フランスのマダムに教わった、自分らしい正解の見つけ方【パリで学んだ生きやすさのヒント】
極度の人見知りだった私の人生を180度ひっくり返してくれたのが、20代後半からのパリ暮らしでした。東京でPR会社を起業して全国で仕事をする「今」につながる出会いの数々。本連載「パリで見つけた生きやすさのヒント」では、パリでたくさんの人や出来事から教わった、気持ちが少し楽になる生きやすさのヒントをご紹介。
今回は、20代の頃、私にとって「パリ」そのものだったソフィーのお話。彼女から学んだのはフランス語だけではありません。その後の人生でも大切にしている視点の持ち方についてお伝えします。
フランス人マダムが教えてくれた、〇か×だけではない物事の捉え方
「ア、 ノン」美しい指先をメトロノームのように揺らして、フランス人マダムが柔らかな視線を投げかけてきました。ソフィーが話をさえぎるのは、いつも決まってフランス語の文法が間違っている時。しまったと顔をしかめる私に、彼女は微笑みながら言いました。
いい感性ね。あ、文法的には違うのよ。友達との旅行が「良い思い出」になったと言いたい時は、jolie memoire(ジョリ・メモワール / 美しい記憶)ではなく、bon souvenir(ボン・スーヴニール)という表現を使ってね。でも、美しい記憶って素敵な言葉だと思わない?どうやって思いついたの?言葉選びのセンスがフランス的なのかもしれない。今度使ってみたいから、このフレーズ、もらってもいいかしら?
私に「生きたパリ」を教えてくれる先生だったソフィー。母親くらいの年齢の女性が、少女のように何度も言葉の感じを確かめる姿が印象的で、今も鮮やかによみがえるワンシーンです。この日、彼女はいい言葉をもらったと喜んでいましたが、私は、正解か不正解だけではない尺度で物事を見ること、良いと思ったらそれを惜しみなく表現することの素晴らしさを学びました。
息苦しさを感じる時は…ソフィー・メソッドを試してみて
フランス語のたった1つのフレーズをきっかけに出合った考え方は、PR・コミュニケーションの仕事にもいきています。たとえば、「文章が苦手で…」と頭を抱えている方には「テーマを探す力、発想する力が独創的で素晴らしいです」「写真での表現が得意なので、そちらを中心にするのはどうでしょう」のように、違う視点からのアドバイスを心がけています。
仕事もプライベートも、頑張りすぎると肩に力が入って答えが〇か×しかないように思えてしまうもの。なんとなく息苦しさを感じたら、一瞬立ちどまって、ソフィー・メソッド(と呼んでみます)を試してみませんか。「正解じゃなくても、こう考えたら素敵になるかも」「こんな見方をしてみるのはどう?」そんな風に発想を転換できたら、ふわりと気持ちが軽くなるかもしれません。
AUTHOR
MIKI
古美術商の家に生まれる。極度の人見知りだったが、20代後半からのパリ暮らしで人生観が変化。フランス語を学び、社会人研修生として過ごした国際学園都市での出会いを通して、コミュニケーションの大切さに目覚める。帰国後PRの世界に入り、世界最大級の水族館や地球温暖化防止プロジェクトなどに携わった後、2011年に起業。PRコンサルティングやブランディング、執筆を行う。現在地は、東京、沖縄、ときどきパリ。
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