毎日を彩る、少し特別な日のつくりかた【パリで見つけた生きやすさのヒント】

毎日を彩る、少し特別な日のつくりかた【パリで見つけた生きやすさのヒント】
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MIKI
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2025-06-29

極度の人見知りだった私の人生を180度ひっくり返してくれたのが、20代後半からのパリ暮らしでした。東京でPR会社を起業して全国で仕事をする「今」につながる出会いの数々。本連載「パリで見つけた生きやすさのヒント」では、パリでたくさんの人や出来事から教わった、気持ちが少し楽になる生きやすさのヒントをご紹介します。

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パリで寮生活を始めた頃、新しい環境で緊張している私に同じフロアの学生が声をかけてくれました。「ミキ、週末のfête(フェット / パーティー)に参加しない? 友達ができると思うよ」。fête=祝祭日で覚えていたので、最初は意味がわからなかったのですが、辞書を引いて、それがお祭りやパーティーを指すことを知りました。

私が暮らしていたのは、広大な敷地に世界各国の研究者や芸術家などが集まる国際学園都市の中にあるMaison du Japon(日本館)。一定数の外国の学生を受け入れるというルールがあったので、日本館にもロシアやイタリア、ブラジル、ドイツなどさまざまな国から来た学生たちが集まっていました。皆とても忙しく、普段はキッチンや図書館で顔を合わせて挨拶する程度。少しでも交流できたらいいなと考え、出かけました。

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初めてのお祭りだし…と、少しおしゃれをして会場に行ってみると、拍子抜けをするカジュアルな雰囲気。皆、普段着でワインを片手に気ままに過ごしていました。「このワイン、1ユーロで買えたんだよ。信じられる?」「サラダ作ってきたから、食べてみてよ」「最近は、どんな勉強をしているの?」など、誰もが思い思いにおしゃべりに花を咲かせています。箱入りのチョコレートを片手に、1人肩に力が入っていた私も、促されるままに会話に加わり少しずつリラックスすることができました。

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一度参加してからは勝手がわかり、毎週のように開かれるフェットが楽しみになりました。特別な心構えや準備は必要なく、集まって楽しい時間を過ごすことが大切だとわかったからです。ときには、仲のいいグループで小さい会を催すことも。それぞれに当番を決めて誰かの部屋に食べ物と飲み物を持ち寄るのです。スイーツ好きの私はいつもデザート担当。新鮮なラズベリーにベリーの花から採った蜂蜜とビスケットを添えたり、とっておきのマドレーヌを見つけてきたり…甘く楽しい思い出が数えきれないほどあります。

「フェットしない?」の一言は、パリで緊張しきっていた私の暮らしを大きく変えてくれました。ささやかな工夫や出来事が日常を特別にしてくれる。あらためて、この大切な感覚を呼び覚ましたいと思います。

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