月経は不快なもの・恥ずかしいもの？台湾の取り組みに学ぶ「子どもの月経教育」

身体への意識を根本から変える「使命感」

ーー生理用品業界の第一線で活動することについて責任感や使命感はありますか？

ユアン・イーさん：今台湾では多くの学校で多様な生理用品を広めてくださっているようで、わたしたちも実際に関わっています。学校側からわたしたちに教育を行ってほしいとの要望もありますし、商品を寄付してもらいたいといったお話もあります。教科書にも徐々に新しい生理用品が記載され始めています。台湾の次世代の子どもたちがいろいろな生理用品に触れる機会を増やし、豊富な選択肢の中から自分に合うものを選べる環境を作りたいです。

活動の中で、多くの人が自分の身体に対する理解が不十分であることが明らかになってきました。実際に、タンポンや月経カップなどの挿入系の生理用品について「使用中におしっこに行きたくなったらどうするの？」と質問されたことがあります。挿入する場所と尿道は違う部分なので、構造上実際は問題ないのですが。

このことから、みなさんの身体の構造に対する理解度が浮かび上がってきました。だから、基礎的な部分から身体の構造を説明する必要があると感じました。そういった面でも非常に大きな使命感を感じています。

子どもも楽しめる月経教育

2022年、谷慕慕®️ GoMoond®️から『來去子宮！青春期初經寶典：從零開始跟月經相處』という本を発売しました。身体の構造や月経について学べる内容です。台湾の漫画家とコラボしているんですよ。最初はクラウドファンディングからスタートしたのですが、期間中、1冊購入される毎に1冊（書籍＋マグネット教材）を、台湾の約1,200箇所の小中学校に提供しました。実は、日本版の発売も予定しています。お楽しみに！（発売日等は未定）

本の表紙には、ペンギンをモチーフにした可愛らしいキャラクターが描かれています。ペンギンの濃い紫色の部分は、クリトリスの全容を表しています。表紙のイラストは子どもの段階。そして、本の中には成長して大人になったクリトリスのキャラクターが描かれています。（成長後のクリトリスのキャラクターが並んでいるページを開きながら）こんな風に一人ひとりデザインの異なる衣装を着せることで、外陰部や陰毛の様子が人それぞれであることを表しています。それぞれ色やカタチが違うし、左右対称な人もいればそうでない人もいる。イラストを通して、子どもたちに直感的な方法で「身体は一人ひとり違うこと」を感じてもらいたいです。

キャラクター化することで、子どもたちに興味を持ってもらいやすくなりますし、同時に保護者は「お腹の部分は尿道口、ここは膣口で、外側は大陰唇、こっちがクリトリスね。」というように自然な形で子どもたちに必要な知識を教えることができます。

幼いころから必要な知識に触れていれば、大人の身体に近づいていくタイミングで、頭の中が疑問だらけで誰に質問するべきかわからない、なんてことは起こりにくいでしょう。なので、まずは子どもたちに本をきっかけにして基本的な身体の構造を伝え、その次に「月経とはどういう状態なのか」を理解してもらえればと思います。経血自体は臭わないといった基本的な知識も含めて。予め知識があれば、月経の過ごし方は一通りではないと認識しやすくもなります。

正しい知識を伝えるという点で、わたしたちは商品を売る立場である以上に責任を感じています。現状ではムーンパンツの販売で得たリソースや資金を月経教育に回していますが、すごく有意義な事だと考えています。道のりは長く、コストがかかることは間違いないですが、あらゆる方法を通して自分の月経と上手く付き合う体験を提供していきたいです。