FOOD

【ルイボスティーで乳がん抑制の可能性】南ア研究が女性ホルモン”エストロゲン”作用のブロック効果を示唆

山口華恵 2025-11-27

南アフリカの伝統的なお茶、ルイボスティーが、乳がんの発生に関わる女性ホルモン“エストロゲン”の働きを弱めるかもしれないという興味深い研究結果が発表された。

ルイボスの抽出物、「エストロゲン」の働きを抑える可能性を示す

南アフリカから注目の研究成果が届いた。南アフリカのスタレンボッシュ大学のニッキー・フェルホーク博士（生化学）が率いる研究チームが、ルイボスティーに含まれる成分が、乳がん細胞に対して保護的に働く可能性を示したのだ。すでに心臓病や糖尿病、脳機能へのメリットで知られるルイボスティーだが、今回の研究はその働きが乳がんの領域にも広がる可能性を示した。

乳がんの多くは、女性ホルモン「エストロゲン」に反応する性質を持っている。エストロゲンが直接がんを起こすわけではないが、がん細胞がすでに存在する場合、その成長を早めてしまうことがある。そのため乳がん治療では、エストロゲンの働きを抑える薬が広く使われている。

今回の研究では、乳がん細胞にルイボスの抽出物を作用させ、その動きを観察。すると、エストロゲンが細胞に与える増殖シグナルが抑えられ、細胞の広がりがゆっくりになるという結果が得られた。特に興味深いのは、ルイボスが「ERβ（ベータ）」と呼ばれる受容体により強く働きかけた点だ。ERβは腫瘍増殖を抑える方向に働く受容体として知られており、その活性化は乳がんに対して“抑制的”に作用する。つまり、ルイボスの抽出成分は、乳がんの増殖を促すのではなく、むしろ抑える方向に働く可能性があるということだ。フェルホーク博士はこう語る。「ルイボスはエストロゲンの代わりとして働くのではなく、その作用を弱める方向に働きました。さらに、タモキシフェンという標準治療薬の効果を妨げないことも確認できたのは重要なポイントです。」

さまざまな健康効果のあるルイボスティー

日本でも手軽に購入できるルイボスティーは、豊富な抗酸化物質を含み、カフェインや糖分を含まないことから、日常的な飲み物として人気が高い。これまでにも心臓病や糖代謝の改善に加え、前立腺・肝臓・大腸がんなどに対して保護的に働く可能性が報告されており、その健康効果は幅広いとされてきた。今回の研究により、乳がんに関わるホルモン作用を抑える可能性が示され、こうした多面的な健康効果に新たな科学的根拠が加わった形だ。

フェルホーク博士らのチームは、2026年に予定されている動物実験で、ルイボスティーが体内で代謝された後にどのように作用するのか、そして安全性に問題がないかをさらに詳しく検証する計画だ。今回の研究の目的は、ルイボスティーを乳がん治療に使うことではなく、治療中の女性が普段通りに飲んでも影響がないかどうかを確認する点にある。これまで、ルイボスがホルモンにどの程度関わるのかは明確でなく、特にホルモン感受性の乳がん治療中に飲んでよいのかという疑問が残されていた。今回の研究は、その不確かな部分に科学的な光を当て、安全性を見極めるための重要な一歩となった。

乳がんに直接効くわけではないが、安心して日常的に飲めることが示唆された

今回の細胞実験は、ルイボスティーがホルモン感受性乳がん細胞に与える影響を示す初期的な証拠に過ぎないものの、研究チームは今後、動物実験を通じて体内での代謝や作用を確認し、実際のヒトへの有益性を評価する予定だ。フェルホーク博士はこうコメントしている。「今回の結果は、ルイボスが乳がんに直接効くという意味ではありません。しかし、女性が安心して日常的に飲める方向性を示せたことは大きいのです。これからの研究によって、ルイボスの可能性をより明確にしていきたいと思います。」自然由来の食品が科学的に検証され、安心して取り入れられる選択肢が広がっていくことは、私たちの健康づくりにとって大きな前進と言えるだろう。