台湾の「生理は恥ずかしい」を変えた、タブーに挑んだヴァネッサさん20年間の軌跡【インタビュー】
彼女たちの立場で作るから沢山応援してもらえる
ーーー月経カップや月経ディスクはクラウドファンディングを経て販売したとのことですが、多くの女性たちが支援してくれたのはなぜだとお考えですか?
ヴァネッサさん:まず、台湾の生理用品に関する文化的背景が他のアジア諸国ほど保守的ではなかったことが挙げられます。月経カップのクラウドファンディングは2015年に実施しましたが、支援額は1000万台湾ドルを上回ることができました。
その後、2022年には月経ディスクのクラウドファンディングを実施しました。私の予想は1500万台湾ドルぐらいだったのですが、蓋を開けてみると支援額は2000万台湾ドルを超え、16,833個を販売。この結果は、月経カップのクラウドファンディングから7年が過ぎ、台湾の社会が多様な生理用品を使うことに対してオープンになったことを示しています。
そしてもう一つの理由は、生理に関する活動を20年以上続けていく中で、信頼関係を築いてきたコアファンがいることです。彼女たちは、製品が自分たちの立場で開発されていることを理解して、応援してくれている。本当にありがたいことです。
ーーー素晴らしい信頼関係ですね。集めたお金は他にどのように使われているのですか?
製品を届ける以外に性教育の活動にも使われています。「性平不小室*(All Gender NeST Room)」の施設内に、世界中から生理用品や性教育関連の製品や資料を集めた生理用品博物館をつくりました。これだけのスペースを完成させるにはかなりの費用がかかっていて、クラファンで集めたお金が活用されています。なのでお客様には真正面から集めたお金はきちんと有効利用するのでサポートしてほしいと伝えています。お金がなくて困っているから恵んでください、と哀願するのではなくね。
ーーー多種多様な製品が揃っていてどれも美しいですね。
*台湾の板橋という場所にある施設。この地域を管轄する新北市政府がジェンダー平等教育の拠点施設としている。
他にも施設内には、子どもが自由に遊べるプレイスペースを併設しています。親が別の場所で性教育講座を受けている間に子どもはこのスペースで遊べるので、お互いに思い思いの時間を過ごせます。もちろん、遊具は性教育をテーマにしており、遊びながら自然に学べます。
生理用品を暗号資産で購入?ヴァネッサさんが目指す世界
ーーーヴァネッサさんの次の目標は何でしょうか?
ヴァネッサさん:暗号資産での支払い方法を導入して生理用品を販売したいです。
ーーーそれはキャッシュレス決済とは異なるんでしょうか?
ヴァネッサさん:はい。暗号資産は「国の垣根を越えて使えるお金」です。例えば、日本人が台湾に遊びに来る際、現地通貨である台湾ドルへの両替をしますよね?台湾での支払いに日本円が使えないから。つまり、一般的な通貨は国を跨ぐと使えなくなる。でも暗号資産なら両替をせずにやり取りできるんです。
ーーー暗号資産での支払いを導入するメリットはなんですか?
ヴァネッサさん:一番大きなメリットは商品を迅速に届けることができること。戦争や災害が起きた地域に生理用品のストックを届けたいときも、国際送金の待ち時間を省いて即座に支払い・発送ができる。これは生理用品ブランドとして、世界初の取り組みとなるでしょう。
プロフィール:ヴァネッサ(凡妮莎)さん
2004年から約20年にわたり生理用品に関する知識を女性たちに広める。台湾で初めて月経カップ「月釀杯(フルムーンガール)」及び月経ディスク「月釀碟片(フルムーンディスク)」のクラウドファンディングを行った発起人。台湾の女性たちが抱える問題は、市場に新しい生理用品が出ているかどうかではなく「自分に選択権がある」という意識が根本的に欠けている点だと考え、現在も精力的に性教育活動を行っている。愛称は「台湾生理のパイオニア」。
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