英大学の最新研究。ココアの抗酸化物質が“座りすぎ血管リスク”を防ぐ可能性
現代人にとって、「1日中座りっぱなし」の生活は一般的になりつつある。リモートワーク、オンライン授業、長距離移動、スマホやPCの操作…現代人が座って過ごす時間は確実に増えている。こうした座りっぱなしのリスクを軽減する可能性を秘めた食品が実はとても身近にあることが明らかになった。
長く座り続けると血管の流れが悪化し、心血管疾患のリスク上昇
「座りすぎは新たな“喫煙”」といわれるように、長時間座ったまま過ごすことは確実に心臓や血管に負担をかける。血管は硬くなり、血液の流れは滞り、やがて心筋梗塞や脳卒中といった重大な疾患につながることが判明している。そして、その対策として期待される食品は、すでに私たちの生活に存在している。それが「ココア」である。英バーミンガム大学の研究によって、ココアに含まれる「フラバノール」が、座りすぎが引き起こす血管機能の低下を防ぐ可能性が示された。
人が長時間座り続けると、血液循環は悪化し、血管内側を覆う「内皮細胞」の働きは低下する。この状態は血管の柔らかさを失わせ、「動脈硬化の入り口」と断定されている。積み重なれば心血管疾患の危険性は増す。また、血管機能がわずか1%低下するだけで、心血管疾患のリスクは約13%上昇することがわかっている。「少しだけ座りすぎた」では済まされない理由が、ここにある。
ココアに含まれるフラバノールが血管機能の低下を抑制
バーミンガム大学の研究チームは、18~45歳の健康な男性40人を対象に、フラバノールの摂取が「座っている最中の血管」にどのように作用するのかを検証した。参加者の半数には フラバノール量が高いココア飲料(約695mg) を、もう半数には フラバノール含有量の少ないココア飲料(約5.6mg) を摂取してもらい、その後、全員が2時間座り続けた状態で測定を行った。その結果、フラバノール量の少ない飲料を摂取したグループでは、血管の柔軟性が低下し、血流量の減少、血圧の上昇、筋肉への酸素供給の低下などが確認された。一方、フラバノール量が高いココア飲料を摂取したグループでは、同じ条件下であっても血管機能の低下は見られなかった。また、研究チームによると 「高い運動習慣がある人」でも結果は同様で、運動をしているからといって座り時間の影響を避けられるわけではない ことが示唆された。
フラバノールがポリフェノールの中でも「血管の味方」と言われる理由
フラバノールとは、自然界に存在するポリフェノールの一種で、植物が自身を守るために生成する抗酸化物質である。最大の特徴は、血管の内側にある「内皮細胞」に作用し、一酸化窒素(NO)の生成を促す点にある。この一酸化窒素は、血管を拡張して血流をスムーズにし、血液が固まりにくい状態を維持し、酸素を体の隅々まで届けやすくするなど、血管の“交通整備役”として中心的な働きを担っている。そのためフラバノールは、血流の滞りを抑え、血管をしなやかに保つサポート成分として語られることが多い。血管を通る「道」を整え、巡りを支える存在と表現されるゆえんである。
ココア以外にもある“フラバノール含有食品”
- ベリー類
- りんご
- プラム
- ナッツ
- 緑茶 / 紅茶
- トマト
- 赤ワイン
フラバノールは決して珍しい成分ではない。毎日手に取りやすい食品が多いのが魅力だ。「特別なサプリを買う」のではなく、普段の食卓で自然に取り入れられる点は、多くの人にとって実践しやすいポイントである。
座らざるを得ない時代だからこそ日々の「飲む対策」
デスクワーク、スマホ、移動。私たちの生活から“座る時間”を完全に排除することはほぼ不可能だ。だからこそ、フラバノールを含むココアや紅茶などを日常に取り入れ、さらにこまめな立ち上がりや短いウォーキングを組み合わせることで、血管への負担を抑えられる可能性がある。「ほっとする一杯」が、未来の健康を支える習慣のひとつになり得る。座る環境は変えられなくても、選ぶ一杯は変えられる。小さな選択が積み重なり、数年後の身体の状態を形作る。避けられない時代のリスクに対して、“おいしく続けられる対策”を今から始めてみては?
出典:
Cocoa And Tea Can Help Prevent Heart Damage Caused By Prolonged Sitting: New Study
Keep your heart healthy with cocoa and tea to undo the dangers of sitting for long, says study
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