「大丈夫!」と思える、魔法のようなフランス語フレーズ【パリで見つけた生きやすさのヒント】
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極度の人見知りだった私の人生を180度ひっくり返してくれたのが、20代後半からのパリ暮らしでした。東京でPR会社を起業して全国で仕事をする「今」につながる出会いの数々。本連載「パリで見つけた生きやすさのヒント」では、パリでたくさんの人や出来事から教わった、気持ちが少し楽になる生きやすさのヒントをご紹介します。
海外で暮らすと日本とのいろいろな違いに気付きますが、私がパリに住んで驚いたのは、フランスに生きる人の「気にしない力」。イライラを我慢するというのともまた違う、悩みやストレスになる前にふっと力を抜く上手さでした。
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フランス人がよく使う、魔法の言葉
たとえば、暖房の修理の依頼をしたのに、約束の時間になっても誰も現れず連絡ひとつない場合。よくあることとはいえ後の予定に影響が出るし、暖房がそのままなのは困る…とカリカリしそうな場面ですが、そんな時、フランス人がよく口にするのが「C’est pas grave(セ・パ・グラーヴ)」です。文法的に正しいのは「Ce n’est pas grave(ス・ネ・パ・グラーヴ)」ですが、話し言葉では前者を使います。直訳すると深刻(grave)ではないという意味で、大丈夫、問題ないよ、といったニュアンスで日常会話によく出てきます。
この定番フレーズは、友人のイレーヌの口癖でもありました。週末に彼女の家を訪ねると、お互いの感覚が違いすぎて驚くこともしばしば。料理を始めた彼女に「鍋、すごく焦げてるよ!」と言えば、答えはお決まりの「セ・パ・グラーヴ!」。そして、「いや、この焦げ方は、そこそこグラーヴ(深刻)だって」とつぶやく私。
子ども部屋のDIYを手伝いながら「そういえば、ここ、3年前に来た時から変わってない気がするけど」「あ、全然できてない。でも、セ・パ・グラーヴだから!」「いやいや、みんな大きくなってるし、そろそろ間に合わせようか笑」など、挙げるときりがありません。でも、彼女がゆったり微笑みながらこの言葉を繰り返すたび、私の中にも心地のよい余白が生まれるのを感じていました。
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悩みにする「前」に対処することで、気持ちを軽く
フランス人いわく、本当に困っている時にも使うこともある(前向きに考えるために)という「セ・パ・グラーヴ」。パリ生活を始めた頃は、みんな大雑把すぎるよと笑っていましたが、帰国する頃には自分でもよく使うようになっていました。
今でも、物事が思うように進まない場面や、ささいな失敗をした時は、心の中でこのフレーズを唱えています。小さなもやもやをストレスにする前に消す方法を知っていると、マイナスの気分を溜め込まずに済むかもしれません。軽やかに明るく大丈夫と言い切る(ときには、自分に言い聞かせる)。私がパリで学んだ生きる知恵の1つです。
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