白髪染めをやめて1年。「グレイヘアにしてよかった!」と思うけれど|連載 #60代のリアル
「60歳」と聞いて、あなたはどんな姿をイメージするでしょうか。「もう60代」と捉えるか「まだ60代」と捉えるか、人生100年時代と呼ばれて久しいこの社会で、60代は「人生後半戦の始まり」とも言える世代ではないでしょうか。60代の体、心、仕事…連載「60代のリアル」では、現在63歳のヨガインストラクター千枝さんのリアルな心境を綴ります。
白髪を染めなくなって1年近くが過ぎた。
栗色と白い髪色が混ざった今の髪色は中途半端だけど、案外私の顔には合っているらしい。自分でも顔が明るくなって気に入っている。
それでも、どうしても言う人は言う。
「白髪を染めた方が若く見えるのに」
インスタで「63歳になりました」と題したリールを公開したら「自分より年上かと思った」とコメントが寄せられた。
いわく「私ですか?(って聞いてないし)68歳です」と書かれていて、意地悪いかもしれないが思わずプロフィールを見に行ってしまった。
え…ご年齢相応では…
なんて思う私も嫌なヤツだが、実際のところ、この人がどうとかコメントがどうとか言うよりも「いくつになっても若く見えた方がいい」という一方的な価値観にうんざりしてしまう。
たとえば秋に紅葉が紅葉するのを見て、「もみじって年中赤だったら可愛いのに」と思う人もいるだろうけど、「もうすっかり秋だなあ」と感慨深く季節を感じたりする人の方が多いんじゃないかな。
私もそんなふうに自分の人生の季節を楽しみたい。
その方が心穏やかになるし、自分もこの世の摂理の一部なんだと思えてなんとなく心豊かになれる。
この髪色もそう。私としてはただそれだけなんだ。
でもだからって、みんながみんなそうでなきゃいけないとも思わない。
もみじ自身が「赤か緑」の二択に飽きたら、別の色に変えてもいいし豹柄にチェンジしたっていい。
それどころか「いつまでも若く見られたい」だって別に構わないし、「黒か白かじゃなくて、髪色自体を楽しみたい」と思えばそれも素敵だ。
ファッションもある種の自己表現だと捉えるなら、年齢に関係なく自分自身をキャンバスにして楽しめばいいと思う。
…みたいなことをThreadsに書いたら、共感するご意見をたくさんいただいた。
「誰にも迷惑かけいてないし、アドバイスも求めていない。自分の人生、自由に楽しめばいいと思う」
「自分が楽しめれば、それ以上でもそれ以外でもない」
「自然体が1番」
「うるせぇ、すっこんでろ!って言いたい」
頼もしい限り。
グレイヘアにしてよかった!
けれど一方で、当然だが、自分が「シニア」になったと実感する出来事にも遭遇している。
スタジオの備品を買うために、初めて近所の大型家庭用品店に行った時のことだ。
スタジオ用の掃除道具やらサニタリーセットやらを選んで、普通にレジで精算を済ませて帰ろうとした時、隣りのレジから聞こえてきたのだ。
「アプリ、お持ちですか?」
「クーポンをご利用になりますか?」
「え?アプリあるの?」
考えてみれば今時どこでも店舗専用のアプリがあるのが当たり前だ。ましてやそこは全国にショップを持つ「お値段以上」の有名店、アプリがないわけがない。
けれど私に対しては、「アプリ」の「ア」もなかった。
そして、ハタと気づいた。
若い店員さんからすれば白髪頭の私は相当なおばあさんなのだ。「アプリがどうとか言ってもわからないだろう」と思われたに違いない。
60代になり年相応にグレイヘアにして、人から褒められてうれしくて、でも正式に世間からシニア扱いされたことに驚いてしまった。
いやはや、こういうことなんだよね。
年甲斐もなくと言うか年を忘れてというか自覚に乏しかったというか、ピシャッと叩かれた感じだった。
けどさ、アプリくらいダウンロードさせてよ。
私だってクーポン使いたいよ。
さらにこんな経験もした。
ある日、自宅の火炎警報器から電池切れのブザー音が鳴るようになった。
取扱説明書を見るとどうやら10年で本体交換すべき製品らしく、メーカーに問い合わせたところ、すぐに大手住宅メーカーS社から作業員が派遣されてきた。
電池切れは1台だけだったが、おそらく他も寿命を迎えるので全台を取り替えた方がいいと言われ、後日見積を送ってもらうことにした。
実は以前にも電池切れになったときに電池だけ購入して交換したことがあったので調べ直してみたら、今の機種の後継機が販売されているらしく、Amazonでも売っていた。
なので、てっきり同じような金額を想定していたら、後日届いた見積にはAmazonで販売していたものの倍の金額が書かれている上に「作業代4万円」と書かれている。
いや、私、自分で取り付けも取り外しもできたけどな。
説明書に細かく書いてあるから素人でもすごく簡単な作業だったのに、4万円?!
その上どこを探しても我が家に警報器は3台しかないのに、なぜか4台分の見積…。
天下のS社でさえ、私が一人暮らしのおばあさんだからってこんなぼったくりな見積を出してくるんだ。
怖いなあ。
年寄りって「よくわからないだろうから」といろいろと搾取されてるんだろうね。
もし私が黒々と髪を染め頑張って若作りしていたら多少違ってたんだろうか…
「あるがまま時節を生きる」っていうとカッコイイけど、世間は厳しいし、その分強くならなければいけない。
だったらこっちも、弱くて愚かな老人なんかじゃいられない。
強くてしなやかに輝くシルバーグレイを目指したい。
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