ストレスから重度の不眠症を発症。絶不調だった当時50代の私を救ったもの|連載 #60代のリアル

 ストレスから重度の不眠症を発症。絶不調だった当時50代の私を救ったもの|連載 #60代のリアル
千枝
千枝
2025-03-14

「60歳」と聞いて、あなたはどんな姿をイメージするでしょうか。「もう60代」と捉えるか「まだ60代」と捉えるか、人生100年時代と呼ばれて久しいこの社会で、60代は「人生後半戦の始まり」とも言える世代ではないでしょうか。60代の体、心、仕事…連載「60代のリアル」では、現在62歳のヨガインストラクター千枝さんのリアルな心境を綴ります。

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先日62歳になった。

記念にSNSにブリッジをする自分の姿をアップロードしたら、なんと、再生回数が150万回。

「お元気ですね!」「すごい!」とたくさんメッセージをいただいた。

ホント、まさか自分でもこんなに元気な60代を迎えられるとは…。

私はヨガインストラクター。

「ベテラン」と言いたいところだが、実はヨガを始めたのは50歳で、ヨガのお仕事に就いたのは54歳。それまでは会社員だった。

前職はIT企業の法人営業。従業員100人ほどの会社で女性営業は私1人だった。

そもそもその会社に入社したのも40歳で年齢だけは「ベテラン」。40代以降になるとありがちな状況だと思う。

最初はパソコンの修理部門に配属されてサポートセンターに。ところがわずか1年でリストラがあり、辛くも会社に残れた私は本社のマーケティング部に転属になった。

マーケティングなんて全くの未経験。40代の新人には歓迎会もなかったがなんとか食らいついた。

しかし4年ほどで再びリストラ。小さなIT企業は不況の影響をもろに受けたが、またそこでも首がつながった。

ところが「今度は営業になってくれ」。

またもや未経験の分野。同時にこの頃からどんどん体調が悪化し出していた。

とにかく眠れない。何時に寝ても4時に目が覚める。

当然毎日フラフラで、幻聴はするし手は痺れるし、突然とんでもない疲労感に襲われて座っていることすらできない。頭も回らない。

それなのに私にあてがわれた年間予算は1億2,000万円。

周りは「営業未経験のアラフィフのおばさんには無理だろう」と笑った。

ところが、がむしゃらって怖い。結局、売上を達成してしまったのだ。

ネタバレすると、私の功績なんかじゃない。前の担当者たちがちゃんと種まきをしてくれた後を刈り取って歩いただけなのだ。

おかげで社長賞を取ったばかりか、(私の会社は海外から製品を輸入して日本市場に販売していた)製品の販売元のグローバルトップパートナーにも認定された。

販売元は誰もが知る世界的大企業で、いつの間にかその販売実績で世界シェアNO.1を記録していたのだ。

ただのビギナーズラックとはいえ今思うと驚くべき金字塔を打ち立てていたのだが、当時はそんなことすらどうでもいいくらい絶不調だった。

それより英語ができない私にとっては、全世界から取引企業が本国本社に詣でて、朝から晩まで開催されるカンファレンスに参加することが憂鬱でたまらなかった。

東洋人女性は私1人で恐ろしいくらい目立っていて、あからさまに見下してくる人もいれば異様に優しくしてくれる人たちもいてカオスだった。

だが何より驚いたのは、その期間だけバカみたいに眠れたことだ。

日本では夜になってもふわりとも眠くならないのに、滞在先のホテルでは秒で寝てしまう。しかも寝過ぎて寝坊してしまう日が続いた。

ホテルのスタッフはとても親切で、「寝坊した」と慌てふためいてロビーに行くとすぐに車で会場まで送ってくれてなんとか参加はできたが、私の中ではふだん一睡もできない自分が寝坊するという事態が信じられなかった。

帰国後睡眠外来で何気なく主治医にそのことを話すと、「あなたは本当は眠れる人なんだよ」と言われた。

本当は眠れる?

当時の私は薬なしでは眠れない状態で、ある薬に耐性がついて眠れなくなると他の薬を処方してもらって凌ぐという状況だったので、自力で眠れるなんてあり得ないことだと思っていた。

しかし今思えば全て、「眠れない」と薬にしがみつき、「この仕事を辞めたらアラフィフ独身の私に先はない」と仕事にしがみついていた私自身の凝り固まった思考が作り出していた苦しみだった気がする。

この世界は自分が作っている。

ヨガを学んだ今の私にとってこの考え方はとても自然なものになったけど、当時の私は全くそうではなかった。

自分以外は全て敵。そしてその敵が私を苦しめているという思いしかなかった。

こうしてもがき苦しんだ日々の中で出会ったのがヨガだった。

50歳のある日、私は近所のスポーツクラブに入会した。

健康を取り戻したい。

そしてプログラムの中から自分でもできそうな「ヨガ」を試すことにした。

見渡す限り、年配の方しかいない。

安心してマットを敷いて座る…す、座れない。

みんななんで地べたに平然と胡座で座れるの?!

私は後にひっくり返りそうだった。股関節が驚異的に硬いのだ。

その日受けたレッスンは想像とは全く違っていた。キツイ。無理。なにこれ?え?でもみんなはできるの?

眠れない身体はガチガチで鍼でも整体でも指摘されていた。呼吸も、してるんだかしてないんだかというくらいか細く小さくなっていた。

こうして自分の状態に危機感を覚えた私は足繁くヨガに通った。そして、もしかしたら睡眠にもいいかもしれないと思い、ある日TSUTAYAでヨガのDVDを手に取った。

簡単な動きと呼吸法や瞑想をガイドしているそのDVDは私のお気に入りになったが、そこに『1000円』と書かれたチケットがついていることに気付いた。

体験レッスンのチケットだった。

「このスタジオ、広尾にあるんだ?行ってみよう」

私のヨガ人生のスタートとなった。

*Vol.2へ続きます。

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