ヨガのあるスローシフト。ジャーナリスト・石井徹さんの選択

ヨガのあるスローシフト。ジャーナリスト・石井徹さんの選択
腰塚安菜
腰塚安菜
2025-12-07

インタビュー 「私たちの自由な選択」では、新たに「ヨガのあるスローシフト」を始めている先輩世代を取材していきます。今回は、朝日新聞社を退職後、青森に移住した環境ジャーナリストの石井徹さんに登場いただきました。

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石井徹さんは、気候変動、脱炭素、生物多様性など、国際から国内まで広く環境問題の分野を取材し、2025年3月まで朝日新聞社で環境・エネルギー担当編集委員として長く活躍されました。

年に一度開催される朝日新聞社主催「朝日地球会議」では2024年度までコーディネーターとしてゲストとのトークをリードする役割を務め、取材記事を執筆するだけではなく、環境分野の発信のリーダーとしても貢献してこられました。

追いかけ続ける環境・エネルギー分野の書籍を、来年4月の出版に向けて準備しています。

現在は青森市内の広告代理店の本部長として務めながら、東京の家では環境に優しい住まいの理想も追求されています。

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「朝日地球会議2021」パネル討論「ビジネスでサステイナブルな未来をつくる」より石井徹さん(写真右)

セカンドライフの二拠点生活でスローシフト、「住」の理想を追求

石井さん:朝日新聞退社後、青森の広告会社で働いています。フルタイムではないので、新聞記者時代に比べると肩の力は抜けましたが、ジャーナリストと広告会社員としての自分を両立している形です。ここで勤務することになったのは、プライベートで続けている乗馬で、前の青森勤務時代につながった人との縁がきっかけです。

結果的に月に1〜2回、環境関係の仕事やプライベートで、青森から東京に戻っているので、移動は相変わらず多いですが、楽しんでいますね。

家族のいる東京の自宅は2024年から断熱化に着手して、改修段階から記事にしています。『「断熱」が日本を救う』を書いた高橋真樹さんにも取材に来てもらいました。 実はまだこの先も予定があって、太陽光発電システムを増やすなどして、最終的には自宅のエネルギー自給自足を目指しています。

断熱した家は、エアコンの効きがいいので、冬は暖かく、夏は涼しい。環境負荷を減らす省エネというメリットに加え、家計にも優しいのです。さらに自分や家族に、健康で居心地のよい環境を提供してくれます。リフォームを検討するのであれば、おすすめしたい選択ですね。

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退職後、取り組んでいることのひとつに朝10分のヨガ

石井さん:ヨガの直接のきっかけは、家族でした。体調を崩した娘が、ヨガと健康習慣でを調子を取り戻していくのを側で目の当たりにして、自分もYouTube動画の視聴を始めました。
結婚前から妻の影響で「野口整体」(*)に親しんでいたのも、(ヨガに)家族ですんなり馴染めた理由ではないかと思っています。

自分の健康は、自分で守る。自然治癒力を大事にする「野口整体」の考え方には、ヨガに通じるものがあります。

*参考:自然の治癒力を高める「野口整体」を提唱した野口晴哉氏による『整体入門』(ちくま文庫)

ヨガは本当にいいと思いますね。1日のウォーミングアップにもいいし、乗馬やバックカントリースキー、ゴルフなどで、体を動かした後のリカバリーにもいい。ただ、動画を見ていると体の固さを解消して「もうちょっと出来るようになりたい」と思いますね。

「毎日10分だけなら」と動画を見ながらのヨガは続いていますが、本当はオフラインでももっとヨガをやってみたい。1度だけ、こちら(青森)でもヨガスタジオに行ってみたんですが、地方になかなか場がないので、女性ばかりでなく、もっと入り込みやすい場があるといいな。

取材で自然の中に行くことが多いし、趣味もアウトドアなので、たとえば次はこんな山の中に身を置いて、気持ちよくヨガができたら最高じゃないかと思いますね。

人間の体、自然環境。すべてはつながっている。これからも伝え続けること

石井さん:「人の健康」と「動物の健康」と「環境の健全性」はひとつにつながっているという意識ですね。 これは「ワンヘルス」と言われています。

朝日新聞社を退職する間際にはカナダの原生林の中で「マザーツリー」とその識者(*)を取材し、森林問題、生物多様性、特に土壌微生物の結びつきを感じました。

記事を通して伝えたかったのは、生き物はみんなつながっているということ。 「耕さない農業」という連載記事を書き、講演会も開催してきました。

*参考:『マザーツリー 森に隠された「知性」をめぐる冒険』のカナダ人著者を取材。世界的ベストセラーで、日本版も出版されている。

土壌微生物や人間の体内の微生物に目を向けると、宇宙観、自然観が広がって、環境も自分の健康も壊れる理由がすべて頭の中でつながっていきます。

ヨガを実践する方、読者の皆さんには、体の中の環境、つまり自分の健康を壊してしまうことは、自然環境の破壊にもつながっている、ということを、理解いただけるのではないかと思います。

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プロフィール

石井徹さん 1960年東京生まれ。ジャーナリスト。広告会社を経て、1985年に朝日新聞社入社。2025年3月まで朝日新聞編集委員として環境・エネルギー問題を担当。

現在は青森と東京の二拠点生活。

代表記事に、朝日新聞GLOBE「森は話す マザーツリーを探して」(2025年2月)
上記記事「マザーツリーを探して」をより立体的に解説した「ABEMA GLOBE」(Abema TV×朝日新聞)出演動画

取材後記

「体の中の自然」の意識が欠けている。グローバル課題にひたむきな若者たちが、どこか自分を抜きにして気候・環境アクションに走り続けているように感じられた20代。日本や海外で気候危機を伝える環境活動家の若者たちのうねりに隣り合わせた私が抱えたジレンマでもありました。

一方、仕事で環境について考え、自然に身を置く機会が多い石井さんにとっては「体の中の自然」を意識することも、東京、青森、海外、どこにいても自然を選択することが当たり前に実践できるのだと痛感しています。環境と健康を両立させた理想の住まいに近づけることが理想だと生き生きと語ってくださいました。

筆者は石井さんのスローシフトに学び、地方環境に身を置くことは、環境問題も体の中の自然も直感的に意識しやすくなるきっかけになるのだと、自分のセカンドライフにも思いを馳せました。

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