みんな「見た目の話」が好きすぎる。ルッキズムをしゃべり続けた私たちが今、考えていること【しゃべるっきずむ!編集部対談】

みんな「見た目の話」が好きすぎる。ルッキズムをしゃべり続けた私たちが今、考えていること【しゃべるっきずむ!編集部対談】
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容姿で人を判断したり、揶揄したりする「ルッキズム(外見至上主義)」。言葉の認知が進む一方で、まだまだ理解されていないルッキズムについて、おしゃべりしてみよう!自身もルッキズムに苦しめられた経験を持ち、Yoga Journal Onlineで「前川裕奈のひとり語り+α」を執筆する前川裕奈さんとゲストが語り合う連載が「しゃべるっきずむ!」です。

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2024年にスタートした「しゃべるっきずむ!」。当初の「ルッキズムをテーマにいろいろな業界や肩書きの人と話したい」という趣旨の通り、これまで24回にわたり、さまざまなゲストとともにルッキズムについて考えてきました。今回は、連載の喋り手の前川裕奈さん、ライターのウィルソン麻菜さん、ヨガジャーナルオンライン編集長がチームで作り上げてきた2年間を振り返りつつ、ルッキズムについて考えていることをおしゃべりする番外編です。

みんな「見た目の話」が好きすぎる

——「しゃべるっきずむ!」が始まって早2年。改めて振り返ってみると、これまで24回、27人の方と対談、56本の記事として世の中に出してきました。すごいですね。

ウィルソン:先日、これまでの記事を印刷してみたんですけど、ものすごい量になって驚きました。本当にたくさんのお話を聞いてきたんだなと。

前川:ルッキズムという難しいテーマで、これだけたくさんの方と対談できたのは嬉しい。感じ方や考え方もそれぞれで、私たち自身のルッキズムに対する視野もすごく広がったよね。

——初回はアルテイシアさんに来ていただいて、ルッキズムとジェンダーの関係を始め、社会構造のなかにルッキズムがあることを改めて話しましたよね。あと、「褒め言葉でも、相手を傷つけることがある」というのは、一番ルッキズムの難しい部分でもあるので初回から話せてよかったです。

アルテイシア:「私自身の反省として、昔は友達の赤ちゃんに対して「イケメン!」「美人!」と言っちゃってたんですよね。 本当に褒めたい気持ちで言っていたものの、赤ちゃんの時から見た目をジャッジする言葉はよくないなと思ってやめました。今は「天使!」とか「マーベラス!」とか言ってます。」(Vol.1 “褒める”のもルッキズム?相手を傷つけない褒め方とは。」より)

ウィルソン:社会全体の大きな視野から、具体的なエピソードまで網羅してくださって、初回にふさわしいゲストで、本当にありがたかったですね。褒め言葉に関しては、連載の中でも何度か出ているし、私たちの間でもよく話題にあがるよね。

ルッキズムについて話す前川とウィルソン

前川:実はつい最近、褒め言葉で久々に違和感を体験をしたので、ふたりの意見も聞いてみたくて……。サロンでフェイシャルの施術をしたときに、「すごい小顔!骨格が小さい!太っても顔につかないタイプですよね!?」とか「外国の血まざってます?!」と複数人のスタッフさんから顔のサイズについて具体的にコメントをもらいまして(笑)。もちろん褒めてくれているのだろうし、悪気がないのはわかってるんだけど、私自身は痩せるとまず顔がゲッソリしてしまうのが嫌なので、そこまで大勢に小顔だ小顔だと言われるのは、若干違和感というか恐怖体験というか……。けど、いちいちそう思ってしまう自分って天邪鬼なのかもなぁ、とかも思ってて(笑)。

ウィルソン:当たり前のように「小顔=正義」という価値観があるからこそ、サロンの人たちもそう言ってしまうんだろうね。私もルッキズムについて学んできていなかったら絶対にそういう褒め言葉を言ってしまっていたと思うよ、よかれと思って。

——「よかれと思って」も難しいですよね。私の知り合いも、歯医者で突然「歯茎出てるの気にならない?」って言われたんですけど、それまで本人は全然気にしたことなかったらしいんです。それもやっぱり悪意があるというよりは、専門家として言ってあげようっていう「よかれと思って」なんだろうな、と。でも、何を言われて嬉しいかは人それぞれだからわからないですよね。

前川:言われたら気になっちゃいますよね!それも歯医者さんの中で「歯茎が出てない=美人」という方程式ができあがっちゃってる。でもやっぱりそれは、本人から「歯茎が気になってて……」と相談されるまでは、自分から言わない方がいい気がするなぁ。私も高校生のときに笑うとめっちゃ歯茎が出るのを指摘されたことがあり、そのときに初めて「歯茎が出る人/出ない人」という概念自体に気づいて、自分の笑顔が嫌になった時期があったから。

