「腟は使いすぎるとゆるむ…？確かめる方法は？～Part1」【女医・富永喜代が教える！大人の性とからだ相談室（１）】

Q.今回のお悩み

パートナーに腟がゆるいと言われました。自分で確かめる方法はありますか？また、どのような原因がゆるみを引き起こすのでしょうか？

富永喜代先生の回答

「腟がゆるい」という表現はよく見かけますが、実は自分でゆるんでいるかどうかを感じにくいパーツ。そもそも腟というのは伸縮する”筒状の空間” であり筋肉で出来ているわけではないので、その動きは周囲にある骨盤底筋に委ねられます。

腟は意外と鈍感！？

みなさんは、そもそも腟がどのような構造なのか詳しく知っていますか？ここでは、腟の仕組みを3つのポイントで解説します。

１．意外と鈍感？腟の構造と感覚

まず、腟の神経解剖学的構造は、体表に近い下側の3分の1と子宮に近い奥3分の2に分かれています。下側は、表皮がメインで、そこは陰部神経が主に支配している状態。このエリアでは触覚や圧覚、痛みをある程度感じることができます。そして、奥側の3分の2は骨盤神経が支配しており、感覚がわかりづらい部位です。内臓感覚として圧迫や鈍痛などの大まかな感覚は得られますが、細かい刺激は感知できません。すなわち、自分自身で締まり具合を判断することもできないんです。つまり、腟というのは私たちが思っているよりも鈍感な範囲が広いということ。

２．腟を動かすのは骨盤底筋群

腟というのは筒状の空間で、それ自体に筋肉が備わっているわけではありません。そのため、いわゆる「締める力」は腟のまわりを囲む骨盤底筋群が担っています。例えば、自分で腟に力を入れようとしてお尻の穴を閉める時、実際に動いているのはその周囲にある骨盤底筋群。腟のみが独立して動くことはなく、周りが収縮する動作に連動して間接的に伸び縮みするというわけです。

３．自律神経と腟粘膜の潤いの関連性

自律神経という言葉はみなさん聞いたことがあると思いますが、これがどのように腟に関係しているかを知っていますか？自律神経は交感神経と副交感神経の2種類で構成されていて、そのうち副交感神経が優位になった時に骨盤内の血管が拡張して血流が増加して、腟に潤いが出てきます。これがいわゆる「濡れる」と呼ばれる状態。逆に交感神経が優位なときは、緊張や痛みが起こることによりストレスがかかり全身の血流が低下。すると腟粘膜は濡れにくい状態になります。

エストロゲンと腟粘膜の関係

腟粘膜の厚みは、年齢によって変化します。若い女性の腟粘膜は厚みがあってフワフワしていますが、更年期以降は弾力性が下がり、薄く、乾燥した状態に。これらの変化には女性ホルモンのエストロゲンの低下が関係しています。若い時は感度が良かったのに年齢を重ねて衰えてきた、というのもこの女性ホルモンの減少が影響しているのです。

エストロゲンの低下が腟粘膜に与える影響

• 弾力性が低下
• 腟粘膜自体が薄くなる
• 乾燥する
• 血流が低下し濡れにくくなる
• 感度が下がる

「腟を使いすぎる＝ゆるむ」は間違い

セックスにより腟を使いすぎると、だんだんと広がってゆるんでいくイメージを持っている方は多いでしょう。しかしそれは誤解。実は、挿入行為による摩擦は、腟粘膜に対するマッサージ効果があります。例えばエステでお手入れするとき、クリームを塗るだけでなく同時にマッサージも行いますよね。その主な目的は組織の柔軟化と血流アップ。それと同じく、セックスで挿入すること自体が腟粘膜に対するマッサージとなるわけです。

その上、もしオルガズムに達すると骨盤底筋は0.8秒間隔のリズミカルな収縮を起こします。これ自体が骨盤底筋を鍛えることにもなるし、さらに腟分泌をも促す。挿入行為に限らず、腟粘膜への性的な刺激は腟が劣化するのを防ぐことに繋がるんですよ。

▶Part２「腟がゆるいと言われた…改善する方法はある？」【女医・富永喜代が教える！大人の性とからだ相談室（２）】はこちら

ご回答いただいたのは...富永喜代先生

富永ペインクリニック院長。医学博士。愛媛県松山市にて富永ペインクリニックを開院。性の悩み専門の性交痛外来を開設し、全国から1万人以上がオンライン診断を受ける。YouTubeチャンネル『女医　富永喜代の人には言えない痛み相談室』は、中高年の性事情に特化した内容で登録者数29万人、総再生回数は7400万回超。SNS総フォロワー数45万人。セクシャルウェルネス世界トップ企業ラブハニーグループの日本初『Pleasure Journey』に登壇。コラボしたウーマナイザー機能搭載『モンアミフィンガー富永喜代モデル』も好評発売中。著書に『女医が教える性のトリセツ』（KADOKAWA）など、著者累計100万部超。