自分を受け入れるためのヨガニードラ10のステップ
不安や焦燥感を抑制するといわれている古代のプラクティス、ヨガニードラは、ほぼ即座にストレスを緩和し、成長を遂げる機会をもたらしてくれる。
古くからあるものの、あまり知られていなかったヨガのプラクティスであるヨガニードラが、瞑想の手法として、またマインドや体のためのセラピーとして人気を高めている。これは、ガイド付きリラクセーションのシステムで、通常は1回につき35分から40分かけて行う。これを実践する人は、ストレスの緩和や睡眠の質の向上など、実際の効果が即座に感じられることも多く、心理的な傷を癒す可能性もある、と言う。瞑想のプラクティスとして行うと、深い喜びや幸福感をもたらす。
「ヨガニードラは、体、感覚、マインドを回復させて自然な働きを取り戻し、分離を感じずに、全体、静穏、幸福だけを見ることのできる、七番目の感覚を目覚めさせるものなんだ」と、Integrative Restoration Institute(統合的回復研究所)の創設者であり、『Yoga Nidra: A Meditative Practice for Deep Relaxation and Healing』の著者であるリチャード・ミラー博士は言う。
ミラーは1970年に、サンフランシスコにある Integral Yoga Institute で初めてヨガのクラスを受けた。「クラスの終わりに、ヨガニードラの形を変えたディープ・シャヴァーサナを教わったんだ」と彼は言う。「これまでで最も意味深い経験だった。そこには、自分が世界全体と関わり合っているような感覚があった。そして自分の内側に、このプラクティスを本気で探究しようという誓いが生まれたんだ」 それ以来ミラーは、軍事基地、 リハビリセンター、病院、モンテソーリスクール、ホスピス、刑務所からヨガスタジオまで、このプラクティスをより多くの人々に届けようと根気強く働いた。どんな人もこの恩恵を受けることができる、と彼は言う。「ほとんどの人が自分を変えようとしている」とミラーは言う。「ヨガニードラでは自分自身を迎え入れることが求められる。深い意味を持つ変革が起こるのは、本当に自分を受け入れたときなんだよ」
シンプルなステップ
これは一見シンプルなプラクティスだ。ヨガニードラの短いバージョンであれば、 分からずに導入とプラクティスができる。そして、さまざまな要素を共に取り入れ、定期的にプラクティスをすることで、マインドと体のための洗練された一組のツールとなり、人生の最も辛い時期を通り抜ける手助けをしてくれる。 マントラや呼吸にフォーカスする瞑想法とは異なり、ヨガニードラはただ手放すことを求める。「プラクティスでは筋肉をゆるめざるを得ないんだ」と ParaYoga の創設者であり、『The Four Desires』 の著者であるロッド・ストライカーは言う。「すると、自分自身や自分の人生を、最もポジティブな光の中で見ることのできる場所へのドアが開かれるんだ」
ヨガニードラはそのまま「ヨガ の眠り」という意味だが、名称としては少し不適切である。これは特別なタイプの眠りではなく、眠りと目覚めの間の状態だ。実際、 ヨガニードラという用語に触れたいくつかの最古の文献の中では、サマーディ、結合の同意語だ。
感情の癒し
ミラーが西洋人が入っていきやすいようヨガの教えを順応させた時、彼は、感情的な幸福というも のにも取り組みたいと思った。「東洋のヨガの原則は、健康状態や幸福感が一定レベルにあるのを当然のこととしていたんだ」と彼は言う。「自分の生徒のほとんどがこれは当てはまらないと思ったよ。 だから、内に宿る力、という要素を付け加えたんだ」 初期の頃のミラーのヨガニードラのインストラクションでは、リラックスし始めたとき、心が安らぐ安全な場所の自分なりのビジョンや感覚を思い起こすよう求められる。ヨガニードラの間に強烈な感情が表面化してきたら(あるい は、そうなったときにはいつでも) この内に宿る力のところに戻って休むことができる。 自らの内に秘めた力を味方にすると、深く休息しながら、湧き上がってくるあらゆる感覚、感情、思考を観察し、迎え入れることができようになる。こういう経験を通して、人生の中のあらゆる存在と関わっているという、揺るぎない感覚を得ることができる、とミラーは言う。「体、感覚、マインドが回復し、自然な働きを取り戻すのはこういう時なんだ」
リチャード・ミラーによる ヨガニードラの10のステップを探求しよう
はじめに
