【米研究】スマホの普及が出生率低下の一因に?「対面で会う時間の減少」が影響する可能性
2007年ごろを境に、アメリカでは出生率が急激に低下した。この変化の背景には、経済的な事情や晩婚化だけでなく、スマホの普及も影響している可能性があるようだ。
スマートフォンの普及と出生率低下の関係に注目
米ミドルベリー大学の経済学者ケイトリン・マイヤーズらがまとめた研究では、2007年前後からアメリカで出生率が急速に低下した背景には、スマートフォンの普及が大きく関係している可能性があると指摘している。この研究は2026年6月、全米経済研究所(NBER)が公開した研究報告書(査読前)として発表されたもので、大きな議論を呼んでいる。研究チームによると、スマートフォンの普及は15~44歳女性の出生率低下の約33~52%を説明できる可能性があるという。
研究では、スマートフォンが発売当初、一部の通信事業者を通じてのみ販売されていたことに着目した。通信環境が整っていた地域ではスマートフォンを早く利用できた一方、普及が遅れた地域もあった。この地域差を利用し、郡ごとの出生率の変化を比較した。その結果、スマートフォンが早く普及した地域ほど出生率の低下幅が大きいことが分かった。例えば20代女性では、スマートフォンを早く利用できた地域では2007~2011年に出生率が14.6%低下したのに対し、普及が遅れた地域では10%の低下にとどまった。15~19歳でも同様の傾向がみられ、スマートフォンの利用環境が整っていた地域では出生率が26%減少した一方、そうでない地域では13.8%の減少だった。
デジタル技術が人間関係の築き方そのものを変えている
研究チームは、スマートフォンそのものが出生率を下げるのではなく、人々の行動様式を変えたことが影響していると考えている。スマートフォンの普及によって対面で過ごす時間が減り、恋愛関係の形成や親密な交流の機会が少なくなった可能性があるという。また、性的接触の減少や、インターネットを通じたポルノ閲覧の増加も一因として挙げている。別の研究では、2003年から2019年にかけて15~19歳の若者の対面での交流時間は44%減少したことも報告されており、研究者らはデジタル技術が人間関係の築き方そのものを変えている可能性があるとみている。
一方で、研究者自身もスマートフォンだけで出生率低下を説明できるとは考えていない。マイヤーズ氏は「スマートフォンだけが原因と言っているわけではありません。重要な要因の一つだということです」と説明し、「今回の研究で説明できるのは全体の3分の1から半分程度で、残りは別の要因によるものです」と話している。
「スマホ時代」が家族のかたちにも影響
専門家からは慎重な見方も出ている。出生率の低下はアメリカだけでなく世界各国で続いており、背景には住宅価格や教育費、育児費用の高騰、経済的不安、女性の高学歴化、晩婚化や出産年齢の上昇、避妊へのアクセス向上など、多くの社会的要因があると考えられている。また、経済的理由から出産をためらう人も多く、調査ではZ世代とミレニアル世代の61%が「家計事情が子どもを持つかどうかの判断に影響している」と回答している。
今回の研究は査読前であり、因果関係が証明されたわけではないものの、スマートフォンが人との付き合い方や恋愛、パートナーシップの築き方を大きく変えてきたことは、多くの研究者が共通して認めている。「子どもが欲しいと思わなくなった」のではなく、「人と深い関係を築く時間や機会そのものが減っているのではないか」。スマートフォンがもたらした生活の変化が、出生率という社会全体の大きなテーマにも影響している可能性は、今後さらに検証が進められそうだ。
出典:
Fertility Rates Declining Due to Smartphone Use, New Study Says
A drop in US births due to smartphone use? These researchers say so.
iPhone may be one factor in falling birth rates, researchers say
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