「吸水量30ml」の意味とは?日本初の国産吸水ショーツPeriod.が考えるダイバーシティ
フェムテックという言葉が日本でも一般に知られるようになって数年が経ちます。日本初となった国産吸水ショーツブランド「Period.」は、2019年のローンチ以来着実にファンを増やし続けています。
インタビュー前編に続き、後編となる今回は、Period.のデザインやこだわりに込められた思いを伺いました。
Period.をきっかけに自分の体を知り、婦人科に行くきっかけになって欲しい
――寺尾さんが3年前に起業して以降、国内・海外問わずたくさんの吸水ショーツブランドが登場しています。あらためて「Period.」の特徴はなんですか?
寺尾さん:まずはデザインです。「Period.」のショーツはシンプルでおしゃれなデザイン、色は基本的に黒と決めています。それは、いわゆる「サニタリーショーツ」のかわいらしすぎるデザインと一線を画したいから。シンプルな黒なら手持ちのブラジャーとも揃えやすいですしね。
また、私は「生理の日と普通の日にショーツを変える」という慣習もなくしたいと思っていて。女性って、実は生理の期間以外にも「何か出ている」ことが多いんです。おりものもあるし、軽い尿失禁に悩んでいる人もいます。「Period.」は、生理期間だけでなくいつでも履けて、すべての日を快適に過ごせるショーツを目指しているので、そのためにもデザインを極力シンプルにしています。
――そのシンプルさはオフィシャルサイトやパッケージのデザインにも表現されていますよね?
寺尾さん:そうですね。モデルが着用した写真では、なるべく日本人の平均サイズの方を選ぶようにしています。そして、顔は写していません。その方が、購入を検討している方がイメージが湧きやすいかな、と思って。パッケージなどのデザインもなるべくシンプルに、ぱっと見では吸水ショーツとわからないようにしています。
――オフィシャルサイトやロゴ、パッケージなどのクリエイティブは、アートディレクターの村口麻衣さんが担当しています。
村口さん:ロゴマークは、実は「雫」と「円」で構成されているんです。
1)℃(体温)という意味合いからのインスピレーション
2)一ヶ月の中で1/4は生理中(=雫)、3/4は通常の生活(生理ではない期間=円が3/4)
という意味合いも実はこっそり隠されています。
パッケージのデザインもこだわっていて、例えば「吸水ショーツ」ということを知らなかったとしても素敵なパッケージだから手に取ってみたい!と思ってもらえるようなデザインにしました。また、過度な装飾や意匠をしないこともこだわりのひとつで、いわゆる「生理用品と言えば、こういうデザイン・こういう雰囲気だよね」とイメージされやすいものがあると思いますが、それらを超えて、ユーザーを限定しないデザインを目指しています。
――ビジュアルもとても素敵です。
村口さん:これもまた、「フェムテック商品と言えば」というクリエイティブへの既存のイメージを超えたい、という思いが強いですね。Ayakaさんの「唯一無二のブランドとして表現したい」という思いに私も共感して、出来上がったのがこれらのビジュアルになります。
――最近の傾向だと、多くのブランドが他ブランドと差別化するのに「吸水量」を競っているイメージがあります。
寺尾さん:そうですね。「Period.」のショーツは、吸水量が20ml〜30mlです。これに関して、他のブランドのショーツよりは少し吸水量が少ないのでは、と思われる人もいるかもしれません。でもこの数量に定めているのには、深い理由があるんです。一般的に女性の正常な月経量は、一周期あたり20~140mlで日数は3日~7日と言われています。ショーツを履いて漏れてしまうという人は(横漏れではなく、真下から)「過多月経」の可能性があるので、婦人科の受診をおすすめしています。
つまり「Period.」のショーツを履くことで、自分の生理について知るきっかけに繋がります。
――なるほど! 自分の生理が多いのか少ないのかって、数字を聞いただけではピンとこないし、人と比べることもできないですもんね。「Period.」を履くことで自分の生理について知ることができるのはすごくいいですね!
寺尾さん:やはりフェムテック商品を出している以上、ただモノが売れればいいということではなく、女性の健康維持に貢献しなくてはいけないと思っています。
ちなみに、ブランド名の「Period.(ピリオド)」は、英語で「生理」という意味。直球ですが(笑)。これまでの日本では「生理」という言葉を多くの人の前で使うのがためらわれ、その代わりに「あの日」とか「ブルーデイ」などと濁すように言ってきました。これからは「生理」や「ピリオド」という言葉を当たり前に使えるようになって、吸水ショーツを含むフェムテックグッズ全般についても、気軽に友達同士と情報交換できたり知識を得たりすることができるようになればいいなと思っています。
――もう1点お聞きしたいことがあって。「Period.」のオフィシャルサイトで、「Period.では『私たち』や『女性』という言葉を使うのを避けるようにしている」とあります。そこには寺尾さんのどんな思いが込められているのですか?
寺尾さん:起業の際、ジェンダーやセクシュアリティについて考えた時、「Period.」のショーツは「女性向け」と絞ることはしたくないな、と思ったんです。どういう人がどう使うかはユーザーが決めることであって、企業側が限定することではないだろうと。さらに言うとこのショーツを「生理のある人」だけに限定するのも違うな、と。
というのも、ある時ポップアップで私が店頭に立っていた時、80代の女性が声をかけてきたんです。「私はもう生理はないんだけど、尿漏れ対策に便利そうね」とおっしゃって、その方はご自分の分とお孫さんの分を買っていかれました。他にも「キャンプの時、これまでは下着まで汗でびっしょり濡れてすごく不快だったんだけど、Period.のショーツを履いてたらずっと快適だった」という声をいただいたこともあります。
そのように、弊社のショーツの使い方は使う人に自由に決めていただければ、と思っています。
――最後に寺尾さんが今後目指しているものはありますか?
寺尾さん:日本の女性の健康って、まだまだ国の保障が足りないように思うんです。会社で受けられる健康診断が男性基準の内容だったりすることも多く、婦人科検診を身近に感じていない人も多いと思います。そんな中で「異変に気づいて婦人科に行った時にはもう遅かった」なんて声も残念ながらよく聞きます。
「Period.」としてはショーツを軸として、女性が生まれてから死ぬまでの人生を伴走していける企業でありたいと思っています。例えば、【「Period.」のショーツを履いたら漏れた→婦人科に行く→原因がわかり治療を受けられた】。このように、そっとそばにいて女性の健康維持に携わっていける存在になれるといいですよね。
他には、障害がある人の向けた吸水ショーツの開発や、生理の貧困への取り組みなども考えています。もっと頑張ってブランドを大きくして、ひとつひとつ取り組んでいきたいですね。
プロフィール
1994年生まれ。東京都出身。Period.ファウンダー。2016年に新卒入社した会社でクリエイティブコンサルタントとして従事した後、広報を経験。在職中に海外の吸水ショーツと出会い、2019年日本初の国産吸水ショーツブランドPeriod.を創業。
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ヨガジャーナルオンライン編集部
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