——見た目の話って本来はかなりレベルの高いコミュニケーションのはずなのに、みんな気にせずにガンガン見た目のこと発言していますよね。

ウィルソン:ルッキズムについて考え始めてからこの社会を見ると、本当にみんな、見た目の話が好きだし、息をするように容姿のことを言っているなぁって思います。SNSや広告、周りの人との会話でここまで浸透していたら、そうなるのもわかるけど。先日も、ある飲み会で「誰が太った・老けた」という話題で、長時間盛り上がっていて……。みんなつらくないのかな?と思ったんだよね。つまり、自分も何か容姿に変化があったら言われる土壌を作っちゃってるってことなのに。

話しているウィルソン

前川:太っても痩せても、何かしら言われるよね。自分は常に言う側ではなくて、言われる側・ジャッジされる側になると思うと、発言も変わるかもしれない。

ウィルソン:けど、私はその飲み会で何も言えなくて、会話に入らないだけで精一杯だったんだよね。褒め言葉もそうだけど、悪気のないルッキズムを指摘されたら、怒られた!みたいな気持ちになってしまうと思うし。

前川:伝え方は難しいよね。私も友達が「ああいう服装の人は〜」みたいな感じで、見た目だけで判断している発言をしたとき、どう伝えようか悩ましい。

攻撃性の強いルッキズムとジェンダー

——連載では、男性が女性をジャッジする場面の話も多く出ていましたよね。男尊女卑がベースにあって、男性が女性をジャッジする上で見た目の存在が大きいというか。フェミニズムやエイジズムの話題につながることも多く、本当にいろいろな社会課題と密接につながっているなと感じました。

前川:もちろんルッキズムをする・されるのに性別は関係ないし、男性には男性のつらさもあると思うけれど。でも、やっぱり数として女の子のほうが圧倒的にルッキズムにさらされているよね。武田砂鉄さんとの対談でも、男性は見た目だけでなく、肩書きや能力など別の武器があるよね、という話になったと思う。

武田:男性は別にそれを深刻に考えなくても、朝起きてから夜寝るまでひとまずよろしくやってられる、というところはあると思うんですよね。もちろん男性もルッキズムに晒されることはありますが、そこまで生活に及んでこないというか、生活が崩れるレベルまで侵入してこない。前川さんが経験されたような、拒食や過食といったところまで影響が出てくるのは、男性でもゼロではないんだろうけど少ないですよね。(Vol.15 「ハラスメントでも“対話の基本”は同じはず」より。)

話している前川

——瀧波ユカリさんの回でも、男性が女性の見た目を揶揄するのは、黙らせたり傷つけたりする手段として言っているって話がありましたね。SNSなどで明らかに美人だとされている芸能人に、あえて容姿の悪口をぶつけているコメントなどを見ると、本当にそうなんだろうなと思います。

瀧波:自分の発言力やポジションを誇示するために、誰かを「ブス」「デブ」とジャッジして攻撃する。その言葉を真に受けて「自分はブスなんだ、自分が変わらなければ」と思っている女性たちは、周りの勝手な攻撃で“そう思わされている”だけなんです。だから、本当に「ブス」であるかは関係ないと思っています。(Vol.5 「ルッキズムを生み出す「文化」を考える」より。)

ウィルソン:男性の場合はホモソーシャルの文化がすごく悪質だと思ってて、「仲間に溶け込まなきゃいけない」という。それは形を変えて女性の中にもあるだろうし。でも、清田隆之さんも言ってたとおり、本当はみんな傷ついているはずなんだよね。それを隠したり強がったりしなくていいし、「嫌だった」と言っていいんだよと言いたいです。

清田:メディアも含めた世の中で「これがいい/悪い」という価値基準があまりにできすぎていて、そういう基準にみんな傷つけられてきているわけですよね。そういう傷つきが反転してしまうと、攻撃的な気持ちにつながっていくこともあるのかもしれない。(中略)そういう見た目で苦しんだことをね、もっと語り合えるといいのかな。「みんな嫌だったよね」と話ができる場が増えるといいんだろうなと思いました。(Vol.14 「私たちは傷ついてきた。外見について話すときに思い出したいこと」より。)

