30歳まで恋愛経験がなかった女性が複数恋愛に没頭…極端な行動の背景にある繊細さとは

 30歳まで恋愛経験がなかった女性が複数恋愛に没頭…極端な行動の背景にある繊細さとは
Adobe Stock
広告

「恋をしたい」けど「誰でもいいから付き合いたい」にはならない不器用さ

大学生の頃は、誰か特定の恋人がいなくても、同性異性問わず友達と過ごしていればよかったものの、卒業して社会人になってからは、誰とも付き合ったことがないということがコンプレックスになりました。でも、そんな自分を知られるのは恥ずかしい。もし、誰とも付き合ったことがないことを誰かに指摘されたらきっと傷つく。だから、まるで誰かとつきあっていたかのように話すことにだんだんと慣れていったのだそうです。30歳くらいになると、もうすっかりだれかと付き合っていた体で話すことも板について、恋愛についても訳知り顔で話せるようになったそうです。

実は、これ!私もやっていました。可愛い容姿でない自分は評価されないし、誰も誘ってなんかくれない。その上、誰ともつきあったことがないと人に言って驚かれるのも面倒。だったら、つきあったことがあるふりをした方が、二重に傷つかなくて済みますからね~。

「そんなことしてる間に、誰とでもいいからつきあっちゃえばいいじゃん」とか言われそうですが、それができない理由は、かくれ繊細さんは頭で考えすぎることにあります。

脳内で想像の男女交際リハーサルをするんですね。誰でもすると思いますが、かくれ繊細さんの脳内リハーサルは緻密かつハイクオリティかつ高速、鮮明。自分でも「まるで目の前で起こったことなんじゃないか」と見まがうほどの4kレベルのイメージが脳内で瞬間的に展開していく人たちだと思って頂けるとわかりやすいんじゃないかと思います。

その脳内リハーサルで、容姿を磨くとか、とにかく誘ってみるとか、自分から声をかけるとか、そういう建設的な恋愛経験を積む方向に行動を向かわせるのではなく、先に恋愛の場面なんかを想像するんですね。脳内リハーサルは、恥ずかしい場面にくると終わりにしてしまうので、「ああ、やっぱりそんなことできない」と、結局やらずに延期してしまいます。現実に行動するなんてもってのほか。生々しく鮮明なイメージ力によって、自分がうまくできない場面をリハーサルでイメージしてしまうと、あまりの恥ずかしさに、そのことを現実に移すことなくお蔵入りさせてしまうんです。「もうそれは終わり!」とバシャンと閉じるんです。で、現実には行動しないのです。

でもここで、かくれ繊細さんではない人なら、例えば「誰とでもいいからつきあっちゃう」をやろうとします。でもかくれ繊細さんは、それを脳内でぐるっと想像したときに「え、でも、その人がすごい気持ち悪い人だったら触れないよね」「キスとか迫られたらいやだよね」「好きになれないかもしれない」とか、先々のことを考えます。その先々のことを考えるという機能が、先の、先の、先の、先まで及んでしまうため、「うう…だったら、誰とでもいいから付き合うとか、無理だわ」と、元から崩れ去ってしまうのです。

このように、延期し続けて現実を変えないまま何か月も、何年も経過してしまいます。すると、今度は「自分がなにもしていない」ということに嫌気がさします。悪循環していくのですね。せっかくの緻密で高速で4k並みのイメージ力が宝の持ち腐れです。

(私がもし、今のかくれ繊細さんに関する知識やケアスキルを持ったまま高校時代にもどれるなら、この脳内リハーサルでやめてしまわずに、現実の行動に移します。脳内リハーサルは、無駄ではないけど、未知の体験や恋愛においては、臆病になり現実に怖気づくばかりだと、今では判っているからです)

相手を気遣い忖度してしまう自分と真逆のタイプの男性に惹かれて

Rさんの話に戻ります。

Rさんに「初めての彼氏」ができます。その人は、少し年上の男性でした。Rさんは30歳になっていました。

相手の方は、堂々とした人だったそうです。迷いのない態度がかっこよくて、現実以上にその方はイケメンに見えていたそうです。

ちなみに、かくれ繊細さんは「自信たっぷりで揺らがない人」にすごく魅力を感じるということを覚えていただけていたらと思います。自分に自信が持てないので、真逆に憧れるんです。

Rさんのおつきあいのきっかけは、Rさんから男性に聞いたそうです。

「『今日、持ち帰ってください』って言いましょうか?」と。そのときの男性の返答がこれ。

「君がそう言わなかったら、おれ、怒ってたよ」

一緒にご飯食べたりお酒飲んだ帰りって、大概、迷うじゃないですか?「誘ってもいいのかな」「いや、今日はまだタイミングが悪い気がする」「いやでも、相手は別に嫌がっていないしな」などなど(笑)。Rさんは、"今日"を逃したくなかったんでしょうね。思い切って自分から言ったんですね。ありませんか?そういうこと。

相手の男性は、自ら誘わなかったにも関わらず堂々とした返答をしていらっしゃいますよね。これはほれぼれとしてしまいそう。

自分のリアクションの引き出しにはないセリフを男性の口から聞くと、しびれます。そこからかくれ繊細さんは特に、他人が言ったしびれるセリフに強く共鳴してしまいやすいので、のめり込んでいくんですよね(笑)。私も夢中になった男性はこういう自分にはない語彙を使うタイプだったことに思い当たりました。

人生初の男女交際は約5年ほど続いたのだそうです。そして、男性の転勤によって終わりを迎えました。もともと、彼が「結婚はしない」と言い切っていたため、Rさんも結婚には気持ちが向かなかったそうです。

かくれ繊細さんは身も心ものめり込んでしまいやすいためか、最初に付き合った人に全部持って行かれてしまいます。体の関係を持つことに夢中になってしまいますし、試したい欲も強いので、自分を使ってどこまで可能なのか、どんな可能性があるのかを試したくなるのかもしれません。好奇心を満たす相手がいて、その相手は自分の好奇心を喜んでくれるものですから、さらにのめり込むことになる。男性は、自分の言いなりになり、求めれば多少アブノーマルであったとしても応じてくれる女性を求めるのではないかと思うのですが、初めて男性と付き合ったかくれ繊細さんは(多少乱暴な言い方かもしれませんが)そうなると思います。なぜなら、人が喜ぶ顔こそが、自分の存在意義だからです。それがましてや初めて付き合った男性だったとしたら、これまでの人生で、かわいい女の子たちの影で空気のように扱われた屈辱感も相まって、全部を注ぎ込んでしまうということなのかもしれません。

広告

AUTHOR

時田ひさ子

時田ひさ子

HSS/HSP専門カウンセラー。繊細で凹みやすいが同時に好奇心旺盛で新しいものへの探求欲が旺盛なHSS型HSPへのカウンセリングをのべ5000時間実施。講座受講生からのメール、LINEのやりとりは月100時間以上。著書に『その生きづらさ、「かくれ繊細さん」かもしれません』(フォレスト出版、2020年)がある。



RELATED関連記事