【子供の喘息】最新研究で判明|子供時代の『脂肪分の多い食生活』が喘息リスクを高める可能性

【子供の喘息】最新研究で判明|子供時代の『脂肪分の多い食生活』が喘息リスクを高める可能性
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山口華恵
山口華恵
2025-09-10

子供の頃に食べるものが、将来の健康にも大きな影響を与える―そんな研究結果が発表された。加工食品や動物性脂肪に多く含まれる「飽和脂肪酸」が、難治性の喘息を引き起こす可能性があるという。肥満の有無にかかわらずリスクが高まることが確認され、食生活の改善が新たな予防策になるかもしれない。

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喘息には2つのタイプがある

喘息はイギリスだけでも500万人以上が抱える慢性的な病気で、日常生活のちょっとしたこと、例えば、運動、気候の変化、花粉やほこりといったアレルゲンをきっかけに発作が起こる。そのうち約20万人は「重症喘息」と診断されており、症状がコントロールしにくく、強い薬を使わざるを得ないケースも少なくない。ただし、喘息と一口に言っても、その原因や症状の出方は異なる。代表的なのは2つのタイプだ。

  • アレルギー性喘息(好酸球性喘息)

花粉、ダニ、ペットの毛、ハウスダストなどが引き金免疫細胞「好酸球」が気道に集まって炎症を起こす。吸入ステロイド薬が効きやすく、多くの患者がこのタイプにあたる。

  • 非アレルギー性喘息(好中球性喘息)

細菌や微生物由来のタンパク質、環境因子などが原因免疫細胞「好中球」が炎症を引き起こし、薬が効きにくいのが特徴だ。重症化しやすく、入院につながるケースも多くみられる。

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加工食品の脂肪が炎症を引き起こす

今回の研究が注目したのは、この「好中球性喘息」だ。アメリカのフィラデルフィア小児病院(CHOP)の研究チームは、加工食品や動物性脂肪に多く含まれる「飽和脂肪酸」が、肺の中で炎症を誘発することを突き止めた。これが重症になりやすく、治療が難しい好中球性喘息につながる可能性があるという。これまで「子供の肥満」が喘息を悪化させる要因と考えられてきた。しかし、肥満ではない子供にも同じタイプの喘息が見られることから、研究者たちは「食生活」に着目した。研究を率いた免疫アレルギー科のデイビッド・ヒル医師は次のように説明する。「子供や動物実験の両方で、特定の飽和脂肪酸を多く含む食事が、肥満かどうかに関係なく、好中球性喘息を引き起こすことが確認できた。」

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「ステアリン酸」が引き金、オレイン酸は抑制

マウスを使った実験では、脂肪分の多い食事を与えると、肺の免疫細胞(マクロファージ)が「ステアリン酸」という飽和脂肪酸を蓄積し、炎症を強めることが確認された。ステアリン酸は動物性脂肪や加工食品に多く含まれている。一方で、オリーブオイルなどに含まれる「オレイン酸」という不飽和脂肪酸は逆に炎症を抑える効果があることも判明した。つまり、どんな脂肪を摂るかによって肺の免疫反応は大きく左右される。さらに研究チームは、炎症を引き起こす物質「IL-1β」や細胞ストレスに関わる「IRE1α」を抑えることで、ステアリン酸による炎症を防げることを発見した。これは既存の薬の応用につながる可能性もある。

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今すぐ喘息対策にできること

親としては、日々の食事で脂肪の種類に注意することが大切だ。具体的には以下のようなポイントを心がけたい。

  • 加工食品や揚げ物を控える…ハンバーガー、フライドポテト、スナック菓子など、ステアリン酸を多く含む食品は控えめにしよう。
  • 動物性脂肪の取りすぎに注意…肉の脂身やバターなど、飽和脂肪が多い食品も量を調整。
  • 不飽和脂肪酸を意識的に摂る…オリーブオイル、アボカド、ナッツ類、魚に含まれる脂肪は、炎症を抑える効果が期待できる。
  • バランスの良い食事…野菜や果物、穀物などのビタミン・食物繊維も、全体の健康や免疫力維持に重要。

出典:
Fatty food may increase risk of childhood asthma, study
Childhood asthma linked to certain fatty foods
Certain dietary fats found to trigger hard-to-treat asthma in children

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