感じ方はそれぞれだからこそ、「おしゃべり」したい

——確かにそうですね。そこを変えていかないと、ずっと再生産が続いてしまいますよね。ルッキズムを知ることで、少しずつ変わっていくといいなと思います。

前川:自分を傷つけているものの正体は何なのかを知るだけで視点が変わるよね。「資本主義がルッキズムを助長させているんだ」とか知ることで、傷つきや怒りだけで終わらないのかな、と。やっぱりまだまだこの社会からルッキズムはなくならなくて、そのなかで受け取り方も養っていきたいなとすごく思う。バービーさんが言っていた「レジリエンスを養ってほしい」という言葉も、印象的だったな。

バービー:ただ、私は対外的な環境を整えたいというより、娘のなかに「こうあるべき」という価値観を内在させたくないなって気持ちのほうが強いんです。子どもが生まれる前は、「ルッキズムをなくしたい」「差別のない理想的な社会にしたい」と思っていたけれど、すぐにルッキズムや差別が完全にゼロになる社会にすることは無理なので、環境をクリーンに整えてあげるより、娘自身のレジリエンス能力を高めることに今は注力しています。「かわいい」という価値観を多角的に捉え、外見の価値基準がひとつではないと思えるようになれば、外的な圧力にも負けない心が育つんじゃないかなって。(Vol.19 「「自分で決める」ってどういうこと?多様化する社会で自分軸を育む方法」より。)

話している前川とウィルソン

ウィルソン:ルッキズムについて人と話すほどに解釈も受け取り方もそれぞれだとわかるし、だからこそ話していきたいよね。「この言葉が嫌だった」「そんなつもりじゃなかったけどごめん」みたいな会話もそうだし、私は、子どもたちと積極的に「かわいい」の話もしてみたいと思う。「かわいい」や「イケメン」というものが、いかに多様で、画一化できないものなんだよって伝えられたらいいな、と。

——容姿も価値観も、「正解」があるわけではなくていろいろあるんだ、と伝えていくのは大事な気がしますね。発達心理学者の山口真美さんとの対談でも、最後は「対話していく」という話になったのがよかったなと思います。

山口:ルッキズムについて話す上で「しゃべっちゃいけない」「言っちゃいけない」となるのが一番よくないと思いますね。口を閉ざすことによって多様性が隠されてしまい、結局はなんとなく「みんなが言っているから」がファクトになっていってしまうから。みんなが好きなものを自信を持って言える社会にしていくことは大事だと思います。(Vol.23 「「美しいものが好き」なのは本能?」より)

前川:私たちがこうやってルッキズムをいろんな側面から話せるのも「しゃべるっきずむ!」で本当に多様な方々とルッキズムを考えてきたからこそ。読んでくださっているみなさんにとっても、自分で考えたり、誰かとおしゃべりするきっかけになったら嬉しいなと思います。

——前川さんがよく「ルッキズムは全員当事者!」と言っているとおり、本当に誰にとっても身近な話題だと思います。なんとなく「難しそう」「自分には関係ない」と思っている方にこそ読んでほしい!今後の連載も楽しみです!

「しゃべるっきずむ!」の2人がルッキズムについてまとめた書籍の出版が決定!

ある高校を舞台にしてルッキズムに向き合う23の短編マンガと、それらを紐解くコラムやFAQ、著者対談など盛りだくさんな一冊。今まさにルッキズムで悩んでいる人はもちろん、子育てや職場でのコミュニケーションに悩む方にも。ルッキズムを知り、身近な人と“おしゃべり”するキッカケにしてみてください。

『つまり、それがルッキズム』書影

『つまり、それがルッキズム 〜23の 事例と解説〜』

著:前川裕奈・ウィルソン麻菜
定価:1870円(税込)
ページ数:192
発売日:2026年7月9日

⇨予約・購入はこちら

 

【7/26(日)14:00から】「しゃべるっきずむ!」特別公開編「前川裕奈さん×堀井美香さんトークイベント」開催

今年も「しゃべるっきずむ!」の特別公開編イベントを開催します。普段は記事内でしか読むことができない対談を、西武渋谷店を舞台に公開対談として実施!対談のお相手にはアナウンサーの堀井美香さんを迎え、「ルッキズム社会で『私たち』を認め合う」をテーマにお話しします。 

しゃべるっきずむ!7/26イベント画像

トークイベント「しゃべるっきずむ!当別公開編 前川裕奈×堀井美香-ルッキズム社会で「私たち」を認め合う-」 

開催日時:2026年7月26日(日)14:00〜(約45分) 
場所:西武渋谷店 B館3階(東京都渋谷区宇田川町21-1) 
参加費:無料 

⇨事前予約はこちら
*事前ご予約いただいた先着50名さまに優先で座席をご用意いたします。 
*西武渋谷店による詳細ページはURLより確認いただけます。

 

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話しているウィルソン
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