人生の味わいが変わったカフェでの一言【パリで見つけた生きやすさのヒント】

 人生の味わいが変わったカフェでの一言【パリで見つけた生きやすさのヒント】
MIKI
MIKI
2024-12-29

極度の人見知りだった私の人生を180度ひっくり返してくれたのが、20代後半からのパリ暮らしでした。東京でPR会社を起業して全国で仕事をする「今」につながる出会いの数々。本連載「パリで見つけた生きやすさのヒント」では、パリでたくさんの人や出来事から教わった、気持ちが少し楽になる生きやすさのヒントをご紹介します。

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冬のパリ、おいしそうなエクレアを前に、私は心ここにあらずで考え事をしていました。場所は右岸のカフェ。仕事で気がかりなことがあり、頭の中が「これからどうしよう…」でいっぱいになっていたのです。すると、これまでまったく耳に入ってこなかったフランス語がポンッと一言飛び込んできました。

パリ
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「C’est la vie(セ・ラ・ヴィ / それが人生だよ)」

穏やかで温かな声で発せられた言葉に引き込まれて、顔を上げると、隣の席には真剣な顔で話をする2人の姿が。いろいろなことがうまくいっていないから、パリを離れようと思っていると言う相手に対して、発せられた言葉が「セ・ラ・ヴィ」でした。それは、決して、突き放したり適当に答えたりしているわけではなく、思いを受け止めた上で「仕方ない。長い人生、そういう時もあるよ」と言っているように聞こえました。そして、優しく「それでも、人生は続くから」と付け加えたのです。

たまたま耳にした短い会話でしたが、問題ばかりで行き止まりにいるような気持ちになっていた私にとっては、とても勇気づけられる出来事でした。人生は思うようにはならないけれど、それでも明日は来る。それを幸せなことだと考えて、自分らしい選択を重ねていけばいいのかもしれない。そんな風に感じることができました。

パリ
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なんだか少し元気が出てきて、賑やかなカフェの片隅で「セ・ラ・ヴィ」と小さい声でつぶやき、勢いよくエクレアにナイフを入れました。流れ込んでくるカフェクレームの温かさと、チョコレートの甘さが心地よく、少し前までつまらないもののように思えていたものが、最高のごちそうに感じられたのを覚えています。

人生は、見方ひとつ、考え方ひとつで味わいが変わる。壁に正面からぶつかるだけではなく、ときには「そんなこともあるよね」と柔らかく受け止めて次に進むこともまた、必要なのかもしれない。偶然出合った一言に、大切なことを教わった気がしています。

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