「またね」の一言がくれた、日常のゆとりとパリへの期待【パリで学んだ生きやすさのヒント】

 「またね」の一言がくれた、日常のゆとりとパリへの期待【パリで学んだ生きやすさのヒント】
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MIKI
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2024-03-24

極度の人見知りだった私の人生を180度ひっくり返してくれたのが、20代後半からのパリ暮らしでした。東京でPR会社を起業して全国で仕事をする「今」につながる出会いの数々。本連載「パリで見つけた生きやすさのヒント」では、パリでたくさんの人や出来事から教わった、気持ちが少し楽になる生きやすさのヒントをご紹介します。

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「幸せにまたすぐに出合える」そんな感覚に切り替えてくれる、パリらしい挨拶

パリ出張の最終日、タクシー到着まであと5分。名残惜しさで窓の外を眺めながら、そっとため息をついて大きなスーツケースを外に引っ張り出した私に、ホテルのコンシェルジュが声をかけてくれました。「À tout à l’heure(ア・トゥタラー)!」ほんの少し違和感を覚えたのは、それが数時間後に会うような挨拶だったから。

「残念だけど、今日、東京に戻るんです。だから、お別れの挨拶をしなくちゃ」と言うと、微笑みと一緒に返ってきたのはこんな答えでした。「マダムはきっとまたすぐにパリにいらっしゃいますよ。ですから、私たちにぴったりなのは、Au revoir(オ・ルヴォワール / さようなら)ではなく、À tout à l’heure(またね)なんです」。その瞬間、寂しくて離れがたいパリ最後の時が、軽やかにアップデートできる思い出へと変わりました。

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パリの定宿があるのはサンジェルマン・デ・プレ。学生時代を過ごした街で、チョコレートクリームたっぷりのクレープをほお張ったり、学校帰りに映画を見てカフェでおしゃべりをしたり、たくさんの思い出があります。20年以上の思い出が詰まったカルティエは、そこに帰れると思うだけで気持ちが明るくなる大切な場所。きっとまたすぐに友人たちと会い、仕事をして、素晴らしい時間を過ごせる。そんな想像をするだけで慌ただしい日常に幸せなゆとりが持てるようになりました。粋な挨拶を返してくれたコンシェルジュがそこまで考えていたかはわかりませんが、笑顔で飛行機に乗った私は、帰国後も彼の言葉を大切にしています。

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週末や休暇あけに仕事に向かう時の憂鬱さ、楽しい時間の終わりに感じる一抹の寂しさ、そんな気持ちにとらわれたら、幸せにまたすぐに出合える「またね」の感覚を呼び起こしてみませんか。目の前の現実は変わらなくても、時間軸の捉え方や向き合い方は自分で変えることができるはず。そんな小さなスイッチが手元にあるだけで、日々の鮮度がすこし上がる、そんな気がしています。あれから数か月、パリが恋しくなるたび、あの日の「À tout à l’heure」を思い出して、またすぐに帰れる(はず!)の街並みを思い起こしています。

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MIKI

MIKI

古美術商の家に生まれる。極度の人見知りだったが、20代後半からのパリ暮らしで人生観が変化。フランス語を学び、社会人研修生として過ごした国際学園都市での出会いを通して、コミュニケーションの大切さに目覚める。帰国後PRの世界に入り、世界最大級の水族館や地球温暖化防止プロジェクトなどに携わった後、2011年に起業。PRコンサルティングやブランディング、執筆を行う。現在地は、東京、沖縄、ときどきパリ。



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