寝ても疲労が取れない人に試してほしい休息法【ヨガと睡眠 ♯8】
ヨガニードラで現れるリラックスの脳波
『何も考えずにボーッとすれば、脳は休まる』と思われがちですが、ボーッとしているつもりでも脳は活動しているもの。いくら身体を休めていても、または睡眠中でも、脳は一定の活動をしています。それでは、そんな『働きものの脳』を、どのように休ませてあげれば良いのでしょうか?瞑想やヨガニードラといったヨガの練習は、脳の疲労を取り除く方法として優れているということが、最近の研究ではかなり詳しく解き明かされています。何千年も前から伝わるヨガの練習法の優れた点が、現代の科学によって解明されるというのはとても興味深いことです。
ヨガニードラの分野では特に、その疲労回復効果が脳波の測定によって立証されています。ヨガニードラの練習中は、脳にアルファ波という脳波が現れやすいといわれています。アルファ波とは、リラックスした状態のときに現れる脳波の一種です。理論的に物事を考えている時、また緊張状態にある時には出現しない脳波で、ストレスの緩和にも役立つともいわれています。また、反対のステータスのようにも感じるかもしれませんが、集中力が研ぎ澄まされているときにもアルファ波が検出されます。まどろんだ状態でひらめきが生まれやすいのはこのためです。ヨガニードラの練習中は、なるべくまどろみの状態を保とうと努めるのですが、そのまどろみの状態ではアルファ波が多く出現します。つまり、ヨガニードラの練習中は、身体も脳も心地の良いリラックスの状態にあり、更にこの状態を保つ練習をしているということなのです。また、アルファ波を保つ時間が睡眠中よりも長いので、眠るだけでは取れない脳の疲れにも有効的です。
ヨガニードラで脳に意識的な休息を
それでは実際に、ヨガニードラの練習をしてみましょう。今回はより身近に練習していただけるように、座った状態での練習方法をお伝えします。声のガイダンスを使った方が練習はしやすいですが、下記のように意識を自分の内側で巡らせるだけでも練習は行えます。リラックスしながら気軽に試してみましょう。
①環境を整える
・落ち着ける静かな場所を選ぶ
・朝でも日中でも夜でも、好きな時間帯でOK
②座って体勢を整える
・背筋を伸ばし、身体の左右を対象にする
・背もたれや壁を使っても良い
・椅子に座って行っても良い
③呼吸を整える
・口から何回か溜め息をつき、余分な緊張を解放してから始める
・自然な鼻呼吸を繰り返す
・ヨガニードラ中は呼吸をコントロールしない
④身体の細かい部分に意識を巡らす
・手や足など末端から徐々に意識を移行させ、更にその部分が『リラックスした』と感じる
【例】右手の手のひらがリラックスしたと感じる→右手の親指、人差し指、中指、薬指、小指がリラックスしたと感じる→右手の手首、肘、肩、右腕全体、がリラックスしたと感じる→右の肩甲骨の周り、腰、お尻がリラックスしたと感じる→右のももの後ろ側、膝の後ろ、ふくらはぎ、足首がリラックスしたと感じる→右足のかかと、土踏まず、右の背面全体がリラックスしたと感じる→右足の親指、人差し指、中指、薬指、小指がリラックスしたと感じる→右足の甲、足首、すね、膝、ももの前側、足の付け根がリラックスしたと感じる→右のお腹、胸、肩がリラックスしたと感じる→右の前側全体がリラックスしたと感じる
→左側も同じように繰り返す
⑤自然な呼吸を繰り返しながら、呼吸をカウントダウンする
・吸って吐いて11、吸って吐いて10・・・と11から1まで呼吸を数える
⑥自分がリラックスしている状態を思い描く
あまり難しく考えず、ぜひ気軽にヨガニードラの練習を実践してみて下さい。練習を繰り返すうちに、リラックスの状態(アルファ波の現れている状態)を長く保てるようになっていきます。すると次第に、脳の疲労が緩和されていくことでしょう。そして、眠ることだけでは取れない疲れも緩和されていくはずです。
ライター/井上敦子
15年間の会社員生活を経てヨガ講師に転身。不眠症をヨガで克服した経験を持つ。リラックスが苦手だった経験から、ヨガニードラを通じてリラックスの本質を伝えるクラスを展開。週に8本のヨガニードラのレギュラークラスを持つ他、指導者養成講座やコラム執筆等ヨガニードラの普及に努めている。Instagram:@yoga_atsuko.inoue
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