「体験を語る機会や学ぶ場所がない」生理をテーマにしたイベントで見えた、女性たちが抱える問題
「生理をフラットに捉えられる世の中に」という想いをもとに、天然の竹素材を採用したパンティライナーやサニタリーパッドを展開するブランド「limerime(ライムライム)」代表・須藤さんインタビュー。ライターも実際に商品を試してみましたが、適度な厚みと抜群のやわらかさで、着けていることを忘れるような肌ざわりでした。今回は須藤さんに、生理を語ること自体がタブー視される風潮のなか、生理の歴史をテーマにしたリアルイベントを開催した背景や、来場者の声についてお伺いしました。
「生理」と口にするのは勇気がいる?
ーーーサニタリーブランドを展開するにあたって、周囲の反応から生理へのタブー視を感じることはありますか?
須藤さん:そうですね。ダイレクトな言い方ではなくても、隔たりを感じることは確かにあります。わたしたちはスタートアップ企業なので、資金調達の過程などで様々な方と接する場面が多いですが、相手の性別に関わらずこの領域に取り組むことに対してフラットな視点では見られにくいと常々感じています。もちろん、少しずついい方向に変化してきているとは思いますが。
生理の歴史をテーマにしたリアルイベントを開催
ポップアップ「limerimeと辿る生理の歴史」とは
国際女性デー期間の3月4日(月) ~3月10日(日)に合わせて開催された「limerimeと辿る生理の歴史」は、サニタリーブランド「limerime」とセレクトブティック「sister(シスター)」がコラボ企画したポップアップ。歴史社会学者の田中ひかる氏監修の元、展示内容は太古の昔から女性の性や生理にフォーカスしたものになっており、学校では学べない生理の歴史に触れられるイベントとして開催されました。
ーーー生理に関するイベントを開催した際、展示内容に関して何か規制はありましたか。
須藤さん:今回わたしたちの展示はプロダクトにフォーカスしたものではなく生理の歴史を中心に展示したこともあり規制は特になかったです。加えて、ジェンダーに関することや広告の見せ方、なぜこの分野がタブー視されているのかなどを考えられる空間に仕上げました。むしろ、渋谷の人通りの多い場所でガラス張りの建物に大きく「生理」と掲示するイベントが実現できたことは大きな前進であると感じています。
辛いのに共感されない…女性同士でも分かり合えない生理
ーーー来場された方の反応はいかがでしたか。
須藤さん:生理について考えるきっかけになった、もっと早く知りたかったとのポジティブな反響をいただきました。男性からは、これまでどうやって生理中の女性に声をかけたらいいのかわからなかったけれど、知識を得たことで今後のコミュニケーションのヒントになったという声も。また、女性からの反響も興味深かったです。女性同士でも生理の症状は一人ひとり違うし、出産経験がある人とない人とでは知識の差もある。それによって意見の食い違いが起こりうるんですよね。例えば上司と部下の関係で、一方は生理痛があまり酷くない場合、相手がなぜそこまで痛がっているのかわからない。ですが、もし基本的な知識が備わっていればお互いの状況が理解しやすいし、場合によっては産婦人科に行くべきと声をかけられる。なので、やはりベーシックな知識は万人にとって必要なものだと考えています。
お年寄りの女性も来場。秘めていた想いを語る場に
須藤さん:今回は事前に新聞でイベントの告知をしていたこともあり、記事を見てくださった70、80代のおばあちゃん世代の方たちがわざわざ渋谷パルコまで足を運んでくださりました。中には、80年代の生理用品の広告制作に携わっていた方や、日本初の使い捨てナプキン「アンネナプキン」の現物を持ってきてくださった方も。実際にお話を伺うと、今まで生理について話すことは憚られたので、自分の体験や想いを語る場所が無かったことや、病院に行くほどの症状だったとしても、それ自体を認識できていなかったことなど、リアルな想いを語っていただきました。
ーーー色々な立場の方と意見交換ができるイベント、素敵ですね。
須藤さん:ありがとうございます。今回の展示以外でもポップアップや販売の機会をいただくことがあるのですが、ご来場者の皆さんが長時間滞在して自身の体験や悩みを話してくださるんです。これまで話す機会がなかっただけで、実はそれぞれ心の奥に秘めていたことがある。こういうトピックを誰かとシェアし合える場はすごく求められているのだろうなと感じました。
ーーー幅広い年代の方が来てくださるのはリアルイベントならではかもしれませんね。
須藤さん:はい、そういう意味でもオフラインで開催することに意義があると考えています。今回のイベントはポップアップ形式だったんですが、ゆくゆくは常設展として展開できたらいいな。
ーーー素敵ですね。他にはどういった発信活動や啓蒙活動に取り組んでいきたいですか。
須藤さん:現在、ブランドとして学校教育の場にも携わらせていただいています。そこで挙げられる問題点が、教える側の大人の方が知識が少ないこと。なので、子どもたちだけでなく大人自身の知識のアップデートも必要だと感じています。そこで、今年からは大人向けに企業や団体で月経教育や女性の心と身体の健康について学べるセミナーを積極的に開催しています。
須藤紫音さん プロフィール
株式会社VVV代表取締役。複数の外資系アパレルブランドにて、マーケティング・ブランディング業務に携わり、出産を機に独立。2023年に竹の繊維を表面素材として使用した、からだにも環境にも優しいサニタリーブランド「limerime」をローンチ。商品開発・運営を行う。
AUTHOR
竹田歩未
ライター/中国語翻訳。大学在学中に場所や時間に縛られない働き方に興味を持つ。卒業後の2022年〜ライターとして活動しながら念願の台湾留学を実現。Instagram「フェムテクラブ|フェムテック・フェムケアグッズ」を運営。SNS:Ayumi Takeda @ayumin_tkd フェムテクラブ @femteclub
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