無職、コロナ禍を経験し、今。60代になった私が『ヨガ講師』を続けている不思議 #60代のリアル

 無職、コロナ禍を経験し、今。60代になった私が『ヨガ講師』を続けている不思議 #60代のリアル
Chie
千枝
千枝
2025-04-04

「60歳」と聞いて、あなたはどんな姿をイメージするでしょうか。「もう60代」と捉えるか「まだ60代」と捉えるか、人生100年時代と呼ばれて久しいこの社会で、60代は「人生後半戦の始まり」とも言える世代ではないでしょうか。60代の体、心、仕事…連載「60代のリアル」では、現在62歳のヨガインストラクター千枝さんのリアルな心境を綴ります。

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*前回の内容はこちら。

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おしゃれな街広尾のおしゃれなヨガスタジオ…体験チケットを片手にテンションが上がった。

スタジオに行くとそこにいるのはおしゃれな人たちばかり。近所のスポーツクラブとは全くの異空間だった。

程なくしてスタジオの経営者であるマック久美子先生の特別レッスンに参加し、毎晩見ていたDVDに登場するご本人が目の前にいることに興奮した。

久美子先生はとても素敵で、「こういう人がヨガをなさるんだ」と思うとますますヨガへの興味が湧いた。

そしてスタジオ内のポスターにあった『ヨガインストラクター養成講座』の文言が目に入った。

インストクターになるつもりはないがもっとヨガを知りたい。とは言ってももう50代だし仕事も忙しい。大金を叩いたはいいが授業についていけるだろうか…などと散々悩んだ挙げ句、一度きりの人生だし冒険してみようと思い、申し込んでみることにした。52歳だった。

それからは平日は仕事、週末は養成講座という多忙な毎日が始まったが、最初にびっくりしたのは「OM(オーム)」というチャンティング

これはやばいところに来てしまった!と思った。

私の年代にとって「オーム」は『オウム真理教』というカルト教団を思わせる言葉で、やっぱりヨガってそういうことか…などと養成講座に入ってから戸惑うほどに私はヨガに無知だった。

カリキュラムが多岐に渡る点も驚いた。

ポーズだけでなく哲学、解剖学、瞑想、呼吸法…私が学んだイシュタヨガアーユルヴェーダも学ぶので、ヨガにまつわる幅広い知識を学んだ。

それだけに卒業試験は大変で、「筆記試験5時間」と書いてあってせっきりミスプリだと思っていたら、当日電話帳くらいの問題用紙に1問が0.1点みたいなとんでもない試験で、最後まで終わり切らない人も続出した。

それだけ学びが深かったこのスタジオを学舎として選んだことは、本当に大正解だったとしみじみ思う。

誰からどこで学ぶかはとても大きい。

当時の同期は今でもとても信頼しているし何かあれば相談している。「いいヨガの先生知らない?」と聞かれたら真っ先に紹介できる。

そして奇しくも私が通っていたスポーツクラブのインストラクターも同じbe yogaの出身で、養成講座に通う私を応援してくれていたが、ある時「新しいスタジオを作るので手伝ってくれませんか?」と声をかけてくださった。

その頃の私は、担当製品が販売終了になり別の製品の担当になったが、慣れない仕事と重い不眠症と闘いながらひどく消耗していた。

以前にも増して忙しくなり、北は青森から南は長崎まで重いカバンを抱えて毎週のように出張に出た。

その頃には50代になっていた私は、業界に少ない女性営業で、かつ一般的には部長職レベルの年齢でありながらいまだに現場をウロウロしている自分に惨めさを感じていた。

頑張ってもいつも報われない気がする。

私って何のために生きているんだろう?

そんな時「一緒にヨガスタジオを作ろう」という彼女からのオファーは燦然と輝く希望そのものだった。

意を決して12年務めた会社を退職したのは54歳の時だった。

ところがある日、新スタジオの話が一向に進まないので不安になって問いただすと「親会社との折衝が決裂しスタッフを雇えなくなった」と突然言われ、転職話がいきなり白紙になってしまった。

雇ってもらえるつもりで請われるままに、リサーチやさまざまなプランなどを資料にまとめて提出もしていた。前職のスキルが役に立って嬉しかったし、彼女も喜んでくれていただけにとてもショックだった。

こうして私は50代半ばで唐突に無職になり、一方彼女は無事にスタジオを立ち上げた。

ホームページには見覚えのあるインストラクターたち…同じスタジオで顔を合わせた人たちだ。キャンペーンには私のアイディアが使われていた。

ヨガを通して知り合い信頼していた人からの思いがけない仕打ちに絶望した私は、ヨガそのものに背を向けたい心境だったが、50代半ばでの再就職は難航した。

今のとりあえず今できること…一応ヨガの資格があるからバイトでレッスンに入ろうか…というわけで、ぐちゃぐちゃな心境のまま私のヨガインストラクター人生は始まった。

これが大きな転機になったのは言うまでもない。

それからもいろんなことがあった。

まずひょんなことでインドに行くことになり、そこである種の『啓示』と呼べるような出来事があって、その後はあれよあれよという間に、意外にもヨガだけで暮らせるようになったこと。

そうして順調に行き始めたところでコロナ。施設の休業や廃業で仕事が激減。

なんとかしないと!という思いで始めた60歳手前からのSNS。

そして結果的に、バイトのつもりで始めた『ヨガインストラクター』という仕事を今日まで続けられている。

その上、今、こんなことを書いてあなたにお読みいただいている。

人生には不思議しかない。

自力でコントロールできていないことばかり起こるけど、その全部が面白い。いや、コントロールしようなんて土台間違いだった。

そして気付けば本格的にヨガやアーユルヴェーダを学び実践しながら、10年以上あれほど苦しんだ重い不眠症をすっかり克服していた。

なんなら風邪すら引かなくなり、胃痛だなんだと頼っていた自宅の常備薬も全て廃棄してしまったほどだ。

ヨガと出会った50歳から12年。

62歳になった私は、子供の頃にもできなかったブリッジができるようになったりしながら、これまでとは180度違う人生を歩んでいる。

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