プラクティスのスペースを準備しよう。マットの上にボルスターを縦に置き、ゆるやかな傾斜がつくよう先端部分の下にブロックを入れる。マットに坐骨をつけて仰向けに寝て、腰から頭までボルスターに支えられているようにしよう。畳んだブランケットを頭の下に入れて枕にする。音、匂い、味覚、色や光などにも気づき、迎え入れよう。体の余分な力を抜き、体とマインド全体がリラックスする感覚を感じよう。
1.心からの 願いとつながる
心の奥底にある願い、人生でほかの何よりも欲しいものを思い浮かべよう。それは健康、 幸福、目覚め、といったものかもしれない。今、それが真実であるかのように思い描き、感じ取りながら、心からの願いを体全体で感じよう。
2.志を定めよう
今日のプラクティスの志を思い起こそう。それはリラックス、休息ということもあれば、 特定の感覚、感情や信念の探求かもしれない。志がどんな ものであれ、体とマインド全体でそれを迎え入れ、肯定しよう。
3.内に宿る力を見つける
安心、幸福、穏やかさを感じる体の内の安らぎ、内に宿る力に意識を向けよう。安らぎや安楽、体の内に潜む幸福が感じさせてくれる場所、人、経験を思い出すこともあるだろう。プラクティスの間、あるいは日常生活で、感情、思考、人生における状況などに圧倒され、安らぎや安楽を願うときには、いつでもこの内に宿る力へと意識を戻そう。
4.体をスキャンする
だんだんと意識を体全体へ動かし ていこう。下あご、口、耳、鼻、目を 感じよう。額、頭皮、首、喉の内側を感じよう。左腕全体と左手のひら、右腕と右手のひら、その次に両腕と両手に同時に注意を向け、スキャンしよう。胴体、骨盤、仙骨を感じよう。左腰、脚、足先、次に右腰、脚、足先の感覚を感じよう。感覚が広がるフィールドとして体全体を感じよう。
5.呼吸に気づく
体が呼吸をしているのを感じよう。空気が鼻、喉、肋骨を自然に流れ、呼吸するごとに腹部が上がったり下がったりするのを観察しよう。呼吸するたびに、エネルギ ーが体全体を通って流れていくのを感じよう。
6.感覚を迎え入れる
批判したり変えようとしたりせず、体やマインドにある感覚(重さ、緊張、温かさ)、感情(悲しみ、怒り、不安)を迎え入れよう。また、逆の感覚や感情にも気づこう。不安を感じるのなら落ち着きを呼び起こし、緊張を感じるなら安らぎを感じよう。それぞれの感覚とその逆の感覚を体の中で感じ取ろう。
7.思考を見つめる
マインドにある思考、記憶、イメージに気づき、迎え入れよう。批判したり変えたりしようとせずに思考を観察しよう。 自分が抱えている自分自身に関する信念が浮かんできたら、その逆の信念もマインドで感じ取り、その感覚をありのままに迎え入れよう。
8.喜びを体感する
胸や腹のところから生まれ、体全体 を通って周囲のスペースまで広がってくる喜び、幸福、至福などの感覚を迎え入れよう。息を吐くたびに、温かさ、喜び、幸福感が体から解き放たれるのを感じ取ろう。
9.自己を観察する
「私」という存在やパーソナリティに気づこう。「私はお腹が空いている」「私は怒っている」「私は幸せだ」と言いながら、このアイデンティティの感覚を認めよう。次に、こういう感覚を認知している観察/目撃者、意識としての自分を感じ取ろう。考えることをやめ、意識の中に溶け込み、目覚め、自己を意識しよう。
10.プラクティスを振り返る
プラクティスを終えるにあたり、今したばかりの旅を振り返ろう。変わり続ける環境の底に潜む、深く変わることのない安らぎとして常に存在している純粋な存在、純粋意識がどんな感覚だったのかを確認しよう。心地よいときも困難なときも同様に、その感覚を日々の生活に取り込み、この穏やかな感覚といつもつながり直すようイメージしよう。
終わりに
自分のペースで目覚めた状態に戻り、周囲に順応していこう。ゆっくりと覚醒し、少しとどまり、自分のためにこういう時間を持ったことに感謝しよう。
私は思いやりを持って、 自分の感覚、思考、自分自身を迎え入れる...
自分が経験する感覚、感情、思考はすべてメッセンジャーである。ヨガニードラはその一つひとつを好奇心とオープンさを持って迎え入れることを教えてくれる。それぞれの知覚が完全に広がるのにまかせよう。その一つひとつがガイドとなってあなたを導き、より深く自分自身を理解するようになるだろう。
ライター/キャサリン・グリフィン
『ヨガジャーナル』誌 の 元 副編集長でベイエリア在住のライター、編集者。
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