これまでにイッたことがない…オルガズムに達したことがないのはおかしい？【女医・富永喜代が教える！大人の性とからだ相談室】

Q.今回のお悩み

これまでに一回もイッたことがない…オルガズムを経験したことがないのは、おかしいこと？

富永喜代先生の回答

セルフプレジャーで自分自身の身体の気持ちいい場所を探すことが最も確実な方法です。

オルガズムの感覚を知るために

ーーーオルガズムに達したことがある女性はどのぐらいの割合なのでしょうか？

皆さんもご存知かと思いますが、女性がオルガズムに到達する方法として最も有効なのはクリトリスへの刺激です。この方法でオルガズムに到達できる人はおよそ9割以上。一方、挿入による刺激で到達できる人は6割程度です。また、イギリスの双生児研究*（Dunn 2005）では、性交で「いつも」オルガズムに達すると答えた女性は約10％しかおらず、逆に「ほとんど」または「全く達しない」と回答した女性は32％に上りました。オルガズムに達することができないのは決して珍しくないことなので、焦る必要はないんですよ。

*Kate M Dunn, Lynn F Cherkas, Tim D Spector (2005). Genetic influences on variation in female orgasmic function: a twin study. Biology Letters, 1(3), 260–263. doi: 10.1098/rsbl.2005.0308

ーーーでは、オルガズムを経験したことがない女性が感覚を知るコツはありますか？

これまで一度もオルガズムに達したことがない女性が、他人が言葉や文章で説明する感覚を伝えられたところで正直理解し難いと思います。セックス中に相手に愛撫してもらったり、クンニリングスをしてもらったりすることでオルガズムに到達できるようになる可能性はありますが、やはり一番は自分自身の身体を探索して感覚を掴むこと。これが遠回りなようで一番確実な方法です。

他には、個人の性に対する価値観も影響します。もし小さい頃から性的な欲望に対して抑圧されるような環境で育ってきた場合、女性器の辺りに手を当てることでさえダメなことだと思い込んでしまい、性的な行為に対する心理的ハードルが高くなってしまいます。このような人にとって、自分の口から気持ちいい場所を伝えることも難しいですから、相手とのコミュニケーションも図りにくくなり、オルガズムへの道は遠ざかります。

中イキが起こる仕組み

ーーーいわゆる「中イキ」はどのような仕組みで起こるのでしょうか？

まず、中イキの話をする前にクリトリスの構造についておさらいしましょう。クリトリスというと、外陰部に付いている突起した部分をイメージする方が多いかもしれません。しかし、これは氷山の一角。実際のクリトリスはその大半が身体の内部に潜んでおり、外からは見えません。体内に隠れた部分のクリトリスは、腟を挟むように2本に分岐した構造になっていて、それが腟に挿入される時の摩擦によって間接的に刺激されるんです。腟を挟み込む、このクリトリス分岐部こそが、腟の前壁で入り口から約3㎝にある「Gスポット」に相当するんですね。

そして、深い挿入によって中イキが起こる際、クリトリスとポルチオと呼ばれる子宮頸部が同時に刺激されています。まず、腟への挿入によって間接的にクリトリスが刺激されます。これに加えて腟の奥の子宮頚部に位置するポルチオが刺激されると、初めて中イキの条件が整うのです。

このポルチオには、迷走神経と呼ばれる脳から直接伸びている脳神経の枝があり、挿入による刺激が脊髄などを介さずにダイレクトに脳に伝わります。そのため、中イキの感覚は外イキと違って、深くてジーンとする、 脳に響く、などと表現されることが多いんですよ。

中イキを習得したい！感覚を掴むために

ーーー「中イキ」を体験したことがない女性は、どのように感覚を掴めば良いでしょうか？

まず、俗にいう「外イキ」について。これは女性のクリトリスへの外陰部刺激によるものです。これは、男性のペニスの亀頭のように、刺激がダイレクトに伝わるので比較的オルガズムに達しやすい。まずは、クリトリスへの刺激でオルガズムの感覚を覚えましょう。

次に、中イキを体験したことがない女性は、クリトリスを刺激している状態で、同時に挿入型セルフプレジャーグッズなどを使ってGスポット刺激を行います。クリトリス刺激は気持ちいいので、挿入を介したGスポット刺激も気持ちいい刺激であると、脳に条件付け反応で覚え込ませていきます。さらに、深い挿入によってポルチオへの刺激を加えることで、この刺激も気持ちいいものであると脳に条件付けで誤認させながら、徐々に身体に覚えさせるのが良いでしょう。具体的には、指やコンパクトなプレジャーグッズでクリトリスを刺激しながら挿入してみる。大きいプレジャーグッズだと、男性側の恥骨に当たってしまい、肝心のクリトリスになかなか当てづらく、同時に刺激することがが難しいです。そのため、小さいタイプのクリトリス刺激型がおすすめです。

セックスの際なら、挿入の前にクンニリングスなどで、一度しっかりと脱力を伴うオルガズムに達しておく。すると女性の脳は、今日この場で安心して達していいということを植え付けられるので、挿入時に自然とイキやすくなります。この方法のもう一つのメリットは、たとえ女性が挿入でオルガズムに達することができなくても、クンニリングスで一度は達しているわけですからセックス全体の満足度が上がる。つまり、男性側のプレッシャーも下がります。これも、互いの満足度を高めるセックスコミュニケーションの一種ではないでしょうか。

ご回答いただいたのは...富永喜代先生

富永ペインクリニック院長。医学博士。愛媛県松山市にて富永ペインクリニックを開院。性の悩み専門の性交痛外来を開設し、全国から1万人以上がオンライン診断を受ける。YouTubeチャンネル『女医　富永喜代の人には言えない痛み相談室』は、中高年の性事情に特化した内容で登録者数29万人、総再生回数は7400万回超。SNS総フォロワー数45万人。セクシャルウェルネス世界トップ企業ラブハニーグループの日本初『Pleasure Journey』に登壇。コラボしたウーマナイザー機能搭載『モンアミフィンガー富永喜代モデル』も好評発売中。著書に『女医が教える性のトリセツ』（KADOKAWA）など、著者累計100万部超。