血糖値が気になる人ほど“筋トレ”が効く。糖尿病予防に有酸素運動より有効な理由とは?【研究結果が示唆】

血糖値が気になる人ほど“筋トレ”が効く。糖尿病予防に有酸素運動より有効な理由とは?【研究結果が示唆】
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山口華恵
山口華恵
2025-11-20

糖尿病予防といえば、「ウォーキング」や「ランニング」といった有酸素運動を思い浮かべる人が多いだろう。ところが最近の研究では、走るよりも筋トレの方が効果的かもしれない、という意外な結果が報告された。

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筋トレは皮下脂肪と内臓脂肪の減少、血糖値の維持、インスリン抵抗性の改善に優位

バージニア工科大学にあるフラリン生物医科学研究所の研究チームによると、筋トレが血糖コントロールや脂肪燃焼において、有酸素運動を上回る効果を示したという。これは、糖尿病や肥満の予防における「運動の常識」を塗り替える可能性のある発見だ。

研究チームは、糖尿病や肥満を再現するために高脂肪食を与えたマウスを対象に、8週間にわたる実験を実施した。マウスたちは2つのグループに分けられた。一方は回し車を使ってランニングを行う「持久運動グループ」。もう一方は、エサを食べるために“重いフタ”を持ち上げなければならない「筋トレグループ」だ。この特製ケージでは、マウスが食べるたびにフタを持ち上げる必要があり、人間でいえばスクワットのような動作を繰り返す仕組み。日ごとにフタの重さを増やすことで、徐々に負荷を高める本格的な「レジスタンストレーニング」を再現した。8週間後、どちらの運動でもマウスの体脂肪が減り、血糖値が安定するなど健康状態が改善した。だが、その効果は筋トレグループの方が明らかに高かった「走る運動も筋トレも健康に良いことは確かですが、筋トレの方が皮下脂肪と内臓脂肪の減少、血糖値の維持、インスリン抵抗性の改善において優れていることが分かりました」と同研究所のゼン・ヤン教授は語る。とくに注目すべきは、体の奥にある内臓脂肪の減少だ。内臓脂肪は血糖値を上げるホルモンの働きを強め、動脈硬化や糖尿病のリスクを高める“危険な脂肪”とされている。その内臓脂肪を効率よく減らす運動として、筋トレが注目されている。

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「筋肉は糖を燃やすエンジン」

では、なぜ筋トレがここまで血糖値に良い影響を与えるのだろうか。代謝医学が専門のグラスゴー大学のナヴィード・サッター教授はこう説明する。「筋肉は、私たちの体における“メインエンジン”です。筋肉を動かすほど多くのブドウ糖が燃やされ、血糖値が自然と下がっていくのです。」筋肉が多いほど、体は糖をエネルギーとして効率的に利用できる。つまり、筋肉を鍛えることは、血糖値を安定させる最も自然な“薬”といえる。さらに今回の研究では、筋トレによって筋肉内のインスリン感受性が高まることも確認された。これは、筋肉がよりスムーズに血中の糖を取り込めるようになるということ。まさに、糖尿病予防に直結するメカニズムだ。

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とはいえ「続けやすい運動」が一番の近道

ただし、筋トレが万能というわけではない。サッター教授は、「運動は続けられることが最も大切」と強調する。「多くの人にとって、一番現実的なのは“歩くこと”です。1日10分多く歩く、あるいは1000歩多く歩くだけでも体は確実に変わります。」実際、これまでの研究でも、有酸素運動と筋トレを組み合わせることで糖尿病リスクを約50%減らせることが示されている。つまり、筋トレとウォーキングなどの有酸素運動をバランスよく取り入れることが理想的なのだ。

「動く習慣」が未来の健康を守る

理想的なのは、持久運動とレジスタンストレーニングを両方行うことです。心臓も筋肉も代謝も、全ての健康を守るためにはバランスが大切です」とヤン教授は締めくくる。ジムに通う時間がなくても、スクワットやプランク、腕立て伏せなどの自重トレーニングで十分に筋肉を刺激できる。一方で、日常生活の中でも「エレベーターより階段を使う」「一駅分歩く」といった小さな習慣も積み重ねれば、大きな効果を生むことは可能だ。未来の自分のため、毎日できる動く習慣を積み重ねよう。

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出典:
Resistance exercise may offer greater benefits for preventing diabetes and obesity
Diabetes prevention linked to specific type of exercise, study shows

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