあまり受け入れられないでしょう。アジア女性の価値観に合わせて製品の設計をローカライズすることは常に意識していますね。

板橋
取材場所:台湾・板橋にある「性平不小室(All Gender NeST Room)」。この地域を管轄する新北市政府がジェンダー平等教育の拠点施設としている場所で、凱娜の商品も多数展示している。/photo by 凱娜

プロフィール:ヴァネッサ(凡妮莎)さん

2004年から約20年にわたり生理用品に関する知識を女性たちに広める。台湾で初めて月経カップ「月釀杯(フルムーンガール)」及び月経ディスク「月釀碟片(フルムーンディスク)」のクラウドファンディングを行った発起人。台湾の女性たちが抱える問題は、市場に新しい生理用品が出ているかどうかではなく「自分に選択権がある」という意識が根本的に欠けている点だと考え、現在も精力的に性教育活動を行っている。愛称は「台湾生理のパイオニア」。

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