【インタビュー】女性に月経の選択肢を！台湾吸水ショーツ「ムーンパンツ」ユアンさんに聞く開発秘話

全く新しい「吸水ショーツ」という挑戦

ーームーンパンツの開発にあたり、どんな困難に直面しましたか？

ユアン・イーさん：ムーンパンツの開発が決定してから、約7年を費やしました。ムーンパンツを販売する「谷慕慕®️ GoMoond®️」はわたしともう１名（フィオナさん）が共同で立ち上げた会社なのですが、2人とも元々新しい生理用品を試すのが好きだったんです。わたしは2006年からタンポンを使っていて、2008年には月経カップを使い始めました。ということは、2017年にムーンパンツが誕生した時点ですでに10年近くナプキン生活から離れていたんです。なので開発当初はナプキンユーザーの感覚を取り戻すことを意識しました。

ドラッグストアを訪れ、商品棚に並ぶナプキンの山を目にした時は衝撃で。その時はまるでナプキンの選び方を知らない男性になった気分。そこで感じたのは、パッケージのわかりづらさ。一目では違いがわかりづらい。ナプキンのみを使って過ごしているマジョリティの感覚に立ち返った瞬間です。

前例がない商品を作る難しさ

ユアン・イーさん：ムーンパンツ立ち上げの数年間は、少しずつステップを重ねていきました。まず、工場の方とのコミュニケーションに苦戦しました。わたしたちが作りたいのは吸水機能付きのショーツ。ですが工場の方には、すでに市場に出回っている所謂「サニタリーショーツ」を作りたいと誤解されてしまいました。前例がない商品だから、何を作りたいのかを正確に伝えることさえ難しかった。

その後、外国製の吸水ショーツを試しましたが、欧米メーカーのものは蒸し暑い台湾で履くのには適していないと気づきました。それに欧米人の体型に合わせた設計だから、わたしたち東アジア人の腰幅やお尻の幅にフィットしづらい。具体的には、太ももの付け根はぴったりだけどヒップ周りは緩すぎるとか。そうやって模索しながら、商品の方向性を明確にしていきました。

工場とすり合わせをしていく上でも気づきがありました。わたしは工業デザインを経験したことがあるので、イラストならスムーズに伝えられると思っていました。でも工場の方からすると、紙や布で作った模型を使って立体的に説明する方が良いそうです。要望の伝え方一つとっても違いがあることを実感しました。デザインと広告分野でそれぞれ経験を積んできた創業メンバーの2人にとって、物事の考え方も、コミュニケーションの方法もこれまでとは違う。全く0からのスタートでした。

一般的なショーツでは考えられない精密設計

ユアン・イーさん：当時、工場の方に「まるで飛行機の設計のような精密さでショーツを作るんですね！」と言われたことがあります。というのも、わたしが以前工業デザインをしていた頃は、扇風機、文房具、家電、のような生活用品を対象にしていました。規格が比較的細かいミリ単位の設計に慣れていたんです。それとは違って衣服のような身に着けるものを製造する場合、実際には1-2cmの誤差が出ることがあります。

ムーンパンツの場合は、腰回りは±1cmの誤差しか許されない。他の部分は±0.5cmの誤差まで。非常に精確な寸法で作っています。なので一般的なショーツを生産する工場の方からすると厳しすぎると感じたのでしょう。商品の設計過程で印象的だったことの一つです。

ここ数年間、ありがたいことに多くの工場が製造を取り持ってくれました。繊維工場、加工工場、皆さんからさまざまな知識や提案をいただきながら、少しずつ形のあるものに仕上げていきました。