【生理中の選択肢を増やしたい…】3児の母でもある開発者に聞く、使い捨て「月経ディスク」誕生秘話

なぜ今「使い捨て」月経ディスク？

ーーー向井さんが販売されている月経ディスク「MOLARA（モララ）」は使い捨ての商品ですよね。ゴミの削減が叫ばれている中、なぜ使い捨てにされたのでしょうか？

向井さん：そもそもわたし自身がめんどくさがりで。洗って繰り返し使える月経カップや月経ディスクが手間に感じてしまうんですよ。衛生的に使い続けるためには煮沸消毒が必要だし、月経カップの場合、経血が溜まったらトイレで出し入れしなければいけない。手が汚れるし便器に落としてしまう心配もあるので、外出先や旅行中となるとさらに大変ですよね。でも月経ディスクは、装着しながら経血だけをトイレに排出できるというメリットがあるんですよ。そういう意味でも、使い捨ての月経ディスクは女性が快適に過ごせる新しい選択肢として受け入れられやすいと考えました。普段は繰り返し使える月経カップだけど外泊中は使い捨ての月経ディスクを、といったように使い分けるのもいいですね。

数字で見ると、一般的な生理用ナプキンは90%がプラスチックでできていて、かつ交換頻度が高いのでゴミも多くなります。一方で月経ディスクは交換頻度が少なく素材もシンプル。なので、使い捨て設計にしたとしても、ナプキンを使う場合に比べて60%以上もプラスチックを削減できるんです。

ーーー従来の製品のいいとこどりなんですね。

向井さん：そうなんです。荷物を減らしたい旅行時にも使えるし、災害時の備えとして備蓄してくれてる方もいますね。ナプキンだと何枚支給されるのか、大きさや種類もわからない。一方、繰り返し使うタイプは使う度に洗浄が必要で、被災地の共同生活の中で清潔な水を用意するのは難しい。でも、使い捨ての月経ディスクならビニール手袋をはめて出し入れできるので、手を汚さずに済む。それに1日に使う枚数が決まっていて必要な数を予想しやすいのも便利。

ーーーなるほど。それは重宝しそうです。向井さん自身、月経ディスクを使い始めてから生理中の過ごし方はどのように変化しましたか？

向井さん：生理じゃない日みたいになります。子供とお風呂に入る時も、ディスクを付けたまま入浴すれば入浴後に急いで服を着ないでもいい。そういった日常の些細な煩わしさが無くなるのは月経ディスクのメリットだと感じます。他にも、月経ディスクを付けたままプールや温泉にも入れるし、我慢しなければいけないことが減る。生理中に出来ることの範囲が広がりました。

生理中の「匂い」に悩み…辿り着いた月経ディスク

ーーー３児の母である向井さん。お嬢様が成長した時に、月経ディスクを手に取りやすい世の中にしたいそうですが、その根底にはどのような想いがあるのでしょうか。

向井さん：わたしは月経ディスクに出会うまでずっとナプキンユーザーだったんです。その時に1番ストレスを感じていたのが臭い。トイレ行くたびに臭うし、暑い時期は特に。生理中は嫌な匂いがするから、生理=汚いものと認識してしまっていました。それが原因で、他人と生理の話をするのも抵抗があったし。過去には臭いがマシになるかなと思ってタンポンや月経カップを試したこともありますが、肌に合わなかった。タンポンはヒリヒリするし、月経カップは洗うのが手間でした。

その後２人目の子どもが生まれた頃に、オーガニック製品が好きな旦那にその話をしました。すると後日、無農薬・無漂白のオーガニックナプキンを買ってきてくれたんです。使ってみると臭わなかった。あの嫌な臭いが経血の匂いではなかったことが衝撃的で。 長年我慢してたのに生理用品を変えるだけでここまで改善されることに感動しました。

そこから、ナプキンを使った時に発生する不快な臭いの原因を調べたんです。すると、ナプキン自体に身体に良くないものが使われていることがわかったんです。

ーーーナプキンの化学物質ですね。

向井さん：そうです。製造過程でいろんな化学物質が使われていて、それが経血と混ざり、空気に触れることで酸化し、臭いが発生するそうです。そういった製品は吸収力が高く便利な面もありますが、身体に必要な水分まで吸収して乾燥の原因になることもあるみたいです。そういうものが女性の大事な部分に触れていたと思うと恐ろしく感じました。

今の子どもは初経が来るのが早いし、幼いうちからちゃんと質の良いものを使わせてあげたいなと思っています。とはいえ、市販の使い捨てナプキンはやっぱり手に入りやすいし、緊急時には便利なので、世の中から無くなって欲しいわけでは無いんです。身体に合うかどうかは個人差がありますし。ただ、選択肢があることを知っておくだけでも心理的に楽になるのではないでしょうか。