今の私は「60代のロールモデル」からは程遠い。だけど、だからこそ、思うこと|連載#60代のリアル

今の私は「60代のロールモデル」からは程遠い。だけど、だからこそ、思うこと|連載#60代のリアル
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松木千枝
松木千枝
2026-05-11

「60歳」と聞いて、あなたはどんな姿をイメージするでしょうか。「もう60代」と捉えるか「まだ60代」と捉えるか、人生100年時代と呼ばれて久しいこの社会で、60代は「人生後半戦の始まり」とも言える世代ではないでしょうか。60代の体、心、仕事…連載「60代のリアル」では、現在62歳のヨガインストラクター千枝さんのリアルな心境を綴ります。

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よく「50代までにやっておけば良かったこと」みたいなのがあるが、私は、思いつかない。

逆に、もし仮に「60代にやっておけばよかったこと」と発信する目上の人がいたとしても、私は「そうか!」と思いそうにない。

今すべきことをし、感じることを感じ、向き合いたいことと向き合う。

それだけで精一杯だ。

「ロールモデル」「メンター」。

時代はそういう存在を求めていると感じるけど…

ある取材で「1日のスケジュールを教えてください」と言われ、改めて自分の1日について考えたら「比較的アクティブな1日の例 」として渡されたサンプルのスケジュールより全然項目が多く、項目がてんこ盛りになってしまった。

例えば「スタジオ業務」に当たる部分。

当然スタジオの清掃などが含まれるが、プラスして、近隣をポスティングで回ったり、CanvaでSNS用の画像を作る時もあるし、スタジオにライトをセットして動画や静止画を撮影することもある。

動画の場合はテキストを加え、公開時にキャプションも加えればざっと完成に3時間くらいかかる。

一方で生徒さんからのレビューやメッセージ、お問い合わせのDMにお返事を書いたりもする。

多くのフリーのヨガ講師は、プライベートレッスンだのオンラインサロンだのをやり、それぞれの集客をやり、さらにYouTubeを毎日更新するとか地方で特別クラスをやってるだのワークショップを開くだのイベントに出てるだの、さらに養成講座なんかもやってたりする。

みんな似たり寄ったりで、レッスン以外の仕事にかなり忙しいに違いない。

もちろん同業者の多くは私より若い世代の方々だが、おそらく取材を依頼してくださった方としては、まさか60代の私が若い世代のフリーの人たちと大差ない生活をしているとは思ってないだろうし、その媒体の読者の方々もそんな日常をイメージしていないに違いない。

実際、一般的には定年して年金生活を送る層なのだから、もっとのんびりした生活をイメージするだろうし、むしろそんな生活に憧れを抱くだろう。

結局、スケジュール部分も細々とは書かず、てんこ盛りにならないようにシンプルにまとめて提出した。

60代の女性の理想的な暮らしぶりが「家族と穏やかに優雅に暮らす」または「専門分野のオーソリティとして尊敬されてゆったり暮らす」だとしたら、実際のところ、現場仕事でカツカツな今の私は「60代のロールモデル」からは程遠い。

けれど正直なところ私自身は、だからこそそんな今が最高に面白くて仕方ないのだ。

例えばスマホだって、前の会社で社員全員に支給されていたので早くから持ってはいたが、だからって特別使いこなせていたわけではない。

けれど気づけば必要に迫られて、自分の名前で公式LINEを作り、生徒さんたちが使いやすいようにと、やれリッチメニューだやれ応答メッセージだと、目をシバシバさせながらあれこれやってみている。

スタジオの宣伝のために生徒さんにインタビューした動画をもとにSNS用のリール動画を作るようになったが、動画編集ソフトに話し声から字幕を作ってくれる機能があるのでそれを使ってみたり、部分的にズームさせる手法を使って少しでもわかりやすい動画にしようと工夫してみたりしている。

そしてそれを見てくださった生徒さんたちに「先生がご自分でなさってるんですか?」なんて、感心されたり驚かれたりしている。

チラシの構成をChatGPTに聞いたり、店舗ビジネスに関するレクチャー動画をYouTubeで観たり…ヨガの指導とは全く正反対のそういう分野での仕事も、全然違う脳みそを使うのですごく面白い。

こう書くと「好奇心旺盛ですごい」と褒めてくださるかも知れないが、その原動力になっているのは「1人で乗り越えていかなければならない」というこの境遇と切迫感だと思う。

実際、脳の衰えは日々痛感している。

でも、瞑想をしている人は脳機能の老化が抑えられると言われているので、これ以上衰えないように「瞑想を続けよう!」とも思うし、我が家は万病の元とされる糖尿病の家系なので「血糖値に気をつけよう!」と思う。

「頭がどんどんボケちゃってて」とか「うちはみんな血糖値が高い家系だから」みたいな愚痴に共感?を求められるのも求めるのも苦手だ。

誰だって歳は取るのだし、生まれ持っての体質はあるけれど、それをもって努力しない言い訳にはならない。それで結局困るのは自分なのだ。

ついでに、誰かの「これをやっておけば」なんて教訓めいた言葉も大して参考にならないと思う。

その人がどんなに素敵でも、所詮その人の人生から導き出された言葉に過ぎないんだから、あなたの人生の参考になるとは限らない。

アーユルヴェーダを勉強して「老化が病気」として治療対象になると学び、益々その認識を強めている。そして人はそれぞれ違うこと、だからその人に合った健康法が必要なことも。

いずれにしても先人が充実した人生を全うするために紡いできてくれたヨガやアーユルヴェーダの叡智を学べたことは、私にとって本当に大きな財産になった。

ということで結局これもそんな私の人生から導き出した言葉に過ぎないけど、「これをやっておけば」があるとすれば私からは「ヨガやアーユルヴェーダの学び」をオススメするのでした。

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