米国不妊症事情「こどもが欲しい!でもできない!」ストレスが原因?

 米国不妊症事情「こどもが欲しい!でもできない!」ストレスが原因?
YJ US
広告

ストレスの科学

医学博士ラフール・サクデフによれば、ヨガは健康に良い効果を持つということで、伝統的にも医療的介入に取り入れられてきたが、現代においても医療に組み込まれ、不妊に関連したストレスを軽減するため、つまり妊娠の可能性を大いに向上させるために活用可能だという。博士は、ニュージャージー州ブラウンシュヴィックにあるロバート・ウッド・ジョンソン医大で生殖内分泌学と不妊を専門にしている。「不妊の女性、特に長期間妊娠しない女性には、きわめて大きなストレス負荷がかかっています」とサクデフは説明する。「不妊の女性のストレスレベルは、じっさいHIVの宣告を受けたばかりの人と同程度だという研究結果も出ています」サクデフ医師はストレスが不妊のひとつの原因となっているのは間違いないと言う。「ここで議論の的となるのは、ストレスを軽減することで妊娠するのかどうかという点です」と彼は付け足す。

ニュージャージー州ブラウンシュヴィックのセント・ピーター・メディカルセンターでサクデフが監修したプログラムに参加したカップルからは、この問いへの大きく響き渡る「イエス」が聞こえてきそうだ。このプログラムは、ヨガや瞑想といったストレス軽減のためのプラクティスと、グループディスカッションやシェアリングといった感情面でのサポート、それにカフェイン、アルコール、脂肪分、砂糖を食事から少なくする栄養調整なども組み合わせたもの。

結果は顕著なものだった。一年たってプログラムが終わるころには、参加したカップルの50%が妊娠した。この結果において、さらに驚くべきところとしては、女性の不妊の原因にかかわらず――原因不明の不妊であれ、精子数の少なさによるものであれ――じつにたくさんの参加者たちの役に立ったという点である。

ほかにも最近の実験結果で、ヨガが女性の不妊に対してポジティブな影響をもっていることを裏付けるものがある。2000年にハーバードメディカルスクールのリサーチャーであるアリス・ドマール博士が『Fertility and Sterility』 (Vol. 73, No. 4) に発表した研究によれば、彼女の考案したリラクゼーションとヨガを採り入れたプログラムに参加した女性は、参加していない女性と比較して、妊娠確率が約3倍上がったという。ドマールが考案した「体と心の10週間ワークショップ(10-week mind-body workshop)」では、妊娠のために1~2年間取り組んでいる184名の不妊女性がグループ認知行動療法に参加。このグループは感情表現の方法、栄養と運動に関する情報、リラクゼーションのトレーニング――ヨガ、瞑想、筋肉のリラクセーション、心的イメージなど――などをワークショップで学んだ。興味深いことに、このグループはまた、認知の再構築、反復するネガティブ思考の確認も学んだ。たとえば「私は絶対赤ちゃんをもてない」などのネガティブ思考をもっていることなどを確認する。そして、こうした思考を「私は妊娠するためにできることをすべてやっている」といった思考へと変えていくという作業をやってもらった。結果はどうなっただろうか。ヨガやほかのテクニックも使ったグループの女性55%が1年間のうちに妊娠した。それにたいして、対照群の女性グループの同期間の妊娠率は20%だった。

ストレスは体内のホルモンバランスを変える生理学的な影響力を持っている。特に妊娠に関係するホルモンのバランスは影響を受けやすい。「心理的なストレスを取り除くことには、視床下部の性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の抑制、視床下部-下垂体-副腎系の活性化、それに免疫システムの変化など、複数のシステムに影響が生じうるという理論を、最近の研究が支持しています」とドマールは研究を結論づける。「心理的なストレスや落ち込みによる動揺のもつインパクトは、今度は逆に、排卵や、妊娠、卵管機能や着床などに影響を与えることになります」

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

広告

Text by JUDITH HANSON LASATER
Translated by Miyuki Hosoya



RELATED関連記事