【65歳以降の筋力&下半身パワー維持にピーナッツバターが有効?】一日スプーン3杯の習慣が体を変える理由
年齢とともに衰える下半身の筋力。オーストラリアの研究で、毎日少量のピーナッツバターを食べる習慣が、高齢者の「立ち上がる力」を改善する可能性が示された。
実はビタミンやミネラル、抗酸化成分、食物繊維も豊富なピーナッツバター
年齢を重ねるにつれ、「立ち上がる」「歩く」「階段を上る」といった日常の動作が少しずつ重く感じられるようになる。その背景にあるのが、加齢による筋肉量と筋力の低下だ。研究によると、筋肉量は一生のうちに約20〜30%、筋力は40〜50%ほど減少するとされる。特に50歳以降は低下のスピードが加速し、65歳を過ぎる頃には身体機能がピーク時の半分近くまで落ちることもある。こうした変化は転倒や骨折のリスクを高め、やがて自立した生活を難しくする要因にもなる。
では、日々の食事でこの衰えを少しでも和らげることはできるのだろうか。そんな視点から行われたのが、オーストラリアの研究チームによる「ピーナッツバター研究」だ。研究では、転倒リスクのある65歳以上の高齢者120人を対象に、ピーナッツバターの摂取が身体機能に与える影響を調べた。参加者は2つのグループに分けられ、一方は半年間、毎日約43グラム、スプーンにして3杯ほどのピーナッツバターを食べ続けた。もう一方のグループは、普段どおりの食生活を維持した。ピーナッツバター43グラムには、およそ10グラムのタンパク質と約20グラムの脂質が含まれている。脂質の多くは不飽和脂肪酸で、さらにビタミンやミネラル、抗酸化成分、食物繊維も豊富だ。ナッツ類は地中海式食事法でも重要な食品として知られ、炎症や酸化ストレスを抑える働きがあると考えられている。研究者たちは、こうした栄養素が加齢による筋肉の衰えに影響する可能性に注目した。
歩く速さは変わらないが「立ち上がる力」は改善
半年後、参加者の身体機能は歩行速度やバランス、握力、膝の筋力など複数のテストで評価された。研究の主な指標だった「歩く速さ」には大きな変化は見られなかった。つまり、ピーナッツバターを食べても歩行スピード自体が速くなったわけではなかった。
しかし、一つだけ明確な改善が見られた項目があった。それが「椅子から5回立ち上がるテスト」だ。このテストでは、腕を使わずに椅子から立ち上がり、座り、再び立つ動作を5回繰り返す時間を測定する。結果、ピーナッツバターを摂取していたグループは、平均で約1.2秒短い時間で動作を終えられるようになっていた。さらに下半身の筋パワーも向上し、体重あたりの筋パワーは平均0.27ワット毎キログラム増加していた。1秒ほどの違いは小さく感じるかもしれないが、このテストの時間は加齢によって年間およそ1秒ずつ悪化するとされており、1秒の改善は臨床的にも意味のある差と考えられている。また、椅子から立ち上がる動作はトイレや食事、外出など日常生活のさまざまな場面で繰り返されるため、自立した生活を支える重要な指標でもある。
高齢者に重要なのは「筋力」より筋パワー
ここで注目されるのは、改善したのが「筋力」ではなく「筋パワー」だった点だ。筋パワーとは、筋肉の力と動く速さを掛け合わせた能力のこと。高齢者の場合、単に強い力よりも、この瞬発的なパワーのほうが転倒防止に深く関わるといわれている。つまずいたときにとっさに体を支える、椅子から素早く立ち上がる、階段を踏み出すといった動作は、いずれも瞬間的な筋パワーに支えられている。また、興味深いことに、半年間毎日ピーナッツバターを食べていたにもかかわらず、参加者の体重はほとんど増えていなかった。ナッツの脂質は不飽和脂肪酸が中心であることに加え、ナッツ特有の硬い細胞構造のため、脂肪の一部が体に完全には吸収されない可能性も指摘されている。
もちろん、ピーナッツバターだけで筋肉の衰えを防げるわけではない。研究者たちも、筋肉量や筋力を維持するためには筋力トレーニングなどの運動が欠かせないと強調している。ただ今回の結果は、食事だけでも身体機能に一定の影響がある可能性を示したものだ。食習慣は一度に大きな変化を生むものではない。しかし、日々の小さな積み重ねが将来の体を形づくる。こうしたささやかな習慣が10年後、20年後の筋肉の状態や動きやすさを静かに左右していく可能性はある。年齢を重ねても、椅子からすっと立ち上がれる体を守るために。毎日の食卓の選択は、未来の自分への小さな投資なのかもしれない。
出典:
Older adults gain muscle power with daily servings of everyday snack, study finds
The Surprising Food You Should Eat More of as You Age, According to a New Study
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