医師が解説！閉経が近づくと膣は徐々に老化する！？膣のアンチエイジングの必要性

膣の悩みはエストロゲンの低下による膣萎縮が原因

「子宮や卵巣と同様、膣はエストロゲンという女性ホルモンの影響を強く受けています。出産に関わる膣は、閉経すると必要がない臓器と体が認識して栄養状態が悪くなり、エストロゲンが減少して血流が低下。それに伴い膣の萎縮が始まると、乾燥しやすくなりかゆみやただれ、下着に触れると外陰部がヒリヒリするなどの不快感を覚えるようになります。エストロゲンの低下による膣の萎縮は、40代前半から始まり閉経するとさらに悪化します。対処法としては、エストロゲンを局所的に補充する膣剤の投与や膣のレーザー治療法、オイルマッサージなどのセルフケアも有効ですよ。

また、膣内に存在する乳酸菌によりpHが酸性に保たれ、侵入してくる細菌から膣を守ってくれます。しかしながら、エストロゲンが低下してターンオーバーがストップし、乳酸菌の餌であるグリコーゲンが枯渇することで乳酸菌が減り、酸性だった膣内のpHがアルカリに傾くと細菌が繁殖しやすくにおいが気になったり、感染症を発症しやすくなったりします。においを感じると不衛生を疑い膣内に指を入れて洗浄したくなりますが、pHバランスが崩れて膣カンジタなどを発症しやすくなるので膣内洗浄はNG。デリケートゾーン専用の弱酸性ソープを使って外陰部を手で優しく洗い、ナイロンタオルやボディブラシでのこすり洗いは禁物です。

加齢による女性特有の変化はほかにもあり、子宮や膀胱を支えている骨盤底筋がゆるむと尿漏れや、子宮が下垂して膣外に出てしまう子宮脱を引き起こします。産後の骨盤底筋のゆるみは徐々に回復しますが、難産や多産の方は戻りにくい場合も。また、日常的に重い荷物を持つ人は腹圧がかかりやすく子宮脱になりやすいと言われています。骨盤底筋のゆるみを予防するには、日常的に肛門をキュッと締める習慣をつけましょう。歯みがきをしながらでも電車に乗っている間でも、普段から行っていると骨盤底筋を鍛えられますよ。」

性教育に熱心な欧米は膣のセルフケアが日常的

「日本女性はデリケートゾーン（外陰部）や膣の話題を口にするのが恥ずかしく、誰にも打ち明けられないという人が多いですね。また、閉経すると婦人科系のトラブルとは無縁と思い込み、婦人科から足が遠のく女性も多いように感じます。実際は閉経後の女性ホルモンの変化により様々な膣トラブルが発症するもの。閉経後も膣や外陰部の状態に関心を持ち、必要に応じて婦人科を受診してください。

一方、学校における性教育が進んでいる欧米の若者は、早くから性に対して真剣に向き合っているため、友人間でも性の悩みをオープンにしやすいように思います。皆保険の日本と違い定期的に医療機関を受診することは難しくても、ドラッグストアに行けばデリケートゾーン専用のケア用品が手に入りセルフケアの意識も高いことが伺えます。最近になって日本でもデリケートゾーンのための弱酸性ソープや膣用のマッサージオイルが市販されるようになり、セルフケアの習慣が少しずつ浸透しているようです。」

福山千代子先生
アヴェニューウィメンズクリニック院長、日本産科婦人科学会専門医。金沢医科大学を卒業し、東京大学医学部附属病院、茨城県立中央病院で研修後、複数の病院で経験を積み2009年11月より現職。クリニックは、医師をはじめすべて女性スタッフで構成されており、更年期障害をはじめ、月経痛や月経前症候群（ＰＭＳ）などの治療も積極的に行っている。女性ホルモンに影響される様々な不調や悩みを抱える女性の生き生きとした生活を応援している。

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