フランス語の動詞「profiter」が人生を動かしてくれた話【パリで見つけた生きやすさのヒント】

 フランス語の動詞「profiter」が人生を動かしてくれた話【パリで見つけた生きやすさのヒント】
photo by MIKI
MIKI
MIKI
2023-09-17

極度の人見知りだった私の人生を180度ひっくり返してくれたのが、20代後半からのパリ暮らしでした。東京でPR会社を起業して全国で仕事をする「今」につながる出会いの数々。本連載「パリで見つけた生きやすさのヒント」では、パリでたくさんの人や出来事から教わった、気持ちが少し楽になる生きやすさのヒントをご紹介します。

広告

パリの友人たちが、毎日のように投げかけてくれた言葉「profiter(プロフィテ)」

パリで暮らし始めた時、最初に覚えた動詞が「profiter(プロフィテ)」でした。意味は、活用する・有効に使う。大学で第二外国語として学んでいた時は知らない単語でしたが、フランスでの会話でよく出てくるので、私の中ではすっかり頻出動詞に。一番よく言われたのは「パリでの生活をプロフィテしてね」。しばらくすると、プ…の音が聞こえただけで、わかってる、プロフィテでしょ!と返してしまうほど。

あるとき、それにしても使いすぎじゃない?と笑う私に、友人のクリスティーヌが真顔で言いました。「ねぇ、聞いて。ミキは、いつも何かを我慢しているように見える。それって辛くない?もっと言いたいことを言って、したいことをしようよ。みんな、ミキに幸せになってほしいと思ってる。パリを楽しんで!」

その瞬間、ただの動詞が大切なアドバイスに変わりました。我慢することは良いことで、遠慮がちに小さくなっていれば問題は起きない。夢を語らなければ傷つくこともない。就活に失敗して体調を崩しアルバイトなどで会社を転々としていた私は、自分を小さな枠にはめることに慣れきっていました。暗闇から抜け出すために猛勉強をして、奇跡的にパリ研修の機会を得たのが26歳の時。自信のなさは簡単には消えず、いつも不安で泣きそうな顔をしていた気がします。そんな様子をもどかしく感じた友人たちが、毎日のように投げかけてくれたのがプロフィテだったのです。

コーヒー
photo by MIKI

堂々と、人生を味わい尽くしていい

以来、私にとってプロフィテは「誰かに迷惑をかけない範囲(少なくとも自分がそう思う範囲)なら、楽しんだりチャンスを最大限にいかしたりすることに罪悪感を持つ必要なんてない。堂々と、人生を味わい尽くしていい」という意味の特別な言葉になりました。フランス語教師の友人に話したら、そんなに複雑な意味あるかなーと笑われましたが、人生の転機になった言葉として超(!)意訳で心にとどめています。

こうして人生が動き出した私は、帰国後、最も縁遠いと思っていたPRの世界に入ることになります。「プロフィテしてる?」と自分に問いかけながら過ごすこと20年。気が付けば起業して、仕事やプライベートで折々にパリを訪れるようになりました。思考や行動のパターンを変えるのは簡単ではありませんが、いつもの自分とは違う発想を持てると、少しだけ呼吸が深くなり柔軟な発想で物事に向き合える気がしています。

飛行機
photo by MIKI

今日から始まる連載では、パリで過ごした時間やフランス語を学ぶ中で出合った、生きやすさのヒントをお伝えしていきます。 

広告

AUTHOR

MIKI

MIKI

古美術商の家に生まれる。極度の人見知りだったが、20代後半からのパリ暮らしで人生観が変化。フランス語を学び、社会人研修生として過ごした国際学園都市での出会いを通して、コミュニケーションの大切さに目覚める。帰国後PRの世界に入り、世界最大級の水族館や地球温暖化防止プロジェクトなどに携わった後、2011年に起業。PRコンサルティングやブランディング、執筆を行う。現在地は、東京、沖縄、ときどきパリ。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

コーヒー
飛行機