ついつい、考えすぎてしまうあなたへ。気持ちが軽くなる一言【パリで学んだ生きやすさのヒント】
極度の人見知りだった私の人生を180度ひっくり返してくれたのが、20代後半からのパリ暮らしでした。東京でPR会社を起業して全国で仕事をする「今」につながる出会いの数々。本連載「パリで見つけた生きやすさのヒント」では、パリでたくさんの人や出来事から教わった、気持ちが少し楽になる生きやすさのヒントをご紹介します。
パリで出会った20年来の友人クリスティーナがよく使うのが「On verra(オン・ヴェラ / 様子をみましょう)」。慎重なのにどこか楽天的な彼女らしい口癖が飛び出すたび、私も友人たちも思わず笑顔になります。
たとえば、これから近くのビストロに夕食に出かけようかという時。「でも、人気店だし、金曜日だから混んでるんじゃない? 別の店にする?」と誰かが言うと、クリスティーナは顔色ひとつ変えずに「オン・ヴェラ」と答えます。まずは行ってみようよ、席があればラッキーだし、混んでいたらその時考えればいいじゃないといったニュアンスです。
一緒にフランスの田舎を旅した時も、心配性の私は何度も、ここはどうしよう、事前にちゃんと予約しないといけないんじゃないかとガイドブックばかり見ていましたが、クリスティーナには常にどこか余裕があり、「どうかな。まあ、なんとかなると思う」と答えます。
毎回この調子なので、ずっと一緒にいるうちに私も少しずつ慣れてきて、気が付くと自分でも「オン・ヴェラ(様子をみましょう)!」とよく言うようになっていました。おまじないではないですが、この言葉がひとつあるだけで、少し空気が軽くなる感じがするのです。
先日、パリ出張の際にクリスティーナに連絡をしたら、すぐに「空港に着いたらいつものカフェにおいでよ。アペロ(食事の前の軽いお酒)を一緒に楽しもう!」とメッセージが来ました。「でも、飛行機が遅れるかもしれないし、翌日の約束にしない?」という私に、3秒で返ってきた返事は「オン・ヴェラ!」。この場合は、こちらはどうにでも調整できるから、とりあえずこのプランのまま様子をみようという意味です。すっかり自分のものにしたと思っていた言葉でしたが、私の心配性は相変わらずで、前向きに物事を予測する友人にはかなわないと感じた瞬間でした。
東京発のフライトはまさかの1時間前倒しで到着。その日の夕方、私たちは学生時代に何度も通ったサンジェルマン・デ・プレの老舗カフェで、アペロをゆっくり楽しむことができました。「ほらね、大丈夫だった」と笑うクリスティーナと一緒に眺めたパリの街は、本当に美しかったです。
AUTHOR
MIKI
古美術商の家に生まれる。極度の人見知りだったが、20代後半からのパリ暮らしで人生観が変化。フランス語を学び、社会人研修生として過ごした国際学園都市での出会いを通して、コミュニケーションの大切さに目覚める。帰国後PRの世界に入り、世界最大級の水族館や地球温暖化防止プロジェクトなどに携わった後、2011年に起業。PRコンサルティングやブランディング、執筆を行う。現在地は、東京、沖縄、ときどきパリ。
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